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聖女(奴隷)と盗賊(外道)が、世界を救うはずがない  作者: 黒天
第一章「聖女攫いと黒鉄輪禍」 
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【第1話】悪党が悪を討つ理由なんざ、腹の足しにもならねぇ

月が血のように赤く染まった夜、俺――“泥喰いのラグド”は、久々に満ち足りた気分でいた。

 焼け落ちた貴族の屋敷。煙に巻かれた衛兵たち。盗み出した金貨の袋を肩にぶら下げ、俺たち盗賊団《屑星》は、森の中の隠れ家へと引き上げていた。


 仲間は二十名。どいつもこいつも、どこか壊れてる連中ばかりだが、奇襲と卑怯の技に関しては俺の右に出るやつはいねぇ。


「ボス、今日も派手にやりましたねェ」

「うるせぇ、ダルク。声がでけぇ。獲物は静かに持ち帰るもんだ」


 背後の森から、異様な呻き声が響いた。


「…またかよ。最近この辺、妙に化け物の出没が増えてるな」


 そいつは“人喰いグール”。しかも、普通のやつと違って、ただの屍肉じゃなく、“悪意”に引き寄せられて人を襲うやっかいなやつだ。


「おいおい、ラグド。今夜はもう仕事終わっただろ。化け物退治なんて、俺たちの稼業じゃねぇよな?」

「普通ならな。だが……こいつは違ぇ」


 俺は舌なめずりしながら、グールの影に目を細めた。


「化け物の腹の中には、時々“呪金”が溜まる。それを売れば、領主の金庫を空にするより稼げるって話だ」


 つまりは――悪意に満ちた化け物を喰って、もっと汚ぇ金を手に入れる。それができるなら、俺は喜んで“正義の味方”ってやつを気取ってやる。


「全員、弓を構えろ。火矢を使え。森ごと焼き払ってでも仕留めろ。俺たちは盗賊だ。手段も道理も、気分次第だろ?」


 グールの群れは森の闇から現れた。

 牙を剥き、笑い声のようなうめき声を上げる異形ども。だが俺たちは怯えない。奇襲と混乱こそが、俺の得意分野だ。


「“屑星”のやり方、見せてやろうぜ……化け物ども!」


 火矢が夜を裂き、グールの体を焼き尽くす。

 叫び声、火薬の爆発、罠にかかった化け物が次々に断末魔を上げて倒れていく。


 戦いの後、俺たちは灰と骨の中から黒く輝く“呪金”を見つけた。


「悪党が悪を討つ理由なんざ、腹の足しにもならねぇが……腹の中に金が溜まるなら、話は別だ」


 俺たちは笑った。

 焼けた森を背に、またひとつ“悪”を喰い潰した夜だった。



次回、「屑星、聖女を攫う」。次の標的は、聖堂に眠る“祝福の器”――?

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