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■侍女マリーの決意
あの方に声をかけるなんて、本当はすごく勇気がいったんです。
はじめてお見かけしたのは、レオニス様がお帰りになった時。
アベル様はレオニス様の外套に包まれて抱き上げられてて。なんだか姿を見られるのを怖がっているように見えたの。
外套の隙間から、ほんの一瞬だったけど、目が合って。
そのときの表情……すごく悲しい顔でした。
あんな小さなお姿なのに、深い悲しみがにじんでいて……それが、ずっと心に引っかかってて。
でも、ただ見ているだけじゃ駄目だと思って。
何かできることはないかって、ずっと考えていた。
私でもできる事、お花なら……って。
お部屋、少し寂しそうだったから。せめて色だけでも、明るくできたらって……。
それだけなんだけど……「構わない」って、受け取ってくださった。
レオニス様から聞いたけど、お花を見て「悪くない」そう言ってくださったそうなの。
わたし今、少しだけ誇らしい。