そのいち
あなたも知ってるある人が
無意識に抱え込んだ憧れは 最後には全部
一つの小石に吸い込まれた
どうやらその小石はいのちを憎んでいるようで
偶然すれ違った赤の他人を 殴り殺してしまった
「お前は変われない ただの悪だ」
「誰とも関われない 馬鹿な奴だ」
非難されたところで
赤ん坊の小石には
どうすることもできない
なにも分からないんだから当たり前だ
その2 、その3 に辿り着けるはずがないような
絶望的な その1 に戸惑って 石は泣いた
道端に転がっていては危ないから、と
厄介な人殺しの小石は 特注の、重く
苦しい鎖に巻かれることになった
ぐるぐるに縛られた姿は 見る分には愉快らしい
たちまち石の周囲には人だかりができた
「あれがみんなにとっての敵だ 笑えるな」
「ああやって閉じ込めるのが最適だ 憐れだな」
卑下する言葉たちは
がらんどうだった小石の中に貯まっていく
今までは避けられたが
今ではもう 逃げることはできない
たぶん破裂して終わるんだろう、と
石は自らの末路を悟る
前にも後ろにも進むことができないような
確定的なその位置に留まって 石は鳴いた