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抜き差しならない俺たちの関係  作者: 奈月沙耶
1話 文化祭の憂鬱
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13.目撃

 そっとボードの陰から覗いてみると、それまでイケメンになり切って怪しい魅力を振りまいていたギャルソン女子たちが、きゃっきゃとはしゃいで千鶴からの指名を待っている。どうして千鶴の前だとみんなああなるんだ? まったくわからん。


 千鶴がカフェラテをオーダーする。あいつは猫舌だから家でコーヒーを飲むときには冷たい牛乳をたっぷり入れる。だから俺はクーラーボックスからパックの牛乳を取り出し千鶴のカップに注いで温度調整した。これで良し。


 給仕係がカフェラテを持っていき、笑顔で礼を言った千鶴は温度を確かめるように両の指先で紙カップに触れる。ぱちぱちと瞬きし、そっと持ち上げて口元に運ぶ。どうやら熱くなかったようだ。

 一口カフェラテを飲んだ千鶴は満足そうに微笑んで、話しかけてくる周りの連中とまたおしゃべりを始めた。




 正午はとっくにすぎ、昼食を後回しにして頑張っている皆が口々に空腹を訴えだした頃、男装カフェは完売御礼でめでたく閉店を迎えた。疲れと満足感で妙なテンションになって奇声をあげながらみんなで拍手した。


 先に手が空いた連中が買い出し部隊になって買ってきてくれた弁当を、全員でわいわい食べた。片づけはまだ後でいいだろうと、客のいなくなった店舗スペースでぐだぐだしだした奴らを横目に、俺と香澄は実行委員会に提出する報告書類を書いてしまう。


「じゃあ、これ置いてくる」

「うん。こっちは片づけ始めてるから」

 俺は廊下に出て、生徒会室に間借りしている文化祭実行委員会室を目指した。


 昼下がりの喧騒は、祭りが始まったときほどの華やかさは既になく、午後のメインは体育館で行われる音楽部や演劇部の発表なので人出はそっちに移動しているのかもしれない。

 大活躍だったギャルソン女子のほとんどは今度は部活の方に行かなくちゃと慌しくしていた。カフェで接客中にも午後の舞台のことをアピールしていたのだから頭が下がる。


 誰もいなかったら提出ボックスに書類を置いて戻ろうと考えながら実行委員会室に近づくと、中から村元の声が聞こえた。ちょうどよかった。

 思ったものの、扉のガラス部分からちらっと見えた横顔に俺はとっさに体を引いていた。


 千鶴だ。千鶴が村元と一緒にいる。いや、別におかしなことではない。卒業生がここに顔を出すことはある。去年と一昨年とで千鶴は村元のことを知っているわけだし。

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