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抜き差しならない俺たちの関係  作者: 奈月沙耶
2話 姉、弟
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3.経済観念

 予感がして、俺は自転車を止めて歩道に乗り上げて待つ。バスと擦れ違いざま窓からものすごい勢いで手を振っている千鶴が見えた。待ってて、と口が動いた気がする。

 しゃーねえなあ、と最初からそのつもりだったくせに俺はしぶしぶ千鶴を待つポーズを取る。


 のどかな駅前通りは交通量はさほどなく、だがシルバーカーを押して歩いているおばあさんが平気で道路を斜めに横断するのを見るとハラハラしてしまう。おばあさんがドラッグストアの駐車場を進んで店舗の中へ入っていくまで見守って少しホッとしていると、そこへようやく自転車に乗った千鶴が来た。


「お待たせ」

「おせーよ」

「ごめんごめん。お詫びにアイス奢ってあげるよ」

「おまえが食べたいだけだろ」

 千鶴はてへ、と笑って舌を出した。照れるところか?


 それで俺たちはホタテ屋でソフトクリームを食べた。

 ホタテ屋は俺たちが暮らすニュータウンの入り口で営業している昔ながらのファーストフードショップで、ここで販売しているソフトクリームや大判焼きやフライドポテトやたこ焼きなんてものが、俺らニュータウンの子どもたちにとってのおやつの味だ。

 千鶴はホタテ屋のチョコとバニラのミックスソフトが未だに好きで、こうやってときおり食べたがる。


「今夜バイトだろ、水曜だから八時からだっけ?」

「うん、そう。だから少し余裕かな」

 千鶴は大学に入ってすぐ家庭教師の派遣会社に登録し、かてきょのバイトを始めた。

 今まで受け持った中三の受験生たちは皆志望校に無事合格していて、わりと評判が良いらしく、今では週五日三件の家に教えに行っている。一日一時間半から二時間という短い時間でも、時給が良いから学生の月給としてはまあまあらしい。


 とはいえ、かてきょの日は慌ただしく夕飯を食べてクルマ(母さんの軽自動車)で向かうか、学校からの帰りが遅くなればそのまま自転車からクルマに乗り換えバイトに向かい、腹をグーグー鳴らして帰ってくることもあるから、それなりに大変そうだ。


 それでも、金を貯めて何かやりたいことがあるらしく、千鶴は一度も休まずにかてきょを続けている。家ではいつもふにゃふにゃしているくせに、こういうところはしっかりしている。

 さっきの香澄もそうだ。女子というのは、この年から経済観念がしっかりしているのかと俺は感心する。

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