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けなりー人生に届くか?  作者: 百枝月古京
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‎2016‎年‎6‎月‎24‎日‎_‎4‎:‎53‎:‎26

「ずっと居場所がなくて困ってた。お昼に声かけられた時、

そんな期待してなかったし」

「これからはここをよく視ればいいよ」

「シムーン、イイトコ持ってってずるいよー」

大福が茶々を入れる。

「他のグラグラ揺れてる揺れてる」

ちびっ子が不安そうだ。

「まっ、何とかなるっしょ。ギャル風なメイクさせてみたいな」

ニヤリとするハデハデガール。

それぞれがひなの身体や髪をなでた。

触られることで、ゆっくりとあたたかい感情に包まれて

ぶわーっとなりそうなのをひなはこらえた。

ベニバナ色の屋根の下の円形のイスに腰かけて、

5人は話し合いをスタートさせた。


ひなの父親のDVを告白する準備を固めることを決めた。

押入れに張り込むというのだから、なかなかにコミカルである。

安心してしりとりをノリノリで答えるひなであった。

自分を隠す道具の言葉を無意識に選んでいるのに気づかない。

時間というものを責め苦を測る代物でしかないと認識してきた

憐れな被虐JCにとって、

初めての宝くじ当選であった。

1分が1秒に錯覚感覚するレベル。

「本当の君が好き」

示村が口ずさむ、次々に他の子たちも続けていく。

ドギマギトキメキマジックのひびき、羽ばたき。

はにかみ続けるひな。その表情は何千回浮かべることになるだろう?






翌朝。寝不足のクマと泣き晴らしたひなの顔から

またもや暴力の被害があったと察知した四人は

夕方には日生家の彼女の部屋に張り込むことを決めた。

午後5時48分。

緊張した面持ちで待ち受けるひなを示村はほぐそうとする。

まだクズが帰ってくるのに、

2時間r近くはある。

ガールズトークをしながら、ふと自分たちの家庭環境に考えを巡らせた。

示村は謙虚で波風を立てない両親と人畜無害な姉妹のセットの下で、

のんびりと過ごしてきたので、おっとりした性格に育まれてきた。

ギャルギャルの親は、アフロなボンバーペアレントであった。

大福は男勝りな巨人母とほっそりした中性的なダディボーイだし、

富士といえば、ミニマムなエセJSよりもさらに背の低いシングルマザーと二人三脚で生きてきた。

バラバラなようで、そこそこな巣箱で雛鳥は成長率を上げていった。


ガチャりと玄関のドアが開き、

ひなの父親が入ってきた。


荒々しく居間の扉を開ける音から今日は一段と不機嫌なことが窺い知れる。

四人が押入れにスタンバイしつつ、身震いを抑えきれない。

「守るからさ。いつもとはちがうことにひなちゃんのバカ親父をガタガタ言わせてやっぞ」

押入れのふすま越しの元孤独少女に向かってギャルが言う。

ひなは感情に翻弄されていくばかりで、不可思議な表情で籠城を決め込んでいる。

階段を登る父親の音が呪わしい。

一歩ずつトラウマが復活して、ひなはみるみるうちに身体が小さくなる錯覚感覚に襲われた。




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