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16.休息と作戦会議

3/12に16話の本文内容を一部変更しました!お手数おかけして申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。

告げられた内容に、アイリスの表情が少し強ばる。なんせどちらの件もアイリスが重要となってくるのだ。


(でも、私が要となるからこそ、一つ一つの動きが重要になってくるのよね。そこはそこで臨機応変しなければ...!)


少しの緊張を残しながらも、アイリスはわくわくと様々な考えを巡らせる。

そんなアイリスに、ルイスがはぁと溜息を吐く。


「アイリス、何となく考えていることは分かるが、一人奮起する前にきちんと話を聞いておけ」

「………すみません」


ルイスにそう言われ、アイリスは一人突っ走っていた事に恥ずかしくなる。

そのことを誤魔化すように、こほんっとアイリスは咳払いをし、ゆっくりとルイスの目を見つめる。


「一一ルイス様、まず婚約発表のことを聞いても?」

「あぁ、婚約発表は前も言ったが我が家で行う。日程は、今からふた月半後だ」

「分かりました。私の家族に連絡は一一」

「大丈夫だ。既に連絡はしてある」

「......ありがとう、ございます」


この人の仕事の早さを舐めていた訳では無いが、それにしたって早すぎではないだろうか。そう思うアイリスを他所に、ルイスはどんどん話を進めていく。


「招待するのは、互いの知人と国内で仕事上関わりのある貴族だけだ」

「そうですね。......では後ほど、我が家の方のお客様を纏めておきますね」

「分かった、だが出来るだけ最短で頼む。それから一一」


二人は次々と今後の予定と、それに伴う動きについて話していく。

アイリス自身このような話し合いは初めてではないが、ルイスがいるだけでどんどん話が進んでいくことを感じる。


(公爵としてお仕事をするルイス様も、こういう感じなのかしら......)


ルイスの話を聞きながらも、そんなことを考えてしまう。訓練の時に見せる顔とはどこか違う雰囲気が、ルイスから溢れているのだ。

それもそうだ、公爵という立場上その身にかかる責任は膨大なのだから。

そんなことを考えていたアイリスの胸に、何かもやもやとしたものが渦まく。


(......?何かしら、この感情は)


「で、これが一一」


ふとそれが気になり手が一瞬止まってしまう。そのことに気づいたルイスが、怪訝そうにこちらを見る。


「アイリス?」

「一一!!いえっ!何でもありません!!どうぞ続けてください」

「......そうか」


何か言いたげた目をされたが、次の瞬間にはすぐ話を続けていく。

アイリスはもやもやとした気持ちを残しながらも、ルイスとの話に戻っていくのだった。



***



「これで婚約発表については話し終わったな」

「はい、今回で大体のことは終えたのであと何回かあれば終わります」

「その日取りも俺に任せてくれると助かる。まぁ、何かあれば公爵家へ手紙をくれ」


ふぅとルイスが息を吐きながら、椅子の背もたれへと身を預ける。この話だけでもだいぶ時間が経っている。それに加え普段から膨大な仕事量なのだ、流石に疲れたのだろう。

そう思ったアイリスは席から立ち、とある物をテーブルへと出す。


「一一それは?」

「これはですね、ルイス様がいらっしゃった時にマーサが持ってきてくれた、昔から大好きな手作りタルトです!」

「へぇ、すごいな」


そうルイスに褒められ、自分のことのように嬉しくなり、ふふっと笑みが零れる。そしてタルトを幾つか取り分け、ルイスの目の前へと置く。


「アイリス、この量は......」

「だってルイス様、お疲れでしょう?糖分補給です!」

「だとしても多すぎ一一」

「糖分補給、しなきゃですよ?」

「……分かった」


渋々といった様子でルイスが受け取る。それを見たアイリスは椅子へと座り、タルトを一口食べる。その瞬間、あまりの美味しさに目を瞠る。

するとルイスもそう感じたのか、アイリスと同じように目を瞠っていた。


「美味いな」

「そうなんです!!マーサのお菓子はどれも絶品なのですけど、タルトは格別に美味しいんです!!他にも一一」


いかにマーサのお菓子が美味しいのかを、アイリスは力説する。この話をしだしたらアイリスは止まらない。

そのことを知らないルイスは、これでもかと言うほどその話を聞かされることになるのだった。







「一一すみません。ついつい話が止まらなくなってしまいました...」

「別に構わない。良い息抜きになったからな」


そう言われるが、アイリスは猛省していた。なんせ今はお菓子の話をしている場合ではない。これからの任務に関わる話をしなければいけないのだから。


アイリスはすっと姿勢を正し、真っ直ぐにルイスを見つめる。その様子でルイスも分かったのだろう。アイリスとしてではなくアルフとして一一、騎士として接する時の気配をルイスは纏っていた。


「前も少し話したが、お前が要となる任務について話す」

「はい」

「まず、ここ数ヶ月の間で平民貴族関係なく少女の誘拐が相次いでいる。数人なら他の隊が動いて終わるんだが、結構な頻度で起きているのと未遂も含め増えすぎたため、俺たちの隊にそれが巡ってきた。そこでまずエルヴィス達に調べてもらった、それがこれだ」


ルイスから何枚か紙を手渡される。それはここ数ヶ月で起こった誘拐された人数や名前、日時などが書かれているものだった。

それを見ると、結構な少女たちが攫われていることは明白だった。さらに、ここひと月程度でその頻度が格段に増えていた。


(これは......、大半が未遂で終わっているけれどそれでも多すぎね)


しかも攫われた少女たちの居場所が掴めていない。それでは国中を探すとしても、かなりの時間がかかってしまう。


「副団長、実行犯の一人だけでも捕えてはいないのですか?」

「なんとか一人捕らえたが、話を聞き出す前に隠し持っていた毒で自害した。それが今から二週間前だ」

「なるほど...」


それを聞き、アイリスはもう一度資料へと視線を戻す。しかしそれを見る限り他にめぼしい情報はなかった。


「お前はこの任務一一いや、事件をどう考える?」


するといきなりルイスからそんなことを聞かれる。アイリスは悩みながらも、資料を見た上で感じたことを少しずつ話していく。


「そうですね、まずこれを見る限り、誘拐の対象とされているのは二十歳未満の少女。彼女たちに共通点があるとするならば、社交の場や街で名を聞いたことがある者が多数です」

「社交の場は分かるが、貴族令嬢以外の名をお前は街で聞いたことがあるのか?」

「学園にいた頃に何度か。友人と街へ行くと、そういう話が聞こえてくるのです。なんでも、誰もが見惚れる程の美しい容姿をしているとか」


しかし、事件が起き始めてからは近隣の住民たちが危険だと教え、少女たちは殆ど家にいたという。

それでも外に出てしまった少女は攫われてしまったが、その中の何人かは近くにいた街の人に偶然にも助けられたらしい。


「実行犯は、少女がいつ外に出てくるかを見張っていたということですか?」

「あぁ、そういうことだ。令嬢たちも似たようなもので、街行きそこで侍従の目が離れた一瞬の隙を狙われたようだ」


するとルイスが資料のとある部分を指差す。つられる様にしてアイリスもそこへ視線を向けると、ルイスが言う。


「対象を令嬢だけに絞った時、例外はあれど彼女らが攫われるのは殆どが社交の場だ」

「!!」


その言葉に、アイリスははっとする。ルイスが言わんとすることが理解出来てしまったのだ。



「副団長、もしかしてこれは一一」



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