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抜き差しならない俺たちの関係  作者: 奈月沙耶
1話 文化祭の憂鬱
22/28

20.後夕祭

 それで判明した香澄の家へと母さんと、千鶴も一緒にやって来たのだそうだ。時間は午後七時すぎ。ちょうど香澄の母親も帰ってきて、うちの母さんと香澄の母親は香澄の家の前でかち合った。


「うちの母がすっごい怒って。人様に迷惑かけるなんてって。それを紘一くんのお母さんが、まあまあって。子どもたちは遊びに夢中だったみたいだしって」

 母さんらしい。


「でも、お互いの親にいいよって言われてないのに、家の中で遊ぶのは学校の決まりで禁止されてるでしょうって、紘一くんのお母さんはそこはきっちりしかったのね。そしたらその横でまたうちの母がぷりぷりしだして、それで」

 香澄は少し言いにくそうにしてから言葉をつなげた。


「まあまあ、香澄ちゃんは寂しかったのでしょうって、紘一くんのお母さんが言ってくれて。わたしって、寂しい女の子なんだって、そのとき、悲しくなっちゃったんだよね」


 肩をすぼめてつぶやき、すぐに香澄ははっと目を上げた。

「あ、でも。紘一くんのお母さんはうちの母に言ってたのであって、それをたまたまわたしが聞いちゃっただけで……」

「うん」

 何やら取り繕おうと必死な様子の香澄に、俺は苦笑いする。そのときの母さんは少し配慮が足りなかったのだとは思うが仕方がない。子どもがどんな言葉で傷つくかなんて、大人はきっと忘れてしまうのだ。




「おーい、紘一ぃ」

 校舎と校庭の間の通路、段差になっているそこに座り込んでいた俺に村元が手を振って近づいてくる。


 一般公開が終了し、残りは生徒たちだけで楽しむ後夕祭だ。体育館では軽音部と事前にオーディションを勝ち抜いた有志のバンド数組によるライブを開催中だし、校庭では市販の打ち上げ花火でのミニ花火大会の真っ最中だ。


 どうせしょぼいと思いきやこれがなかなか面白い。香澄も今はクラスの女子と一緒に打ち上げ場所を囲む輪の中にいるはずだ。やっと薄暗くなり始めた藍色の空間でボッボッと火柱が上がり、ピューバンバンと火花も打ちあがる。


「今更だけど、よく許可出たよな」

「三組の小野田の父ちゃんがここの地区の消防団メンバーなんだよ。ほら、待機してくれてるだろ」

「ああ、なるほど。そういう根回しうまいよなーおまえ」

「それほどでも」


 照れるな、褒めてるんじゃない。じとっと目を細めてやると、村元はばつが悪そうに頭を掻いた。

「怒るなよ。俺は言い訳はしないけどさ、千鶴先輩には謝っとけよ」

「なんで俺が」

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