領域からの生還者
魂断の剣を手に入れたセリアは、村の集会場に戻り、村人たちとバラザ討伐の準備を進めることになった。
「この剣……使い方がわからないと意味がないわね。」
セリアは剣を握りしめながら呟いた。確かに伝説の武器らしい雰囲気はあるが、特別な力を感じるわけではない。剣術の心得もない自分がこれをどう扱えばいいのか、皆目見当がつかなかった。
すると、長老が静かに口を開いた。
「魂断の剣は、普通の剣とは異なります。この剣の力を解放するには、特定の条件があると言われています。」
「条件……?」
「この剣は、死霊術によって操られた魂を切り離すためのもの。通常の剣と同じように振るっても、力を発揮できるものではありません。過去の伝承では、この剣を正しく扱うには、“魂の波長”を理解することが重要とされています。」
「魂の波長……? そんなの、どうやって……。」
「それについては、かつてこの村に伝わる剣士の技があったそうです。しかし、その剣技は今や失われてしまいました。」
「結局、手探りでやるしかないのね……。」
セリアはため息をついた。
「まあ、剣の使い方は置いといて……バラザの拠点について何かわかる?」
長老は頷き、地図を広げた。
「バラザは、村から北東に位置する死霊の谷に居を構えています。谷は常に霧に包まれ、近づく者は皆行方不明になると恐れられている場所です。」
「……厄介ね。」
セリアは眉をひそめた。霧に包まれた危険な地帯。戦闘以前に、そこへたどり着くのも困難そうだ。
「しかし、最近、村人の一人が谷から戻ってきました。」
「え?」
「彼は奇跡的にバラザの領域から逃げ延びたのです。ただし……彼は今、正気を失い、何も話せなくなってしまいました。」
「それって……バラザの死霊術の影響?」
「おそらく……。ですが、彼の目撃情報があれば、バラザの拠点への道を知る手がかりになるかもしれません。」
「……その人、どこにいるの?」
「村の診療所で療養しています。話ができるかはわかりませんが、会ってみますか?」
「もちろん。少しでも情報があるなら、聞き出さないと。」
セリアは気を引き締めた。
魂断の剣の使い方は未知数。敵の拠点は霧に包まれ、恐ろしい死霊が跋扈する場所。何もかもが不安要素だらけだ。
しかし、魔王幹部との戦いを避けることはできない。
「よし、まずはその村人に会ってみよう。」
こうして、セリアとグリは診療所へと向かった——。