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「うーむ、どちらにするか……」
「………」
泥や垢を全て落とされて、髪も清められて、香油を塗られて櫛で鋤かれもして、
今度はびっくりするくらいに綺麗な衣を並べられて次から次に着せ替えられていた。
状況が全く把握出来ない
餌として贄に捧げられて、不味そうと言われて、清められてから食べられるのかと思ったら今度は着せ替え状態だ。
「お前は本当に醜いのぉ。どの衣も似合わん。まぁ……これが一番ましかの」
「は、はぁ」
あまりに醜いや醜女を普通に連呼されすぎて、悲しいかなちょっと慣れて来た。
それは神様が悪意や他意も無く、ただ当たり前の事実として気兼ね無く言うからそこまで気にならなくなってきたのかもしれない
結局深い緑の衣に決まったらしく、ソレを着てくるりと一周回されるとよし!と優しく頭を撫でられた。
それはとても気持ち良かった――――
「さて、醜女。お前は腹が減ったか?」
「い、いえ……」
正直空腹とか感じる間などない。
人を喰らう神様のよく分からない行動に戸惑うばかりだ
「そうか。ならば夜まで時間潰しに寝るか。ほら、来やれ?」
「え、ちょっ、」
ずるずると、いつの間にか敷き直された先ほどと違う布団に神様に引きずり込まれて抱き込まれる形で一緒に寝転ぶ
え?ちょ、え?
「さっきお前が白湯を溢したから、布団は一組しか無いんでな。狭かろうが我慢しいや?」
「は、はい……」
ぽふぽふと、優しく規則的に頭を撫でられて
張り詰めていた何かが緩み少しづつ睡魔に襲われて来た
醜い、不味そう、醜女
散々なことを言っているのに、人を喰らうはずの神様は私が今まで出会った人間の中で一番優しく頭を撫でてくれた――――