A princess in back/聖月愛
好き。
大好き。
愛してる。
誰にも渡したくない。
けど、いつまでも一緒にはいられない。
そのために、私は自らの命を絶ったのだから――――。
++
「悪いけど、アナタ邪魔なの」
はっ?
思わず眉が寄ってしまう。
今までのストレスが発散しきれずに限界がきて倒れてしまって、多分保健室に運ばれた私はいまさっき目覚めて、掛けてあった時計を見ると、その針が示していた時間は15時30分だった。帰りのS.T.も終わって掃除が始まろうとしている時間帯だ。
確か今週の掃除当番は4班だったから、飛鳥の班でも私の班でもない。もっとも、飛鳥と一緒に帰りたいから私のでもサボるつもりだけど。
まあ、そうすると飛鳥の雷が落ちるからしないんだけど……。待っててくれるし。
だから、そんなこんなで私は自分の体の心配よりも飛鳥が帰っていないかどうかの心配でベッドから出て、そのまま教室へと向かおうとカーテンを開けたら、なぜか扉の前には一人の女子生徒。
気に留めるわけもなく、うわぐつを履いて立つと、そこにそれこそなぜか声をかけられた。
それが、さっきの台詞。
いや、本当に「は?」なんだけど。意味がわからない。
見たこともない。面識のない人に話しかけられて、しかもその内容が〝 邪魔 〟っていうのはかなり失礼な気がする。
クラスの人たちから疎んじられていることは百も承知だったけど……。ぶっちゃけ、目の前の女子がそのクラスメートなのかさえ、いまの私には判別がつかない。
けど、はっきりとしていることはある。
それは、飛鳥に言い寄る害なる存在だということ。
「貴女が最近飛鳥に言い寄っているということは明白な事実として残っているの。だから、邪魔」
「意味わかんないんだけど! 私、飛鳥くんに対して言い寄った覚えなんかないしっ、勝手に作らないでよ!!」
「作ってなんかない。全て事実」
こっちからして見れば、目の前の女子が私の言葉に対してそれこそ勝手に激昂しているという認識しかできなかった。
飛鳥に近づく人――特に女子は、許せない。
私には飛鳥しかいなくて、飛鳥がいないとダメなのに……っ!
私は必死だった。
当人がいないのにも関わらず、まるで飛鳥が取られてしまいそうな焦燥が私を襲うから。
いつの間にか両手は固く握り締められていて、足にはこれ以上ない余計な力が加わっているせいで立っているだけで疲労が伴う。
それなのに頭だけは冴え渡るみたいにしっかりとしていて、次に何を言うかどうかはすんなりと口から出てくる。
「私には飛鳥しかいないのに、土足で無遠慮に入ってくるのは部外者の貴女じゃないっ……。私は、間違ってなんかいない」
――いない、はず。
この世で最も嫌われたくない人に嫌われるということは、最も酷なことだから。
「だから、」
「嘘つき! そんなの聖月の勝手な妄想じゃない!! 嘘つきは泥棒の始まりって言うのよっ」
「そんなことは私でも知ってるわよっ。もうっ……、ウルサイ!!」
つま先を勢いよく蹴って扉の元まで行き、力の許す限りにそれを開いて私は冷たい廊下へと飛び出した。
++
――?
気がつくとそこに飛鳥の姿はなく、代わりにあるのは持ち主のいない机と椅子。教室を見渡す限りでは他の生徒の姿も見えず、ここには人っ子一人としていなかった。
まあ、幽霊である私を数に入れるのだとすれば一人……ということになるのだろうけれど。
それにしても、本当に幽霊って便利よね。
生きてる人に認識させたりさせなかったりができるのだから。
いまは認識できないようにさせているけれど、それでも飛鳥には認識できているはず。
何故かは私にもわからないのだけれど、何故か飛鳥にはどちらだろうが関係なく私を認識することができる。さすがに今回の場合は視ることしかできないみたいだけれど……。
「でも、飛鳥も教えてくれればいいのにね」
自然と口元が左右へとゆったり伸びるのがわかった。