巨人の踏んだ尻尾-5
花垣の背中から天子がひょっこり顔を出す。
彼女は、喧嘩で傷ついた猫を見るような、どこか迷惑そうであり、心配していないわけではない目を送った。
「スマートコクーンの知り合い?」
と、花垣は訊いた。
デウスと銃撃戦をしていた、頭がポップコーンみたいに弾けた連中を指差しながら。
「雑魚のギャングどもだ」
と、デウスは血混じりの唾を吐いた。
瞼も切れて、派手に血を流していた。
デウスと同じ車には、スマートコクーンからもう一人いたが、そっちは、車ごと背中から撃たれて死体に変わっていた。
後ろから続いていたスマートコクーンの監視か護衛は、対戦車ミサイルの直撃で黒焦げだ。生存者無し。
スマートコクーンの生き残りはデウスだけ。
あとはみんな死んだ。
「乗りなよ」
と、花垣が言った直後に窓を一連射が貫く。
デウスに手を貸したのは、天子だ。
「運転は苦手だから覚悟しろよ」
デウスは躊躇う。
天子は無理矢理に引っ張った。
花垣が驚いた目をしている間にも銃撃だ。
「トゥーハンド」
トラックが走り出す。
穴だらけのコンテナから機械の目だ。
積んでいたトゥーハンドが火を噴いた。
「天子が助けてくれたぽいぞ? 感謝しとけ。俺は助けられた。良い目をしてる。思いきりや、即断も」
デウスは鼻で笑った。
「何も知らないんだな」
「昨日から同棲を始めた仲だ」
と、花垣は穴だらけにされた胸を叩いた。
応急処置されているが、天子と会った日、廃工場でスマートコクーン側の実行部隊に撃ち抜かれた傷は、塞がったわけでも、痛まないわけでもない。
「無知は、恐れを知らないな」
デウスは檻越しの虎を見るように、体をこわばらせて、天子から目を逸らさない。
「なんで助けたんだ。私は、スマートコクーンの監視だぞ。見捨てて逃げることもできる。お前には、ビーコンを埋め込んで追跡しようにもエンジェルがいるからな。物理しかない」
「知らん」
と、花垣は備え付けの救急箱を使う。
ハサミでデウスの服を切った。
すっかり血を吸って重い服だ。
火傷薬を塗り、テープを巻いて、副木で折れた腕を挟み、バンド代わりに包帯で固定した。
「服を切り刻みやがって」
と、デウスは、大きくハサミで切られたスーツを見せつけた。破片が切り裂いた傷の血は応急処置を済ませて、止まっていた。
「病院行けよ。救急に電話したから、数時間もすればくるだろ。理学療法の姉さん連中とリハビリしないと、腕が変にくっつくからな」
花垣はデウスの『刺青』から目を逸らした。
二の腕に、狐と百足、ミスマッチだ。
文字と数字も彫られていた。




