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新訳世界のリフレーン  作者: Knyth
第一章 流水の村
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第二話『はじめての新世界』

 どうやら俺は産まれたらしい。人生2回目の誕生だ。いや2回目の人生?もしかして転生という奴だろうか。瞼に全力を注ぎ、ようやっと開眼してからこれが夢でないと気づいた。


 どうやらここは地球ではないらしい。俺が居た2027年の地球とは似て非なるものだ。


 根拠は、まずこの世界の夜は異様に明るい事。

 まだこの部屋から出たことも無いのだが、夜になっても部屋の中はセピア色に照らされている。

 どうやら窓から見えるあの赤い星が、この世界の夜にヴィンテージ風のフィルターをかけているらしく、時折月に遮られると、世界は黒い外套に包まれたように暗闇となる。

 夜のイメージカラーがセピアなら、この世界ではセピアが卑猥な色だったりするのだろうか?それを言ったら地球では黒が卑猥な色になってしまうか。


 2つ目の根拠は、言葉がおかしい事。

 日本語で喋っているのは確かなのだが、会話を聞いていると「バイコクドニシン」や「ザコイワニ」みたいなとてつもなく変テコな単語が出てくることがある。

 そういうのはまだ分かる。

 一番不可解なのは俺の名前だ。この世界での俺の名前はルロルフ、確か22が名前の由来と言っていたな。しかし、だ。しかし、俺のあだ名は(ルル)

 どう考えても数が合わない。

 思えば、なぜだか『ルル』という言葉が数字の9を意味すると感じ取れてしまうのも不可解だ。この身体、もしくはこの世界には何かそういう仕組みがあるのか…。謎は深まるばかりだ。


 3つ目は、文化だ。

 見たところ、現代日本とは比べ物にならない程の生活水準だ。いい方にではない、悪い方にだ。服は「私たち古代ローマから来たんですよ。」と言わんばかりの荘厳な装いだが、下手したら農耕が始まってすらいない。しかし、農耕が始まっていないとすると共産社会なのか?赤き同志達が夢に描いたシャングリラ…。


 そう考えれば案外悪くないのか…?


 料理は土器で炊いたものや焚き火で焼いたものが主流で、教科書で見た縄文時代とかそこら辺の光景。土器の皿はあるが、もちろん素手だ。


 片手に肉を片手で持って、もう片方の手できのみを取り頬張る光景は、何とも原始人が過ぎる。


「子供にはあまり興味が無かったのだが…自分の子となると可愛いものだな…」


 そう独りでに呟いて、そーっと割れ物を扱うように俺の頭を撫でた。


 ちゃっかり衛生観念が終わっているこの原始人が俺の母親だ。

 罵った瞬間に言うのもなんだが、混乱していたとは言え腹を痛めて産んでくれたのに、神聖なる羊水を下水呼ばわりし、あまつさえ聖域を下水管呼ばわり。できることなら早急に土下座で謝りたい。だが、まだ産まれて数週の赤子だというのにどう謝り、どう説明すれば。

 そもそも、普通ならまだ物覚えもついていないような年齢だ。赤子の姿で土下座なんてすれば間違いなく気味悪がられるだろう。

 そもそもこの世界で、土下座は謝罪になるのか?外国に行ったらよくある、あまり知られていない侮辱のサインとかの可能性がないか?

 しばらく考えた末、今世こそは親孝行をちゃんとしよう。そう心の中で誓った。


「お姉様…食事中に赤ちゃんを撫でるのは…!せめて手を洗ってからにしてください!」


「そうか…」


 母親が木の実を食べた手で、俺の頭を撫で回している事にたった今気づいた彼女は、俺が生まれた時、助産師をしてくれた叔母さん(開眼直前、母親はユニコと呼んでいた)だ。何がとは言わないがとてもデッッッッ!!!!

 誓いを立てたそばから、また、とてつもなく下世話な話をするが、ユニコ叔母さんは母親とは比べものにならないほど胸が大きい。というより、それもあるが母親には胸の膨らみがほぼない。真っ平らだ。そのせいか乳母はユニコ叔母さんがしてくれている。


「そうだな…すまない。」


 珍しくしおらしい。

 普段、母親はあまり女性らしくない猛々しい言葉を使う。女性というより、むしろ男性に近い言葉遣いだ。昨今では珍しくないが、こんな原始の世界に居て疎まれないのだろうか。

 『お姉様』と呼ばれているのを見るに、お偉いさんに見える。族長、あるいは高潔な女騎士のどちらかなのだろう…。


* * *


 幾文か経った。

 少し前から、基本的には四つん這いだがちょっとだけ歩けるようになって、この世界がどんな場所かさらに分かるようになってきた。母親(ジスとよく呼ばれている)は族長ではなかったが、村長の娘らしい。


 そして、今、目の前で号泣している年老いた爺さんこそが村長、つまり俺のおじいちゃんだ。親しみを込めてグランパと呼んでいる。


「た…!立ったーッ!ワシの孫!ルロルフが立ったッ!!!」


 聞いたことがあるようなセリフだな。見てのとおりかなりの激情家だ。俺を見る度に叫びながら踊り狂うから普段がどんなのかは分からないが愉快な人なのには違い無さそうだ。


「父ちゃん…村長としての威厳をだな…」


「ジス、これから父ちゃんのコトは父ちゃんじゃなくジィジと呼びなさい。また、それに伴いワシはこれからお主のことをルロルフのママと呼ぶことにする。」


「勘弁してくれ…」


 仲の良い親子だな。20年くらい振り回し振り回されて来たんだろうなと容易に想像できる。見ているこっちがほっこりしてくるな。


「ルロルフ…本当にいい名前じゃな、(ルル)から取ったんだって?」


 おっ、名前の由来の話か。家族団らんの定番だな。


「…ああ。9番目の英雄、知者ルルから取った。」


 9番目の英雄…?知者ルル…?

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