新たな旅
リューゲン王国を後にし、セリアとグリは新たな旅路へと歩みを進めていた。
王都を抜け、しばらく街道を歩いていると、見渡す限りの草原が広がっていた。風は心地よく、空は澄み渡っている。旅立ちには申し分ない天気だった。
「さて……次の目的地は、東の村だったわよね。」
セリアは旅支度を整えた鞄を背負いながら、地図を確認する。
「ゴハン!」
「ううん、目的地じゃなくて……って、あんたは本当にそればっかりね。」
グリはセリアの肩にちょこんと乗りながら、相変わらず「ゴハン!」と連呼している。
セリアはため息をつきながらも、微笑ましげにグリを撫でた。
「まぁ、今日の分の食料は持ってるから……村に着くまで我慢しなさいよ。」
「ガマン、ガマン!」
「そうそう、いい子ね……って、ほんとに意味分かってるの?」
セリアは苦笑しつつ、改めて地図に目を落とした。
次に目指すのは、王都の東に位置するラザン村。この村には「神獣の伝承」があり、古くから神獣を祀る風習が残っているという。
リューゲン王の話では、この村に行けば、グリが“神獣”として扱われていることがどれほど広まっているのかを知ることができるらしい。
「でも……なんでそんな村に、わざわざ行かなきゃならないのよ……。」
セリアはぼやきながら歩く。
本音を言えば、もう神獣の誤解には振り回されたくなかった。だが、王からの情報提供という形で勧められた以上、無視するわけにもいかない。
それに——
「……魔王幹部の気配があるって話もあったしね。」
魔王軍の動向を探るためにも、この村へ向かうことは避けられなかった。
セリアは深呼吸し、気を引き締めた。
「さぁ、グリ。ラザン村まで頑張って歩くわよ!」
「ゴハン!!!」
「だから違うってば!!!」
こうして、セリアとグリの新たな旅が始まった——。
「……また旅が始まったな。」
俺はモニターを見つめながら、ぼそりと呟く。
あれからどれくらい経っただろう。最初はただの混乱だったこの状況にも、少しずつ慣れてきた。
セリアとグリの旅は、まるでRPGのように進んでいく。だけど、これはゲームじゃない。異世界のどこかで、本当に起こっていることだ。
「ラザン村……? 神獣の伝承があるってことは、また面倒なことになりそうだな。」
俺はため息をつく。
どこに行っても、グリは神獣扱いされる。そして、セリアもそれに巻き込まれる。いい加減、本当のことを説明しようとしても、異世界の人間は誰も信じない。
「まぁ、今回もなんとかなる……のか?」
とりあえず、彼女たちの旅を見守ることしかできない俺は、モニター越しに彼らの道行きを見つめ続けた。