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 新年を迎えるといよいよスキル授与の儀式がやってくる。

 五歳の年だった。


 毎日早朝から両親と教会の前へ行き、扉の前で祈りを捧げていた。

 村全体の家族が教会の前へ集まり祈りを捧げる。これは絶対だった。その日のお導きを聞き、そして守るのだと教わった。例えば感謝の言葉を十回言いましょうとか、ハグを五回しましょう、日が落ちてからろうそくの火が消えるまでに寝ましょうなんていうのもあった。

 なんだか面倒だなと思う日もある。でもそんなことを言ってしまうと両親からひどく怒られる。


「教えを守らないと魔に魅入られてしまうよ」


 父や母、そして大人達から子供達はよく聞かされた。


 むかしむかし、正しい国に魔の者が紛れ込んだ

 魔の者は正しい者達をだまし、そして怠惰の道へと誘い込んだ

 魔の者は嘘をつき、人の物を奪い、そして争う

 一人の少女が声を上げ、正しい道へ戻そうとしたがもう遅かった

 やがて土地が穢れ作物は育たなくなった

 少女は最期まで祈った

 正しい者であった少女の死を女神様が嘆き降臨され、天から大きな雷を落とされた

 その雷は大陸全土に渡り、そうしてすべての魔が消え去った


 それがこの国の成り立ちだ。

 私はちょっと前までそのお話を聞くと一人で眠れなくなり、何度も両親の布団に潜り込んでいた。友達のアンにそれがばれてしまってからは一人で眠れるようにしている。


 お話にあった少女が最期に祈りを捧げた場所が今では霊泉と呼ばれており、その傍にこの国でただ一人女神様の代弁者である聖女様が祈りを捧げる神殿が建った。

 聖女様の祈りが国境に守りを張り、魔の者の侵入を防いでいる。

 正しい者だけがその神殿に訪れることができるが、それはスキル授与の儀式で正しいスキルを与えられた者だけ。


 心が揺れやすい子供がどれだけ正しく過ごせたかを女神様は見ておられる。特にこの小さな村は、祖先の信仰心の少なさのせいで霊泉からも遠く離れ、そして祈りが届きづらいのだった。

 だから皆毎朝祈る。そしてお導きを聞き守るのだ。

 体調を崩した者は、積極的に祈ると良い。正しい祈りは身体を健やかにする。


 私達村人は教会へ儀式以外で入ることはできない。

 また長く祈ることも出来ない。両ひざを地に付け、胸の前で両手を組み、唇を付ける。目を閉じ十数えるまでに感謝を心の中で唱える。

 毎日のお導きも簡素なものだった。それが祖先からの習わしだからだ。私達は祖先の分まで地の上で祈り、そして自分の子らが正しくあるように繋げていくのだという。


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