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プロローグ

基本5000文字ペースで更新していきます。

よろしくお願いいたします。

「マジで死んじまったのか……」

目の前に広がるのは河川。

かろうじて向こう岸が見えるほどの大きな川だ。

いわゆる、三途の川ってやつだろう。

そんでもって向こう岸から徐々に近づいてくる小舟らしきもの。

これまたお迎えってやつかね。

そんなことを考えながら俺は放心していた。

俺は気が付けばここにいて、考えるまでもなく自分が死んだことに気付いた。

「うわぁ、まじか……」

理解はしているが、まだ自分が死んだことを受け入れられない。

譫言のように何度も「まじか」とか「死んだのか」とかをつぶやきながら、俺は死んだ日のことを思い出す。

その日もいつもと変わらない日常で、もちろん自分が死ぬことなんて考えてもいなかった。

そう、すべてはあの瞬間に終わってしまったんだ。


---


「なん、だとっ」

響き渡る轟音。

繰り返し起こる爆発。

明らかに非日常な景色を前に、俺は呆然と突っ立っていることしかできなかった。

ついさっきまで普通に学校から普通に通学路を通って帰っていたはずなのに。

何かに導かれるように、俺はいつもの帰り道とは違う路地に入った。

その道自体は以前にも通ったことがある。

だからこの路地がどこに出るのかは頭では分かっていたし、ただの思い込みかもしれない。

だがその時はなぜか、この道を通るしかないと感じていた。

その直感を信じた結果。

目の前には、街中に突然現れたでかい化け物とそれと対峙している女の子が3人ほど現れた。

化け物はサルを巨大化させたようなモンスターで、それに対して女の子たちが攻撃をしている。

そう、攻撃をしているのだ。

彼女たちは明らかに人間離れした跳躍力で飛び回り、魔法陣のようなものを発生させてそこからビームのようなものを出している。

よくお話に出てくる、魔法が頭の中に浮かんだ。

ここからだとあまりよく見えないが、女の子たちが武器を持っているようには見えない。

魔法使いとモンスターの戦いなんだろうか。

だがしかしこれは……。

初めは突然目の前に現れた状況についていけず唖然としたが、この状況は俺が待ち望んだ状況ではないのか?

アニメのようなバトル。

漫画のような力。

中二病の俺がずっと望んできた状況だ。

化け物と女の子たちはこちらには気づいていない。

冷静になった後でこの状況を見れば、圧倒的に3人の女の子が押しているように見える。

そのあとであの魔法みたいな力の正体を探るなり聞くなりすればいい。

「事実は小説よりも奇なり、とは言うけれどほんとにこんな現実が存在するんだな」

俺は感心しながら少女らの魔法バトル?を観戦する。

その時、ふと気づいた。

「ん?あいつ……、明莉?」

少し距離があるからよく見えないうえにかなりの速度で動いている彼女たちの一人が何となく見覚えがある気がした。

というかあれ、俺の妹じゃないか?

俺はよく目を凝らして一人の女の子を目で追うことにした。

どうにか妹かどうか確かめようと必死で見ていると、ドカンッ!といきなり大きな音が鳴り響く。

「うおぉっ!?」

ほかの少女が大きな攻撃を仕掛けたようでかなりでかい爆発が起こったようだ。

俺は自分の妹かもしれない女の子に集中していたので、ほかの子の行動を全く見ていなかった。

そんな時に突然の爆発で驚きの声を上げてしまう。

爆発とともに爆炎と煙が巻き起こり、どうなったのか一切の状況が分からなくなる。

ふと、この周りに人はいないのかと考えて俺と戦っている3人の女の子以外に周りに一切の人がいないことに気付いた。

「俺が知っている人避けの結界に近しいものが展開しているのか、もしくはこの区域だけ別次元に転移させているのかとかそういうのだろうな」

ますます、アニメでよくありそうな展開である。

正直、興奮が止まらない。

こんなわくわくしたのはいつ以来だろうか。

そうだ、いくら黒魔術や呪術を学んだり研究したりしてもなかなか本物にはたどり着けない。

俺が必死で研究したものも、まともに効果を及ぼすものなんてほとんどない。

だが、この状況。

そう、魔法のような力がこの世界に存在することが分かったというだけで俺は喜びを隠せない。

「テンション上がってきっ」

ドゴオォォォォン!!!!

きたー!!と言おうとした瞬間。

俺の隣に巨大な何かが飛んできた。

路地の出口から様子を見ていた俺の両脇には当然建物があるわけだが、右側が完全に崩壊している。

また突然の出来事に体が固まって俺は動くことができなかった。

爆煙が渦巻く中からいきなり何かが飛んできたのだ。

巨大な何かが。

「え?」

俺は反射的に右側に振り向いた。

ガラガラと建物が少しずつ崩れながらその中にいたのは、先ほどまで少女たちが戦っていた化け物だった。

そして不幸なことに。

俺が振り向いた瞬間、その化け物の顔も丁度こちらを向いていた。

「……」

俺と化け物の目があった。

ほんの一瞬の出来事だが、俺も化け物も目があった瞬間固まって見つめあっている。

何が楽しくてこんな化け物と見つめあわなければならんのだ、見つめあうならかわいい女の子がよかったなんて言う冗談は後から思いつくことで、このときはもはやそんな余裕は俺には残っていなかった。

やばいやばいやばいやばい。

これはやばい。

本能が逃げろと感じているがあいにくと体は完全に硬直してしまっている。

「ウガァァアアアアアアアアア!!!!!」

すると突然に化け物が雄たけびを上げる。

それを聞いた瞬間、俺の体は動くようになっていた。

すぐに化け物に背を向け全力で走り抜ける。

俺は後ろを確認するように数秒走ってから振り向いた。

もちろん走りながらである。

化け物はがれきに埋もれていた場所から立ち上がりこちらを見据えている。

やばい、できるだけ距離を稼いで、時間を稼いで何とかやり過ごすしかない。

後ろを見ながら走りそんなことを考えていたとき、遠くから叫ぶ声が聞こえた。

「おにいちゃぁぁぁん!!!」

その声は遠くからだったからよく聞こえはしなかったが、それでも。

普段から聞きなれた声だった。

そうだ、やっぱりあれは妹の……

ずるっ

「え?」

後ろを見ながら、それも考え事をしながら走っていた俺は、進行方向のことなんて何も考えずに走っていた。

俺の走る先に何があるか、何が落ちているかなんて、まったく気にしていなかった。

走っていたはずの俺の体は気づけばゆっくりと回転しながら宙に浮いている。

何が起こったのか一切わからない。

なぜか時間がすごく遅く進んでいるような感覚に襲われる。

そしてゆっくりと回転しながら俺の目に飛び込んできたのは、

バナナの皮だった。

つまりは、後ろを向きながら走っていた俺はバナナの皮が落ちているのに気付かず、それを思いっきり踏んで滑って転んでいる最中ということだ。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!?」

俺はそんな状況で何もできずにただただ運動エネルギーに体を任せることになって。

ゴンッと鈍い音を響かせながら。

「がっ……」

盛大に地面に頭をぶつけることになった。

頭をぶつけた瞬間に俺の目の前は真っ黒になりすべての終わりを告げるかのごとく、俺の意識は真っ暗の闇の中に沈んでいったのだった。


---


自分の死の直前のことを思い返していれば、気づいたら俺は先ほどの三途の川ではなく別の場所に立っていた。

俺が生前のことを考えながら現実逃避している間に勝手に連れてこられたようだ。

先ほどとは打って変わって建物の中のようで中国にある城の中のような作りにところどころ中世風のデザインを加えたような最新式中国系デザインみたいな内装の大きな部屋。

かなり広いようで学校の体育館二つ分ほどはありそうな感じだ。

「おい」

そんな建物の感想を思い浮かべていると突然上から声がかかった。

「え?」

声のほうに顔を向けると、今までなぜか気づかなかったが仏像のような大きな巨体の男が座っていた。

部屋を見渡した時は、完全に仏像的な置物だと頭が思い込んでスルーしていたようだ。

そのでかい巨体に俺は一瞬たじろぐ。

「おい、儂の声は聞こえているか?」

巨大な男とは言ったが正確には顔は黒い布をかぶせており男かどうか確実な判断はできない。

体つきと声で男と判断したのだが、そいつは黒基調の着物を着ていて悠然と俺の前に座っている。

これはもしかすると、閻魔大王というやつじゃないのか?

「あ、あぁ。聞こえてる」

俺は何とか言葉を返すと、そいつは小さな溜息をついて言葉を続けた。

「時々いるのだ、自分の死を受け入れられず常に放心して外から話しかけても何をしても反応を示さないやつが。だがまあお前はちゃんと会話ができるようで何よりだ」

「はぁ、そう」

「さて、では改めて儂は閻魔大王だ。うすうすお主も察しとるかもしれんが、地獄行きか天国行きかがここで決まる」

やはりこいつは閻魔大王だったようだ。

というか、現世で考えられている死後の世界ってやつはそのまんまなんだな。

誰が伝えたのか、どこから死後の世界の情報が漏れているのかは知らないが、おおよそ想像通りだったということに俺は少し驚く。

「その地獄か天国かっていうのは、何で決まるんだ?やっぱり生前の行いとかでか?」

俺はとりあえず思った質問をしてみる。

「まあそうだな。おい、こやつの資料を持ってこい」

そう閻魔大王はいつの間にか隣に控えていた文字通り鬼の姿をしたやつに命令をする。

赤色だから赤鬼なんだろうか。

さすがに死後の世界、人外が普通に出てくるな。

すると少したって、鬼が戻ってきて巻物を閻魔大王に渡す。

もちろん鬼は俺たち人間と同サイズだから巻物はそこまで大きくないのだが、それを閻魔大王の手に乗せると巻物も閻魔大王が読みやすいサイズに突然巨大化した。

死後の世界、技術力ぱねぇな。

「ふむ、名前は三ツ橋透里。享年18歳。特に突出した才能もなく、強いて挙げれば趣味の黒魔術、呪術などを熱心に勉強していたと。人生最後の言葉は「がっ……」。そして死因だが……」

「……」

「バナナの皮に滑って転んだ?お主、これ本気で言っとるのか?」

「いや、俺だってそんな死に方になるなんて思ってもみなかったわ!!なんで命張ってまでネタに走らなきゃならねぇんだよ!!」

黙って話を聞いていた俺だったが、さすがにそんな聞かれ方をしてしまったら反論するにきまっている。

「まあ、儂も数えきれんほどの死因を見てきたわけだが、さすがにバナナの皮はお主が初かもしれん」

「そんな不名誉いらねぇよ!!」

「だが、お主。それ以外は平凡だな。何もしておらんではないか」

「散々な言いようだなぁおい!この年齢で死んじまって何かをなしてるやつのほうが少ないだろ!」

「儂を前にそこまで反抗的な口調で言い返してくる輩は珍しい。そしてお主の言い分も間違いではない。人に誇れるほどの人生を送っている物など半分もおらん。だが、その反抗的な口調がむかつくからお主は地獄行きだ。地獄からやり直してこい」

「なっ!!?」

「なんだ?文句があるのか?」

「文句しかねぇよ!!!」

「いくら何を言おうとお主の地獄行きは変わらん。ほれ、落とせ」

俺がいくら何を言おうと聞く耳を持たないがごとくの反応で、閻魔大王はまた隣の鬼に支持を出した。

ん?落とせ?

ポチッというボタンを押す音が小さく聞こえた気がした。

その瞬間。

俺の立っていた地面がなくなって大きな穴が出来上がる。

「うおぉぉぉぉ!???」

俺は唐突に地面の下に落ちる。

それを眺める閻魔大王の顔は何やらにやけているようだった。

あの野郎、もう一度会ったら叩きのめしてやる。

そう思いながら俺は下へ下へと落ちて行った。

「つかこれ死ぬだろ!!どんだけ落ちんだよやばいだろ!」

と叫んだ時点で気づいた。

「あ、もう死んでるから大丈夫なのか」

と考えた瞬間、突然地面にたたきつけられた。

すさまじい衝撃ともはや死んだほうがましじゃないかという激痛。

俺は数分間その場でもがき苦しんだ。

10分くらいすると少しずつ痛みが引いていき、やっとまともに活動できるくらいには回復した。

どうやら体自体はすこしすれば回復するようだ。

そして、その時になってやっと俺のおかれた状況を理解した。

荒れ果てた、草木一つない荒野。

赤黒く漂う空。

遠くを見れば、何人かが倒れている。

地獄のような光景。

いや、ここは文字通り地獄なのだと俺はその時実感した。

そしてそれを実感した瞬間、

「バナナの皮で死んで地獄行きだと?やってられるかコノヤロー!!!!!!!!!」

思わず俺は叫んでしまうのだった。


初めまして

いどと申します。

二次創作系は別のサイトで書いていたりしますが、オリジナルは長編は久々の投稿です。

かなり更新は遅くなるかもしれませんがちょこちょこ書いていきますのでよろしくお願いいたします。

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