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超感覚的知覚過敏性症候群  作者: ぽんこつ
日下部元の事例
3/8

♯2 招かれざる来訪者

「ふぁ・・・」


いつの間にか眠っていたようだ。

このままでは、また一日を無為に終わらせてしまう。

その度に自己嫌悪におちいるが、この日々を立て直す気力や情熱はとうの昔に底をついていた。


長いこと寝ていたような気がする。

しかし、時計を見るとほとんど時間は進んでいなかった。


「・・あれ、俺なんで床で寝てるんだ?」


いつの間にか床で横になっていた俺は、体を起こすと両手を上げて大きく背伸びをする。


「・・ん?」


そこで俺は、ベッド上の掛け布団が異様に盛り上がっていることに気づいた。


「・・んん?」


『・・んん』


「んんんっ!?」


女の呻き声がしたかと思うと、ベッド上の盛り上がりがモゾモゾと蠢きだす。


「おおおおぉ!?」


布団の中に何かがいる。

俺は恐怖のあまり腰を抜かしてしまい、尻餅をつく。

そして、声にならない声で後退りをしていると、その盛り上がりは段々と大きく膨れ上がっていく。


『んぐぐぐっ・・・』


掛け布団が剥がれ落ち、その中身が正体を現そうとしていた。


「な、ななななな何ナニなにっ!?」


俺は床を這いずるように逃げ出す。

振り向きざま、お布団怪人の正体をその目の端で掴んだ。


「・・・・ん?」


上下薄ピンク色のパジャマ。

貧相な胸には、ウサギのアップリケ。

髪の毛はボサボサ。

大学生・・いや、高校生くらいの女の子だった。


「・・は?」


『うぅぅん! よく寝たぁ〜』


「・・・・」


時が止まる。

極力冷静に状況を理解しようと努めるが、訳がわからない。


てっきり、寝てる間に忍び込んだサイコパスや泥棒、暴漢の類だと思っていた。

それがこんな女の子が出てきたとあれば、誰でも拍子抜けしてしまうであろう。

まだ腰の力が戻らない俺は、女の子座りで呆然と彼女を見つめていた。



___________________________________



「あ、あの・・何してんすか・・?」


応答はない。

彼女はベッドから飛び降りると、俺に近づいてくる。


「・・え? え!? いや、何ナニ!?」

「い、いやいや! 警察呼びますよ!!」


彼女は俺を意に介することなく通り過ぎると、冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出し、腰に手を当て豪快に喉を鳴らす。


『くぅ〜!!やっぱりこれだけは止められませんなぁ〜』


中年オヤジがビール飲んだ時のリアクション。


「いや、人の家で何してん・・」


そこで、俺は初めて気づく。


「・・は? えっ・・俺の部屋・・じゃない!?」


よくよく見渡すと、そこは俺の部屋ではなかったのだ。


「ウソ・・なんでっ?・・どういうこと・・」


寝起き直後でこのシチュエーション。

プチパニックを起こして気づかなかったのだろうか。

部屋のサイズこそ似たようなものだが、家具の配置やら窓の場所など、似ても似つかぬ部屋に今俺はいるのだった。


再び彼女に視線を移すと、彼女は体育座りで椅子に乗り、スマートフォンをチェックしていた。


「あ、あの〜・・ここって何処・・なんでしょう?」


彼女は答えない。


『フヘヘ・・』


そして、彼女はスマホを見つめながら気味の悪い笑い声を上げる。


(なんだこいつ・・いくら知らないオッサンとはいえ、無視するか普通?)


「ちょ、ちょっと! どういうことか説明してもらっても・・」


その時、彼女のスマホが鳴る。


『あ、お母さん! どうしたの〜?』


『・・うん! わかった! コーヒー牛乳とアルフォートとイカゲソ買ってきて〜』


『ありがと! うん、おなしゃすっ』


(・・イカゲソ?)


俺はまだ下半身の力が戻らず、女の子座りのままで必死に考えた。


(なんだこれ・・? 

俺ん家で昼飯食って・・

ベッドの上でゴロゴロしてたと思ったら急に知らない部屋にいて・・

しかもそこには全然知らない女の子がいて、ガン無視されてる・・)


「・・だめだ、意味不明すぎる」

「・・・・夢か。 そうだ夢だ、それ以外考えられないわ」


(夢ならその内覚めるでしょ)



___________________________________



・・しかしその後、待てど暮らせど夢は覚めない。

それどころか、時間の経過と共に冷静さを取り戻すほど、現状の異常さが際立ってくる。


(そもそも、ここは本当に夢の中なのか?)


俺は女の子の目の前まで顔を近づけ、まじまじとその顔を見つめた。

彼女はまるで俺の存在に気づいていない様だった。

その肌の質感や唇、髪の毛の一本一本がどう見ても現実のものにしか見えない。


スマホでゲームをしながら、時折気味の悪い独り言を発する女の子を俺はしばらく眺めていた。


小柄で、艶のある黒髪。

そしてNHKの朝ドラヒロインに抜擢されるような端麗な顔立ち。

挙句には、柔軟剤の様な良い匂いまでしてくる。


ふと我に帰った俺は、なんだか急に恥ずかしくなってしまう。

急いで彼女から離れると、窓ガラスにおでこを押しつけ外を眺める。


空は真っ青。

遠くに見える街には陽炎が立ち上る。

うんざりするほどの蝉の声の中に、かすかに踏切の音が聞こえた。


(あれ、この景色、どこかで見たことあるような・・)


その時、部屋の外から中年女性の声が聞こえた。


?『ユナ〜お昼買って来たわよ〜』


『あ、は〜い!』


そう言うと、女の子は部屋から出ていってしまった。

ドタバタと階段を駆け降りる音が聞こえる。


空っぽになった部屋の中で、スエットおじさんは一人取り残されてしまった。

呆気にとられていると部屋の中で、これもまた以前に見たことがあるものを見つける。


「・・あぁ・・あの子、やっぱり高校生なんだ」


壁には近所にある女子高の制服が掛かっていた。


女子高校生の部屋。

家具や小物はパステルカラーで統一されており、とてつもなく良い匂いがする。


「・・ゴクッ」


下衆を極めた欲望が次々と湧いて出る。

これはきっと、惨めな俺の人生を不憫に思った神様が与え給うた臨時ボーナスなのだ。

そう俺は俺に言い聞かせる。


「・・神様・・ありがとうございます・・」


ついほころんでしまう口元を戒め、不整脈寸前まで高鳴る胸を感じながら、俺は制服エデンへと一歩一歩近づいていく。

濃紺色のスカート、純白のブラウス、そして控えめだが絶対的、圧倒的存在感を放つ真っ赤なリボン。



________俺はちっぽけなプライドを脱ぎ去り、今まさに野獣ビーストと化そうとしていた。


俺が今から成すこと。

それはきっと、俗世との繋がりを全てかなぐり捨てて、初めてたどり着ける境地。

確かに俺は褒められた生き方をしてきていない。

しかし、人間辞めてまで快楽を得たいか?

俺はそこまで堕ちちまったのか!?


・・まだ遅くないさ。

刀を鞘に納めるんだ、日下部。

女子高生は触れるものではない。

遠くに見えるからこそ、輝いて見えるものもあるはずさ。


なぁ、そうだろう?



___________________________________



(やっぱ無理ぃ!! に、人間やめますっ!!)


全てのリミッターが外れ、アドレナリンが間欠泉の如く吹き出す脳内。

俺は震える手で制服エデンの掛かるハンガーを掴む。

その時の俺の目はきっと、サンタクロースを信じて疑わない少年の様に輝いていたのだろう。


「・・・ん?」


何となく、制服の胸元についている名札が気になった。


(これ、なんて読むんだ? ショウケン・・いや、コイヌ・・)



________その瞬間、俺の視界は暗転する。



次の瞬間、視界は戻った。

しかし、また知らない部屋の中に俺はいた。


「・・は?」


確かに掴んだはずの制服エデンがその手には無く、キッチンやソファ、大型テレビ等が配置されているリビングの様な部屋に俺は立っていた。


中年女性『コーヒー牛乳は冷蔵庫に入ってるからね〜』

中年女性『アルフォートは食後になさいよ!』


PBG『は〜い!』


リビングには、さっきのPBGピンクバニーガールと、おそらくPBGピンクバニーガールの部屋で聞いた中年女性の声の主がいた。


だが今の俺にとって、そんな事は実にどうでも良いことだった。

俺は挙動不審に辺りを見回し、二階へと続く階段を探す。

廊下に階段があることを確認した俺は、未だかつて見せたことのない俊敏な動きで脱兎のように駆け出した。


リビングを出るその瞬間、何かにぶつかる様な衝撃を感じた俺は、気がつくとリビングで仰向けにひっくり返っていた。


「・・痛ってぇ・・何だ・・?」


しかし、行手を阻むような障害物は何も見当たらない。

首を傾げながらも起き上がった俺は、もう一度リビングからの脱出を試みる。

すると、今度は何かに顔面を強く打ちつけてしまう。


「くぅ〜っ・・痛ってぇ・・これって、もしかしなくても・・」


俺は廊下へ向かって、恐る恐る人差し指を伸ばす。

指先に硬いゴムのような感触を感じたと思ったら、“それ” に触れた部分から透明な波紋が広がる。


「・・なんだよ、これ」


今度は両の手のひらで何度も “それ” を力一杯押してみるが、“それ” は水面に広がる様に大きな波紋を作り、そしてすぐ消える。


それ以上進むことができない。

まるで、リビングと廊下の境に見えない壁でもあるかのように。

その後も様々な方法で、この見知らぬご家庭のリビングを抜け出そうとするが、やはり結果は変わらなかった。


「はぁ・・はぁ・・一体どうなってんだよ、これ・・」


後ろでは食卓でPBGピンクバニーガールと中年女性が談笑しながら昼食を取っていた。

女性2人はやはり俺の存在に気づく事はなく、情報番組内の芸能人ゴシップコーナーを見ながら、あーだこーだ言っていた。


俺は膝から崩れ落ちた。


「・・ん・・だよ・・何なん・・だよぉっ・・」


終わらない現実の様な夢。


謎の一家。


不思議な力による監禁。


日下部にとって、解決すべき問題はいくつかあった。

しかし、今の彼にとっては全て取るに足らない些細な問題だったのだ。


もう少しで掴めたはずの、俺の制服エデン

色々な想いが込み上げてきた俺は、思わず泣きそうな声で叫ぶ。


「・・もう少しでっ・・JKの制服エデンがっ・・この手にっ・・この手に!!」


その瞬間、さっきまで笑っていた中年女性がぴたりと動きを止め、ゆっくりと首だけを捻り、俺の方をジッと見つめる。


(・・え・・えっ?)


中年女性は真顔のまま微動だにしない。


(いや・・これ、夢なんだよな?)


「・・あ、あの〜? もしかしてぇ・・俺のこと・・」


そこまで言いかけると、中年女性は俺を見たままゆっくりと立ち上がる。

その後ろでPBGピンクバニーガールは蔑むような目で、俺のことを睨みつけていた。


(・・嘘だろ? 夢じゃなかったのかよ!? じゃ、じゃあっ・・全部見られてたってことぉ!?)


中年女性はおもむろに部屋の隅に置いてあるゴルフバッグからアイアンを手に取ると、それを上段に構え、そのままゆっくりと、そして真っ直ぐに俺の方へと向かってくる。


さっきまでは二人とも俺に対して何の反応も見せていなかったはず。

それが、なぜ急に?

やはり、これは夢?

もし、夢じゃなかったら?


日下部の思考は続くが答えは出ない。


「す、すみません! まずは説明をさせてください!! 私は決して怪しいものではありません!!」


中年女性からの応答はない。

どうやら対話をする気は一切なさそうだ。

声も出さず、音も立てず、今まで見たことがないほどに感情を殺した顔で、ゆっくりと俺に近づいてくる。

構えたアイアンの鈍い光が、次の展開を容易く予想させた。


「ご、誤解なんです! 落ち着いて聞いてください!! お二人ともまるで俺の事が見えてない様な振る舞いをされるのでっ・・」


「俺、てっきり夢見てるのかなぁって!? 思っちゃって!!」


中年女性の目には、明らかな殺気が灯りはじめていた。


「だ、だから、さっきの彼女の制服に関しても半分冗談でっ・・」


「もっと言うと、俺自身もなんでここにいるのかっ・・何が何だか、本当に分からないんです!!」


「で、ですので・・どうか、どうか落ち着いて・・」


「そのゴルフクラブを置いて、話し合いましょうよ・・」


俺はその場に膝をつき、ほぼ土下座の様な体制で必死の説得を試みる。


しかし、考えてもみると自宅に不法侵入した挙句、娘の制服であらぬ蛮行を目論む輩をこのままタダで帰すと思うか?


否。


目眩がする。

きっと俺は明日の朝刊一面を飾ることになる。

そして、自身の人生最初で最後の “注目“ と言うものを浴びることになるのだろう。


その後、俺を待つのは逮捕、解雇、そして破滅。


俺は歯を食いしばり、目を瞑った。

その瞬間、中年女性の持つアイアンが風を切る。



___________________________________



(・・・・ん? あれ? どこも・・痛くない?)


PBG『もう! ママってばゴルフクラブはないでしょ! 壁や床に傷ついたらどうするのよ!』


中年女性『ごめん・・そうは言われても私、本当に苦手なのよね・・』


中年女性『ゴキブリ』


(・・は? ・・ゴキブリ?)


PBG『も〜ママったら!』


恐る恐る顔を上げてみると、女性2人は笑い合っていた。


PBG『ゴキコロリスプレーの場所教えてあげるから、今度からはそれ使ってよね!』


中年女性『は〜い、反省してま〜す』


しばらく状況が飲み込めず、土下座の様な体制で俺は呆然としていた。

ふと、足元にゴキブリの亡骸が転がっているのを見つけて、俺は全てを察する。


「・・ふふっ」


笑い合う2人を見て、何だか俺もおかしくなってしまった。



________その瞬間、また俺の視界は暗転する。



視界が戻ると、また同じリビングにいた。


中年女性こと、ユナちゃんママはキッチンで夕食の準備をしている様だ。

PBGピンクバニーガールこと、ユナちゃんの姿は見えない。

その代わりに、ソファに寝っ転がり携帯ゲーム機を一心不乱に操作する少年がいた。


『死ねっ!!』『イケイケイケ!!』『あぁ〜・・』


などと一人で盛り上がっている。

風貌としては小学校高学年から、中学校低学年くらいだろうか。

短髪で小柄の、快活な少年だった。


「あぁ!? そのハード、俺が欲しかったやつ!! めちゃ高いんだよな・・良いなぁ・・」


激務薄給の俺にとって喉から手が出るほど欲しているゲームハードを、目の前の少年は乱雑に扱っていた。


ママ『シン!ゲームばっかりしてないで、後でちゃんと宿題もなさいよ!』


シン『もう、分かってるって』


すると、リビングの扉が勢いよく開かれる。

ユナちゃんだった。

風呂上がりなのだろうか、頬が火照り、ほのかに石鹸の香りを漂わせていた。


ユナ『シン〜!! あんた、またあたしのリンス使ったでしょ!!』


シン『使ってねぇよ! なんか証拠でもあんのかよ!!』


そこから、熾烈な兄弟喧嘩が繰り広げられる。

一人っ子の俺にとっては、こんなにも騒々しい家族の日常はとても新鮮だった。


ママ『コラ〜! ケンカはやめなさい!!』

ママ『もうすぐ晩御飯できるから、ほら、2人とも準備手伝って!』


外はもう真っ暗で、窓に激しく打ちつけられる雨音、そして時折光る雷の音が聞こえていた。


(昼間はあんなに晴れていたのに・・)


ピンポーン


ママ『あぁ、ユナ、パパ帰ってきたから開けてあげて〜』


ユナ『は〜い』


日下部「は〜い」


俺もユナちゃんについていく。

何故か今回はリビングから問題なく抜け出すことができた。


玄関ではユナちゃんパパであろう男が革鞄をユナちゃんに預け、靴紐を解いていた。

俺は試しにユナちゃんパパを避け、玄関から外に出ようと試みるが、さっきの様に見えない壁に阻まれ外に出ることは叶わない。


俺は仕方なくリビングに戻る。


ユナ『お疲れさま! 今日雨すごいね〜』


パパ『あぁ、嵐が来たみたいだな。 今日は特に何もなかったかい?』


ユナ『もう、それがパパ聞いてよっ ママがまたゴルフクラブでゴキブリを叩いてたんだよ〜』


パパ『ハハハッ、またか〜』

パパ『ゴルフクラブは隠しておいた方が良さそうだな』


ユナ『是非、そうしてください!』


ユナちゃんパパの見た目は、所謂紳士という言葉がぴったりな爽やかおじさんだった。

千鳥格子のスリーピーススーツを身に纏い、丸メガネにオールバック。

まるでテレビドラマに出てくる、弁護士や探偵といった風貌をしていた。


ママ『あぁ、あなたお帰りなさい』


ママさんがエプロンの前掛けの部分で手を拭う。


パパ『うん、ただいま。ラッキーは雨、大丈夫かな?』


ママ『う〜ん、私たちも考えたんだけど、ラッキーのいるテラスには屋根もあるし、今のところ大丈夫だと思う。』


ユナ『これ以上酷くなってきたら、絶対すぐお家に入れてあげようね!』


パパ『うん、そうだな、それがいい』


日下部「ラッキー? ワンちゃんもいるのかな?』


ママ『もう夕食できますけど、どうしますか?』


パパ『そうだな・・今日は先にご飯食べるよ』



___________________________________



そこからは、ごくごく普通の家族の風景。

せっかくなので、家族で囲む食卓に俺も参加することにした。

みんなには俺の姿が見えなければ、声も聞こえていないけれど、なんだか久しぶりに家族の温かみってものを感じたような気がして少しだけ嬉しかった。


ユナちゃんが学校のことを話したり、

ゴキブリスマッシュに始まる、ママの天然武勇伝で盛り上がったり、

姉と弟の兄弟喧嘩が再勃発したり・・

ありふれてはいたが、そこには幸せな家族4人の風景があった。


(俺も家庭を持てば、毎日こんなに楽しいのかな?)


(・・いや、俺には無理か・・)


食後、家族4人+部外者1名はソファでくつろいだ。


テレビでは週末洋画劇場にて『死霊のはらわた』が放送されている。


(いや、家族で観る映画じゃないだろ・・)


ママ『あなた、仕事の方は順調なの?』


パパ『・・ああ、まぁね。ただ・・』


ママ『ただ・・?』


パパ『いや・・なんでもない。ただ、今持っている案件が少し厄介でね・・』


ママ『大丈夫なの・・?』


パパ『・・・・・・』


ママ『・・あなた?』


パパ『・・・・』


日下部「パパさん?どしたのよ?」


ユナ『パパ?』


パパ『いや、大丈夫。問題はないよ。』


日下部「いやぁ〜そりゃあ色々ありますよね、長年働いてたら」

日下部「俺は気持ちわかりますよ、パパさん」


パパ『・・そろそろ風呂に入ろうかな』


ママ『はい、もう沸いてますよ〜』


日下部「俺も風呂に・・なんつって、なんつって〜」


(!?)


日下部、衝撃走る。


女子高生が住むお家、そこにはもちろんお風呂があれば脱衣所もある。

・・もう、それ以上言葉にするのは野暮だった。


日下部「さぁ! お父様、参りましょう!! この日下部、お供いたします。」


俺は、これが()()()()だとすっかり信じきっていた。


今思うと、それが最後のチャンスだったのかもしれない。


これから始まる、奇妙で、残酷な世界から逃げ出す、最後の。




________ピンポーン




その無味乾燥な電子音は、退屈で幸せな家族の風景を切り裂く様に響く。


インターフォンからは砂嵐の様な音に混じり、繰り返し何かを呟く、低くこもった声。


招かれざる来訪者は、一体何を運んできたのだろう。


本田翼似の女子が書いています。


もし少しでも引っかかりを感じていただけたら、評価、ブクマ等々よろしくお願いします。


感想にはなるだけ、返信をしたいと思っています。


何もあげられませんが、少しでも、超エキサイティンッ!!


そんな物語を描ける様、精進して参ります。



本田翼似の女子が書いています。


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