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「もう少し膝の上に居ておいで?」
「やだ……神様なんか嫌いっ」
腰にしっかりと手を回されて身動きが取れない
けれど空気で神様がショックを受けているのはわかった
もしかしたら、もしかしたら、がんばって押せば食べてくれるかも?
「お前は最悪で酷い女だね。そんなことを言うと私は傷ついてしまうよ」
「食べてくれたら、また大好きになるよ?」
頭に馴染んだ優しい掌の感触が嬉しくて、寄りかかって神様を見上げる
彼は困りながら微笑んでいて、一言「かなわないね」と呟いた
え、え、え?もしかして…
「お前を見てると全ての食欲が無くなるから、絶対に喰ってはやらん。それだけは譲れんが……」
「なんだぁ……」
「そこまでねだられたらしょうがないね。違う方法で食べてあげるよ」
「ちがう?」
「ああ。だから一度だけお前を家に帰してあげるから伝えておいで―――――龍神の花嫁になる、と」
ぱちりと、目を瞬かせる
はなよめ?花読め?お手紙か何かかな?
神様はやっぱりいつも通りにこにこと笑っていて
悪いものでは無いのだとは、なんとなくわかった
「えっと、それだと神様食べてくれるの?」
「ああ、美味しく頂いて全てを食べきってあげるよ」
「そっか、じゃあよくわからないけど頑張る………お家、に、帰れば良いの?」
「すぐにまた戻って来るのだよ?」
「うんっ」
正直、あそこには帰りたく無かったけど
神様も嫌々私を食べてくれるんだから、私もそれくらいの嫌なことをしなければいけないと思って我慢した
「じゃあ明日行ってくるかい?」
「わかりました」
「では、明日お前が寂しくならないように今日は早めに布団に入って遊ぼうか」
「はいっ!!」