悪役令嬢は、卒業パーティーで悪あがく?
「カミラ嬢! 君との婚約は破棄だ! 再三の通告を無視し、公爵家の力で生徒達を弾圧した横暴さは目に余る。貴族籍の剥奪を命じる」
王太子ロイクの声が、卒業パーティーの広間に響く。
王太子の後ろにはずらりと有力貴族の子息が並び立ち、彼の傍らには小柄な令嬢が震えていた。
男爵家のレア。
公爵令嬢カミラが学園を我が物顔で支配し、取り巻きを引き連れて他の貴族を。特に、男爵家の養女レアを虐め抜いたと噂になっていた。
退学寸前まで追い込まれたレアは、生徒会長である王太子に救いを求め、結果。
全校生徒と保護者が集まる今夜が、裁きの舞台となったようだ。
「殿下が述べられました私の罪状。一切身に覚えがありません」
「騙されぬぞ。虐めだけではない! そなたは自身が目をかけた魔道具屋の品も、多くの生徒に圧し売っただろう! 調べはついている」
「魔道具と申されますと、魔法避けの?」
「そうだ。何の効果もないそれを売りつけられた、と苦情が多数上がって来ていたそうだ」
「効果がないなど、そのような嘘を誰が……」
「レアが教えてくれた」
「……左様で? では殿下も魔法避けをお持ちではない?」
「当然だ! そんな眉唾な物──」
パチリ。
前触れなく、カミラが手に持つ扇子を閉じた。
途端に会場一体の床に、巨大な魔方陣が浮かび輝く。
閃光が迸った。
「わああ」
「なんだ?」
「きゃああ、これは一体!」
光の後、慣れて来た視界が、奇異な光景を映し出した。
「カミラ嬢が、複数いる?!」
会場中央には、先ほどまで断罪されていたカミラその人が、何人も。
全く同じ姿、同じ声で騒めていた。
「お、俺は騎士のルノーだ」
「私は宰相が息子ジャンだ」
カミラ達が慌てた様子で声を上げる。
口々に王太子の側近を名乗り、自分を証明しようとする。
しかし騒ぎは一時だった。
再び白い光が視界を支配し、次に全員が元の姿に戻る。
会場にカミラは唯一人。
「こ、のっ、魔女め! よくも悪あがきを! 会場を混乱に落とし入れ、満足か!」
王太子がカミラを指さし、命じた。
「この者を捕らえよ! おかしな魔法が使えぬよう、喉を潰した後、追放に処す」
兵達に取り押さえられたカミラが、驚くべきことを叫ぶ。
「ち、違う! 私は王太子ロイクだ! 姿を奪われた!」
「世迷いごとを。皆、耳を貸す必要はない。連れていけ!」
カミラが引き立てられ、断罪劇は終幕した。
卒業後、王太子と男爵令嬢が不仲になった為、入れ替わり説も囁かれたが。
真相は、解明されていない──。
お読みいただき有難うございました!
なろうラジオ大賞参加作品6作目です。
1000文字なので何かと消化不良だとは存じますが、こういうものだとお楽しみください。
そう、大掛かりなマジックショー!
カミラは本当に悪事を働いていたのか。魔法避けを持っていた生徒は大丈夫だったのか。少なくとも魔道具は詐欺ではなかったようですが…。そのあたりの文字数が足りませんでした_| ̄|○;
王太子、結局どうなったのでしょうねぇ?
カミラちゃんには、「再三に渡るわたくしの忠告を聞き入れてくださらなかったのは、殿下のほうですわ…! 正義感を気取り、愚者の言葉を鵜呑みにする杜撰さ。到底、国の未来を託せる方ではありません…!」という思いがあったとか、なかったとか。
なお無詠唱で術発動したよね、喉関係なくない?という部分。仕込みは魔道具の扇子で、裏には王太子のガワに恋焦がれてる魔術師がカミラに協力を…。おっと、これ以上はいけない。
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