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夜明け知らずの黒狼ー幼き将と終齢の子ー  作者: 紺
三章 終齢の子
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⬛︎宿屋での叱責

「ノア」

「はいっ! アベル様!」

 宿屋の一室。アベルの低い声がノアにかかる。

 にわか雨に降られ、ずぶ濡れの状態で宿に到着した。アベルの着替えまで濡れてしまったので、今は乾くまで一時的にノアの内着を着ている。元のアベルよりも小柄とはいえ、成人した男性のシャツだ。肩からずり落ちた襟元に、鎖骨がひとつだけ覗いて、裾は膝丈になっている。

 それでもアベルはベッドの上に立って腕を組み、床に膝を折っているノアを見下ろした。

「お前、また言ったろう」

「……? 何をでしょう?」

「……宿屋の受付で、様を付けた。それに着替えだのなんだので大騒ぎをしたろう。どんな関係だと勘ぐられる事は慎めと言ったろう。目立ちすぎる」

「しかし、お風邪を召されては……」

「あの程度では風邪など引かん。それよりも宿屋の女将の目……明日の朝飯でどんな顔をすれば良いんだ俺は」

「かわいらしいので問題ないかと」

「……そういう問題ではない」

 アベルは頭を押さえた。

「ところでアベル様、なぜベッドの上に?」

「……見上げて叱るのが癪だからだ」

 そのアベルの言葉に顔を覆い天井を仰ぐノア。

「も、無理……。俺のシャツ着て叱ってくださるアベル様……尊い……」

「聞いているのか……」

「聞いてますっ」

 この姿になってから、この右腕ともなる副官がおかしい。アベルはため息をついた。


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