巨人の踏んだ尻尾-3
「頭伏せてな」
と、花垣が言う前に、天子はちゃっかり、パワーウインドよりも頭を低くして、親指を立てるサムズアップで答えた。ニヒルな笑みを添えて。
「ちゃっかりしてるよ」
花垣はダッシュボードから銃を出した。
コルト社製のSAA──シングルアクションアーミー、45ロングコルト弾が回転弾倉に六発おさまった一九世紀のアンティークだ。
バックミラーに、花垣のトラックと同じように、違法な建物を破壊しながら道路へ飛び出てきた自動車が四台、映っていた。
カラフルだ。
四台ともセダン、色は、紫、赤、青、緑だ。
丁寧に窓ガラスにスモークが貼られていた。
追手の車の、パワーウインドが下りた。
薄暗い車内からぬらりと、それが出た。
「畜生。笑い三日月、シスタームーンだ!」
マシンガンを持った輩が、助手席から身を乗り出していた。四台の武器は同じだ。高級な、ヘッケラー&コッホ社のMP5Kサブマシンガン。9mmパラベラム弾……弾倉は一五発モデル。
銃を持っているのは獣人だ。
狼のような長いノズルの顔。
口角を銀にペイントして笑っているようだ。
「ギャングめ!」
軽快な連射音が響いた。
9mmパラベラムがトラックに穴を開けた。
空薬莢が排出され次々と道路へ撒いていく。
「ローラーロッキングシステムか。カーチェイス中に、良い狙いをしてきやがる」
セダンがスロットルバルブを開いて唸る。
パパパッ、警戒な9mm拳銃弾の連射音。
薬莢が薬室から弾かれ機械的な音楽を奏でる。
「SAAなんて気休めだ」
と、花垣は両手をハンドルに戻した。
大きくハンドルを切って、一〇個以上もあるタイヤのゴムを軋ませながら、バベルタワーの道を擦って跡を引いていく。
カーブで減速したトラックだ。
真後ろの緑のセダンが近づいた。
花垣はブレーキペダルを踏み抜いた。
急速に迫ったコンテナを躱し損なった、弾倉の交換中だった緑のセダンが、エンジンごと運転席も助手席も潰されて、近くのレストランに突っ込んでいった。
「よし!」
天子が何かを伝えていた。
助手席から、外を指差していた。
花垣はSAAを左手で構えた。
「背中をシートにつけて!」
引き鉄を絞る。
片手でシングルアクションリボルバーを六発撃ち切った。トラックのドアを内側から抜く。左手から迫っていた青のセダンが運転手を撃ち抜かれて、ハイスピードの中でのハンドルミス、縁石に乗り上げて派手に転がりながら火花をあげた。
「くそっ」
花垣は弾切れのSAAを捨てた。
右からは赤のセダンが近づく。
MP5Kを乱射しながら詰めた。
「ドアなんて弾が抜けるんだぞ」
アクセルペダルから足を離す。
そのまま右ドアを蹴った!
直線的な蹴りは、ドアを吹き飛ばす。
大きなプレス加工の金属塊。
それは空中へ放り出されて、赤のセダンのフロントウインドを破壊して、中にいる獣人をを巻き込んだ。蜂の巣のようにひび割れたあと、電柱に正面から激突して、後輪が天高くあがった。




