表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明け知らずの黒狼ー幼き将と終齢の子ー  作者: 紺
三章 終齢の子
38/56

5.知識の重積

 レオニス邸の一階、最奥の空き部屋がノアのための部屋となった。大きなテーブルと本棚が運び込まれ、そこには少しずつ資料や道具が増えていく。


「どうしたんだ、これ」

 部屋の内部を見たアベルの目に飛び込んできたのは、いくつかの見慣れない大きめの魔道具の数々だった。

「母校から期限付きで借りてきたんです。流石に自費で検査の器具を集めるのは難しくて」

 カルディア国立高等学術院。ノアの母校だ。影落ちから黒狼の仔として世間の目が変わったことで、元影落ちにも学業の機会を、と運動が起きたタイミングでノアは入学した。黒狼の仔として初めて主席で卒業し、王都王国中央治安軍に入官。第三師団副官に出世は異例中の異例だった。

 そんな経歴もあって、学院には融通が効くのだろう。見慣れない器具の数々に、セロは目を輝かせてテーブルの上を眺めている。


「すごい、本もいっぱい」

 アベルと共に訪ねてきたセロも感嘆の声を上げる。

「あぁ、あと、これも無事に届いた」

 ノアは机の真ん中に積んであった紙束をセロに向かって、指し示す。

 セロは小さく首を傾げた。

「セロさんの終齢石を取り除こうとした方々の報告書です。予想以上でした」

「……!」

 セロが目を丸くする。動揺で目が揺らぐ。

「でも、取り外そうとした結果は全て……」

「そう「失敗」……ですよね。だから、学術的な論文にもなっていないし、勿論、学院や王都の書庫に並べられるわけがない。「無い物」として扱われていた物です」

 ノアは、重ねられた紙の束にそっと手を添えた。

「そんな物、一体どこで……?」

「貴方の居た施設ですよ。グラート教授に貴方の事を知らせた元教え子の施設職員……ルデアさんが、全て保管していたんです。自身の意思で」

「……あの、人が……?」

 セロが小さく言葉を漏らす。

「『知識の重積は、何よりも強い』……恩師の言葉です」

 きっとその「元教え子」も、そのグラート教授の言葉を覚えていたのだろう。一つ一つの結果に意味はなくとも、積み重ねられた知識に意味がある、と。

 セロの肩が震えている。

「……その書類の厚さは、ダメだったって言われた数を表すだけのものだって、そう思ってた……けど、裏を返せば……これだけの人たちが、僕を助けようとしてくれていた……んですよね……」

 ノアが頷く。

「ここから、少しでも手がかりが掴めたら……。この人たちが紡いだ努力や思いだって、無駄にはならない。俺はそう思います」

 ノアの言葉に、セロは頷いた。

「ノアさん、始めましょう。アベルさんのためにも、この書類を残してくれた人たちの為にも」

 アベル不在の穴を埋めながら、二人の終齢石の除去に挑む。並々ならぬ苦労が待っていることだろう。

 だが、その目に浮かぶノアの決意は固い。

 アベルは胸に懸念を抱きながら、二人のやりとりを見守っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ