第5話|ディートリヒ② 証拠を掴み始める
屋敷の書斎で、ディートリヒは静かに報告書に目を通していた。
黒髪は夜の影に溶け、深い青の瞳だけが淡く光を反射する。
リリアーナの行動、セリーナの策略、屋敷内の微妙な権力の傾き――すべてが手に取るように見えていた。
また、先日の宴でエドガーが大々的にリリアーナと婚約破棄をしてくれたおかげで、正直無駄な労力を省く事が出来た。
「そろそろか…」
彼の低い声は誰にも届かず、空気だけが微かに震える。
今こそ動く時だ――そう決意したディートリヒの指先が机の上の書類を軽く叩く。
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翌日、ディートリヒは慎重に屋敷へ足を運んだ。
ヴィクトルの前で、一歩も退かず堂々とした面持ちで立ち、落ち着いた声で告げる。
「ヴィクトル・ベルナール殿。貴公のご息女リリアーナ嬢との婚約を、私は望んでいる」
ディートリヒは決して、ヴィクトルに対して伯爵とは呼ばない。
あくまでも彼は、伯爵代理だ。
今、この時も亡くなっていたとしても、継承しない限り、この家の当主は、アデリーヌその人であり、後継者はリリアーナ以外はあり得ない。
その声は冷徹で、理知的な力を伴っていた。
だが同時に、あまりに端正で美しい容貌が相まって、室内の空気を一変させる。
ヴィクトルは一瞬、言葉を失う。
「当家への輿入れには、持参金は必要ない。
その代わり……公爵家へ嫁ぐに相応しい、支度金はこちらで用意する」
ディートリヒが提示した法外な支度金の額を目にした瞬間、ヴィクトルは理性よりも欲望が先に顔を出す。
「こ、これは…」
目が眩むような額に、心の奥底で躊躇はあったものの、伯爵としての地位と財を想像し、頷くしかなかった。
同席していたヴァネッサもまた、胸を高鳴ら




