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抜き差しならない俺たちの関係  作者: 奈月沙耶
1話 文化祭の憂鬱
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4.千鶴先輩

「あ、忘れてた」

「あ、じゃねえよ、おまえはよお」

「悪い悪い」

「軽いなー、どんどん軽くなってくなー」

 そうなのだ。この村元とのやりとりもいつものこととなりつつある。


「頼むよう。千鶴先輩が来るか来ないかでモチベが全然違うんだよう。早く確約もらってきてくれよお」

「へいへい」

 俺の気のない返事に不満そうにしていた村元だったが、廊下から名前を呼ばれて忙しそうに出ていった。奴は今年文化祭実行委員会の長を務めることになっていて、昨年度のうちから準備に奔走しているらしい。


 なにしろ我が校の文化祭は来月五月に開催される。市内にある高校の中で先陣を切るので毎年妙に注目されるし、先生たちが妙に張り切る(どこへとも知れないアピールのために)。そしてプレッシャーをかけられるのが文化祭実行委員会メンバーである、とかなんとか、聞いたことがあるようなないような。


 その村元が千鶴を文化祭に呼べとうるさいのである。なぜかといえば、我が校の卒業生である千鶴が、伝説の文化祭実行委員長だからである。


 遡ること三年前の文化祭、それより更に五年前に素行の悪い生徒数人が起こした不祥事により、以来取り止めになってしまっていた後夕祭を復活させたのが千鶴だったというのだ。


 つまり当時の千鶴は、文化祭実行委員長を任されるくらい人望があり、校長をはじめとする教師陣や保護者会の堅物たちの了承を取り付けられるくらい弁が立ったというわけだ。

 いつも家でふにゃふにゃしている姿からは想像がつかない。俺が入学したのは千鶴と入れ違い。千鶴の学校での姿を実際に目にしたことはないのだから。


 千鶴が家で話すのも友だちとの面白かった会話や先生の噂、勉強の大変さなどで、自分が何をしているのかは教えてくれなかったのだと高校入学後に気づいた。

 何しろ俺は、あの千鶴先輩の弟だと先輩たちに注目されてしまったからだ。最初は訳がわからず、「おまえはいったい何をしたんだ?」と詰め寄った俺に千鶴はえへへと笑っていた。えへへじゃない。


 去年と一昨日までは、直接知っている後輩がいるからと千鶴は言われなくても文化祭にやって来た。が、これで最後かな、などと去年本人がつぶやいていたこともあり、村元がわざわざ確認してくれと俺に連絡役になれと言ってきているわけである。

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