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抜き差しならない俺たちの関係  作者: 奈月沙耶
1話 文化祭の憂鬱
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15.泣き顔

「こんな奴、姉貴じゃない」

 そうだ。姉じゃない。俺は知ってるんだ。


「こうちゃん……」

 俺が吐き捨てたとたん、千鶴の顔がぐしゃぐしゃになった。

「なんでそんなこと言うの?」

 大きな目が潤んでみるみる涙が溢れだす。くそ、泣けばいいと思って。俺はさっとキビスを返して廊下へ出た。


 泣かせるつもりで攻撃したのに、いざ千鶴が泣くと動揺しちまう自分が悔しい。いつもの、あからさまに気を引くためにやるべそべそした泣き方ではなく、本当に悲しそうな傷ついた顔をするのは卑怯だと思う。悪いのはあいつなのに。


 そのままクラスに戻ると、香澄がきょとんとした顔で俺の手元を見た。

「あれ、置いてこなかったのそれ」

「あ……」

 俺の手の中でA4サイズの報告書がくちゃくちゃになってしまっていた。




 教室の片づけをざっくりとすませ、今日のクラスの活動はこれで終了とした。部活の出し物でも役割のある奴はとっくにそっちに向かっていたし、残った連中は悠々とばらけていった。


「俺、もう一度これ置きに行ってくる」

「それならわたしも」

「え」

 間髪入れずに身を乗り出した香澄に、俺も間髪入れずに戸惑いの声をあげてしまう。香澄は少し不安そうな顔になって俺を見上げた。

「あ、ついでに、一緒に、残りの時間回れないかと思って」

「そうだな」

「やった、ありがと」


 語尾を弾ませ香澄は明るい笑顔になった。こいつはこいつで、どうして急に俺に近づいてくるのかわからない。でも今はそういうことを考えるのが億劫で、俺は流されるように今度は香澄とふたりで文化祭実行委員会室に向かった。


「誰もいないね」

 先に立って扉を開けた香澄がきょろきょろ中を見渡しながら言う。俺は拍子抜けした気分で、手前の長机の上に置いてある提出書類用のトレーに報告書を投げ入れた。




 俺たちのクラスと同じように食品系のほとんどは店じまいしていたが、まだ開店中のエンタメ系の中でも、定番のお化け屋敷やコント劇場なんてものはまだまだ盛況のようだった。


 体育館に舞台を見に行くことも考えたが今頃行ってもという感じだし、並んでまでお化け屋敷に入ろうとも思えない。要するに、俺も香澄も消極的なのだ。

 それで結局校舎内を当てもなくぶらぶらし、ようやく興味を引かれたのが天文部のプラネタリウムだった。

「すぐ上映始まりますよ」

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