表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明け知らずの黒狼ー幼き将と終齢の子ー  作者: 紺
三章 終齢の子
31/56

⬛︎愛玩の器

 月を見るのは好きだった。時が進んでいるのを知ることが出来るから。

 宝石箱のような部屋の天窓から月が覗くたび、少しだけ自分のことを忘れられる。


 愛玩(あいがん)の器。皆が僕をそう呼ぶ。

 変わらない姿、煌びやかな装飾を施される美しい容姿、逆らわない従順な幼子。それが僕だった。

 ここに連れ去られて、囚われて、何年経っただろうか。季節が何度巡ったか数えるのはやめてしまった。

 ご主人様のお気に召さなかったり、役に立たない子は、箱の中に戻される。次にその箱から引き出された時には、知らない子になってる。だから、綺麗にして、気に入られるように、振る舞って──。それが当たり前になるのに、長い時間は掛からなかった。そうして僕はご主人様の「一番の逸品」になった。

 今日も、この髪を梳かれて、肌を撫でられて、耳元でこう囁かれる。


──お前は美しい飾り子だ。ずっとそのままでいておくれ。絹のように細やかな柔膚(にぎはだ)、琥珀に水銀が落ちたような瞳、夜空に星が融けたが如く光るその髪も。みんな私のものだ。


 指輪の光る筋張った手が体の上を撫でて。僕はそれに目を細めて、頬をすり寄せる。そうしなければ、いけないから。


 みんな、この器しか見ていない。

 なら、この器のなかに注がれている僕は、一体なんなんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ