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第2話|冷静を装う宰相
出産の間際、ディートリヒはいつも通り冷静を装う。
「手を握れ」「深呼吸を」と的確に指示するが、その動作は普段の几帳面さを超えて大げさで、思わず侍女たちが目を見合わせる。
赤ん坊の産声が響くと、彼は膝を折り、わずかに震える。
冷徹宰相の仮面は消え、ただ感極まった父の姿がそこにあった。
リリアーナが微笑み、執事や侍女たちはほっと胸を撫で下ろす。
初めて抱く小さな命に触れ、ディートリヒはそっと名前を呼ぶ。
震える声に、愛情が溢れ出す。
家族の幸せと温もりが、屋敷に静かに満ちていた。




