かごめうた
かーごめーかごめー
かーごのなーかのとーりーはー
いーつーいーつーでーやあるー
よーあーけのーばーんにー
つーるとかーめがすーべったー
うしろのしょーめんだーあれー
籠女 籠女
(籠の中に閉じ込められた少女よ)
籠の中の鳥は
(そなたはもう自由に飛び回ることは出来ない籠の鳥)
いついつでやる
(いつになったら出られるって?)
夜明けの晩に
(もうお前が怖がる夜は終わったよ)
鶴と亀が滑った
(もうその命は私の手の中だから出てきて良いよ)
後ろの正面……
「やぁ!!」
ガバッと布団を捲り上半身を起こす
怖い夢だった。ボロボロの服が気持ち悪い汗を吸いぐっちょりと張り付いて気持ちが悪い
「大丈夫か?」
「に、いさま……」
綺麗な手で優しく頭を撫でられて初めてほっと全身から力が抜けた
力むことが無くなったせいでカタカタと全身が震えだし、必死に兄の綺麗な衣の端を掴む
「大分うなされていたから心配したよ。ほら、白湯でも飲んで落ち着きなさい」
「ありが、とう」
差し出された真白の湯呑みに口をつけると、優しく微笑んだ兄は私の後ろの土間にある水瓶の所に歩いて行った
多少落ち着いて、湯呑みの中
に映った自分を見る
醜い私。私とは似ても似つかない美しい兄……兄?
『このブサイク!向こうに行きなさいよ!』
昔、ああ言って私に泥を投げつけたのは、兄だったろうか
違う。違う気がする
怖い姉と、優しい兄の記憶が重なり反発しあう
あ、ね?
違う違う違う、
「……」
俯いた私の視界に入る、
真白の湯呑み――――それを持つ泥がこびりついた手
見たことも無いくらい綺麗な布団――――ソコに似合わないボロボロで汚れた服
優しい兄の記憶はあるのに、真実はどちらかなんて
これでは嫌と言うほどわかる
じゃあ あの男性は だあれ――――?
「落ち着いたかい?」
後ろから声をかけられてビクッと身体が揺れて、手から湯呑みが落ちた
布団に白湯が溢れて行くのに気を配る余裕もない。カタカタ、と再び身体が恐怖で震え出す
なんで、なんで記憶が、二つもあるの?
「あなた、は、――だあれ?」
「………」
『後ろの正面だーあれ?』
「い、いやああああああああああっ!!!」