関東バベル-4
何年も未完成のバベルの天蓋を抜けた。
「もう始まってる」
花垣はセンサーを絞った。
黒煙が上がった。
異常な燃焼だ。
橙色や赤色も。
爆発の光だ。
「ついてこい、妹たち!」
花垣はTHを跳躍させた。
コンクリートブロックの構造体の上に着地。
THはエアを抜きながら膝を大きく曲げて、足全体の制御装置で、衝撃を全て吸収した。
圧縮したエネルギーを解放した。
今度は逆に、跳躍した。
空中で短時間ロケットを点火して制動した。
カヌーに手足が生えたようなTHだ。
シャークマウスの描かれた人型兵器だ。
「カラーギャングかよ」
錆だらけの車列が道を閉塞していた。
癌細胞のようなものだ。
短機関銃が撃ちまくっていた。
空薬莢が飛び散っていた。
群がっている獲物を見た。
巨大なトレーラーだ。
それと前後に四代、装甲車がいた。
現金輸送車よりも頑丈な軍用だ。
サンルーフに銃塔を持っていた。
今は、全て黒焦げに炎上していた。
「よっし」
と、花垣は道路に着地した。
瞬間的の制動で噴いたロケットが焦がして。
──駆け抜けた。
巨人が、巨人の足で走った。
分厚いアスファルト道路に破片が散った。
「路上駐車」
と、事故った自動車を肩から跳ね飛ばした。
自動車は浮き上がり外へと落下、爆発した。
「護衛対象には当てるな。シュート」
花垣はコマンドを選択した。
アルファ、ベータ、チャーリー。
三機の無人THが両腕を向けた。
古臭い目出し帽やストッキングで顔を隠したギャングらが、道路を走行するTHへ振り返った。
大口径機関砲弾が、胸部を貫いた。
心臓は胸骨ごと焼け焦げて消滅した。
背骨を砕いて、ギャングを上下に切断した。
断裂した血管から血が溢れ撒き散らされた。
機関砲弾のエネルギーは止まらない。
高熱の弾頭は血肉を焦がしながら、錆だらけの自動車の座席を全て貫通して、エンジンを完全に破壊しながら飛び出した。
「間違えた。徹甲弾だ」
と、花垣は放棄の市営バスに取り付いた。
「オールアンマンド、エムパット、シュート」
多目的榴弾がばら撒かれた。
ギャングが挽き肉に変わっていく。
THの頭部センサーが右から左へレール。
次々と爆発にギャングを巻き込んでいた。
「トループス、クリア」
ギャングの車は炎上していた。
「トラック、クリア」
花垣はTHに周辺を警戒させた。
無人機がカウンターモードで敵を捜査した。
「AIも、貴重品を認識してくれればな」
と、花垣のTHがトレーラーに付いた。
「ドライバーシート、生存者なし」
丸ごと消えていた。
後ろへ回った。
コンテナは開放されていた。
「ライト・オン」
瞬間、銃撃だ。
いや、砲撃だ。
銃弾はTHの装甲を跳ねた。
THの腕で対装甲グラインダーを展開した。
重々しく回り始めた。
床と擦れて火花をあげた。
「アンチマテリアルライフル」
ギャングがセミオートで撃ち続けた。
「五〇口径で正面を抜けるかよ、流石に」
グラインダーを振り下ろす。
ギャングがアンチマテリアルライフル諸共、頭から股まで削り千切られて、腸を蛇のように跳ねさせながら肉塊に変わった。