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ピエロの仲間

作者: 檸檬氷菓

ご覧いただきありがとうございます。檸檬氷菓です。四作目です。夢の中の私はピエロでサーカスの最中に泣いていたのでそこからお話を考えてみました。あなたにも大切な仲間に気づいていただけると幸いです。

 世界一のおもちゃは壊れてしまった。これは誰のせい?

 とある日のサーカスでの話だ。ピエロが突然動かなくなった。電源が切れたかのように突然駄目になった。体育座りをして膝に顔をうずめて。観客も他の団員も皆がピエロを見ていた。だって世界一のおもちゃだったから。壊れたら遊べないじゃないか。

 楽しげな音楽以外が止まったサーカステントで一人の少女が駆け出した。ピエロの傍へ行き、手を差し出した。

「ピエロさん!」

 少女がピエロの腕を掴む。ピエロを拐ってテントを出ていく。壊れたピエロの行方になんて、誰も興味を持たない。世界一のおもちゃを失ったサーカスはまさに現実といったふうでとにかく平凡だった。

 サーカスが閉演したころ、ピエロは少女に連れられて、ぼんやりと街を歩いていた。少女が幾度となく話しかけているが、やはりピエロは壊れたままだ。

「ねえピエロさん、これからどこ行こっか。行きたいとことかない?せっかくだし楽しいことしようよ!」

 ピエロは何も答えない。少女は知らない。楽しいと思えることなんて壊れたピエロには何もない。

「うーん、特にないのかー。じゃあ私の好きなところに連れていってあげる!きっとピエロさんも楽しいよ!」

 そんなわけがないことを少女は知らない。無邪気に笑って少女は走り出す。少女に手を引かれ、ピエロは力なく引きずられていく。

「着いた!ここはね、私の大好きな公園だよ!私いつもここで友達と遊んでたんだあ。もう友達なんて、だーれもいないんだけどね!」

 ピエロは知っている。

「ねえピエロさん、かくれんぼしようよ。私隠れるから見つけに来てね!じゃあ十秒数えてー!」

 少女は走り出す。ピエロは目を閉じる。心の中で十秒数えて少女を探しに行く。

 少女が隠れた場所をピエロは覚えている。低木の後ろで少女は泣いていたのだ。ピエロは少女に伝えたいことがたくさんあった。あるけど、何一つ言えない。

「ピエロ、さん?サーカスじゃないのに、どうしているの?」

 何も言わずに少女を見つめる。少女は逃げない。いや、逃げられないのだ。少女もピエロもお互いからは逃げられない。絡まった時間が再び動き出し、ピエロは少女の隣に座る。彼女と同じ体育座りで。

「ほっぺに涙が描いてある。もしかしてあなたも嫌なことあったの?実は私もなんだ。」

 少女は照れたように笑う。ひとりぼっちだと思い泣いていた少女は仲間を見つけた。仲間が何も言ってくれなくてもひどく滑稽なピエロでも、実在する誰かじゃなくても別に良かった。ひとりぼっちなんかじゃない。そう思えることがどれだけ幸せなことか、ピエロは思い出した。

 世界一のおもちゃはおもちゃ仲間が欲しかった。誰よりも頑張ろうとすることに疲れていた。同じように疲れた仲間と励まし合いたかった。理解して味方でいてくれる仲間が欲しかった。そんなもの、どこにも見つかるわけがない。

「私、頑張って思ってること言おうと思ったの。でもお母さんもお父さんも先生もお友達もみんな!わかってくれなかった!」

 ピエロは知っていたから泣いている少女に何も言わない。ただ傍にいる。ピエロは思い出した。どうして自分はピエロになったのか。自分の仲間は誰なのか。仲間は少女と赤ちゃんと、きっとおばあちゃんもだ。仲間たちのために、自分はピエロを演じたい。彼女らにとっても仲間でいられるように!

 いつの間にか少女は消えていた。世界一のおもちゃは再び起動した。

 またサーカスが始まる。世界一のおもちゃは今日も最高に滑稽だ!あの日からピエロらしさは減ってしまったように感じる。それでも以前よりも全力でピエロを演じているような気がする。ピエロは仲間のためにピエロを演じる。大切な唯一無二の仲間のために!彼女ら全ての仲間でいたいから。さあ今日も演じよう!サーカステントにあの少女はもういない。

最後までご覧いただきありがとうございました。余談ですがピエロと道化師は同義ではなく道化師の種類の一つとしてピエロが挙げられるらしいです。種類によって特徴が異なるそうで調べてみるとおもしろいです!

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