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ジャンは悪い子だった。
ジャンとアンと私は同じ年だったのでよく一緒になることがあった。ただ、ジャンは気に入らないことがあれば口よりも手が出るタイプで、私もアンも叩かれ泣いたことがある。
勿論そんな悪い子が許されるわけもなく、ジャンはある日の朝教会の中へ連れて行かれた。滅多に中へ入ることが出来ないのでアンは羨ましがっていたし、ジャンはニヤッとしていた。
親や周りの言うことを聞かない悪い子供は、罰を受けないといけないと聞かされた。一日教会へ預けられ翌朝帰るそうだ。
どんなことをするの?とか、アンが羨ましいって言ってたよとかそんなことを親に言った気がする。その度に私が正しい子だから行かなくていいのだと、自慢の子だと言われ嬉しかった。
夜ベッドに入り、明日ジャンに会ったらきっと怒られて悲しいだろうから、ジャンのしたい遊びをしようと思った。
朝、教会への御祈りをしていると牧師とジャンが一緒に出てきた。
「皆さんおはようございます。ジャンは禊を果たしました。
本日の導きは感謝の言葉を十回です」
そう短く告げると牧師は教会へ帰っていく。
お導きの内容を聞けなかった他の家族は別の家族から聞けばいい。そして教えてもらえたことに感謝をすることで感謝の輪が広がっていく。そうしてみんなが笑顔でいるから嬉しかった。
ジャンが私に気付いたようで駆け寄ってくるのが見えた。
「今までの僕は正しくありませんでした。ごめんなさい。」
まあ、とか、おお、とか聞こえたと思う。一度も謝ったことがなくて、すぐに殴ってくる我儘放題の男の子はどこにもいなかった。驚きすぎて、はい、としか言葉が出なかった。
それから何日経ってもジャンは正しい子だった。声を荒げず、常に微笑んで、そして誰かの手伝いを常にしていた。今も一本の野菜を抱えて歩いている。
大人達は禊を果たし生まれ変わったジャンを素晴らしい、お手本にすべきだ、うちの子も禊を受けられないだろうか?などと絶賛していた。
「きっと試練をお与えになったのよ、乗り越えたジャンはきっと素晴らしいスキルを授かるはずだわ。女神様に感謝を」
我が家でも何度も話題に上がっていた。