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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
788/790

第788話 歩容。

後書きに、少々報告があります。


手直し等はまた後程に──。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 ──凡そ、人の一生にも近しい時間である『百年』という時間を、私とエアは共に歩み続けた。


「…………」


「…………」



 その時間は、有り体に言えば……きっと『歪な道』であったろう。


 まず間違いなく、真っ直ぐではなかった筈だ。


 そして『人』からすれば、まったくもって不思議な『道』であったと思う。


 もしも『一般的な人の百年』と『私達の百年』に『価値』を付け、それぞれの『視点』で比べたとしたら──多くの者達は恐らく私達の『百年』を選ぶことはしないだろうと私は思った。



「…………」



 もしかしたら、私達の『力』だけに、憧れや羨みを持つ者達はいるかもしれない。


 がしかし、それを得る為に歩いてきた『道程』や時間、得てきた『痛み』と『苦しみ』、『悲しみ』や『怒り』を──『欲しい』と思う者達は、きっと限りなく少ないだろうと。



 何しろその『道程』は、『人』の尺度で感じられる『喜び』と比較した時、天秤でつり合いが取れたものではなかったから……。



 言ってしまえば、『失ったもの』が多かったと、多すぎたと言えるだろう



 ──要は、『損ばかりの百年』だったと思う。



「…………」



 『得たもの』なんて殆どなくて……寧ろ私は、自分の根幹たる『ロムとしての記憶』さえも大部分失ったままだ。


 一見して、『世界』や『大樹の森』、『音の領域』『祈りの領域』などの『管理者』として──


 それはそれは凄い『神』と奉じられるに近しい『力』を持っているかのようにも思えるかもしれないが……。


 その実、結局その『管理維持』でいっぱいいっぱいで、この身の内に具える膨大な『魔力』も、その殆どは『趣味』である『お裁縫』に費やす位の余裕しか残っていないのである。


 ……『表現』を知り、色々と『力』の節約もできたと思っていたのだが──それも気づけば『何かを生み出す事』に使ってしまった訳だ。



「…………」



 そして、いつしか私は──『ロム』は、『誰かを傷つける為の魔法』も使えなくなっていた。


 その起点となったのは恐らく、『暴力』に『力』を使う事が嫌になったから……。


 『何かを生み出す事』だけに『力』があればいいとずっと考えていたからだと思う。



 『大樹の森』に帰って来て、自分なりの新たな『表現』を模索し続ける内に……自然とそうなっていた。


 きっと『精神的な原因』だとは思う。

 ……だが、なんとも情けない話だとは思いつつも、正直『ホッ』とした部分もあった。



「…………」



 散々歩いて来て、歩き続けてきて……自分が何を『嫌い』なのかさえも、はっきりとは知らずにいた自分に気づけたのだ。


 ──だから、言いかえるならばそれは、また一つ『好きなもの』に対する『理解』が深まったとも感じる。



 無論、全ての『戦う力』を否定し、嫌いになったという訳でもない。


 エアやバウ、精霊やドラゴン、兎さん達やゴーレム君達……そんな彼らが揮う『力』に関しては『好意』も持っている。



 ──ただ、要は私の『視点』では、『ロムの力』は『何かを生み出す為だけに使いたい』と言う欲が生まれた……ただそれだけの話。



 皆、『力』の使い方はそれぞれの『視点』に依るだろう。


 だから私も、そんな己の欲のままに『表現』をし続けようと思っただけなのである。



「…………」



 人からすれば無駄にしか思えない。ある意味勿体ない『力』の使い方なのかもしれないが……。

 それでも笑顔を『表現』するために、この『力』はその方法で使いたいたかったのだ。


 ……だから私は、その為に自分なりの『意匠の服』も数々作ってみた。



 まあ、エア達からすればそれは所謂──『呪いの服』にしか思えなかったらしいが……。


 私としてはちょっとだけ『おまじない』をかけただけなので、少々大げさだろうとは思っていた。


 それに、その『表現』が例え『呪い』であっても……最終的には『笑顔』に繋がる『服』になる筈だと私は『信じている』のだ。その『力』は決して無意味ではないと──。



「…………」




 ──と言うのも、時として『人』というのは『当たり前』を見失う事もあるから、私はもっと身近に気づけるような『仕組み』を作りたかったのだと思う。


 これまでの己の経験──その『道程』を概念(コンセプト)として、私は『服』に『力』と意味を与えたかった。



 ……具体的に言えば、まさに私達の『道』を『表現』するかのように──『何かを得ようとすれば、それ以上の何かを失う』様な『力』を『表現』したかっただけ、とも言えるだろう。



 例えるならば、『力』を得る代わりに『記憶』を失うのはある意味一番分かり易いかもしれない……。



「…………」



 ……あっ、だが当然、その『服』を脱げば、ちゃんと『記憶』は思い出せるように『調整』は施してあるのだ。


 寧ろ、それで本当に『記憶』を失ってしまったら、どれだけ『悲しい気持ち』になるのか──私が一番理解しているからこそ、そこは徹底した。



 ──逆に、その事を考えただけで、あの時のエア達がどれだけ『涙を流したのか』を思い出す切っ掛けにもなって、私の『心』も痛くなってくる……。



 だから、私の作る『ロムの服』は双方にとっての『戒め』となり、その全てがただの『教訓』となるのだ。……そうなって欲しいという想いで作った。



 ただまあ、その『教え』をどう受け取るか──『どう活かすか』はそれぞれの『視点』で当然異なるだろう。


 もしかしたら、その『教え』を曲解して模倣し、改悪した『服』など作る者も現れるかもしれない……。


 でもまあ、それはそれで良いと私は思うのだ。『力』を使い方など、一概には決められない。

 『不要なもの』だと決めつけた中にも、気づき難い何かが隠れ潜んでいる場合もあるから……。



 だから、その『服』を受け取った者がどんな風に扱おうとも私は最後まで黙認する事にした。


 『聖人』風に言えば、それは『人を信じた』とも言えるだろう……。



「…………」



 私は好きな様に『表現』した『服』を作り続けると──エア達が必要としない分は、様々な『領域』の様々場所に赴いて、必要だと思う者達へと与えていったのだ。



 ──結局、『力』の使い方にも『表現』の仕方にも様々あると知った訳だが、私が『歩き続ける事』がその基点になる事に変わりなどなく……私達の旅はいつまでも続いていった。



 そうする事が、私にとっては自分の『喜び』に、『笑顔』に繋がると気づいたのだ……。



 『百年』という限られた時間を、『人』がよりよく生きられるようにと、数々の『日常』を束ね重ねて『歴史』を形作り、綴っていく様に──


 数々の『視点』の集合体が『世界』を織り成すように──


 私の『表現』は結局のところ『歩み』に帰結するのだと。


 要は、それこそが『追憶』として、『道』に輝きを灯すのである……。



「…………」



 まあ、そんな『歴史』も、次第にその限られた時間をいかに無難に、かつ効率的に過ごせるかに変わってしまう事がある。



 ……似た様な月日、似たような時間、似たような出来事の連続。


 そんな詰まらない『日常』を繰り返すだけの『仕組み』に飽きが来る瞬間はある。


 ……いや、実際に幾度もあったと、そう言えるだろう。


 私達はそれを、何度も何度も目にしてきたのだ。


 ……それに、進化していると言いながらも、その『歩み』が本質的に何も変わらない事もある。


 誰もが『道』から抜け出したいと思いながらも、それを繰り返していくのみだったりするのだ。



「…………」



 逆に、無理して抜け出そうとすれば、必ず争いも起こるだろう。


 皆、自分の欲しいものを貪欲に追求しようとすれば、他のものにも手が伸びるのは道理だった。


 そして、その手がぶつかりあえばその度に争いになり、それを収めようとすれば、また効率的な『日常』へと逆戻りするだけ……その繰り返しに飽きが来るのだ。



 結局、『無から有を生み出す事』を不可能と考え、常に何かを奪い合い……消費し、傷つけあうだけの『世界』に嫌気がさす。



 でも『人』はその生き方を、その詰まらなさを、繰り返し続けた。


 何の疑問も抱かず──いや、その『歪』を抱きながらも、これが正しい事なのだと信じ、己の本当の欲しいものに『まやかし』をかけ続けるだけなのだ……。



 例え、その『百年』が『二百年』になったところで、『人』のその『歩み』は変わらないだろう。


 無論、『百年』が『千年』になっても……永遠に至ってもだ。


 寧ろ、いずれ──『あの時、『百年』で終わっていた方がましだった』と、そんな風に悲しい結論に思い至る日が来る事すらあるかもしれない。



「…………」



 それ用の『仕組み』や『調整』が施された存在達でもない限り、その『精神』は最初から保たない。『心』が続かない。



 誰もがずっと『歩き続けられる訳ではない』のだと……私は知った。

 ……だから、どんなに不格好でも、上手くいかなくても、『日常』を変え続ける存在が必要になるのだと。


 そして私は、周囲に『種』を与え続ける存在であり続けたいと、自覚したのだった。



 無論、それは『人の歴史』を紡いでいく為で──決して『獣』の様な無駄に争い続けるだけの『百年』にはしたくないからでもある。



 『詰まらない時間』の連続に飽きが来たからと言って、『獣』に戻る様な生き方はしたくない。


 それに、効率的かつ無難な『道』しかない『百年』に慟哭もさせたくない──。



 だから、いつも、いつまでも、私は『歩き続け』て、問い続けるつもりなのだ。


 この『心』の向くまま……私の『視点』に、その『道』に、己を『表現』し続けたいと思うのである。



「…………」



 いずれ、この『服』も余計なものとして扱われる日が来るかもしれない──けど、その日までは、そうして『歩いて生きたい』。


 そして、『笑って生きたい』。


 だから、私は今後も『表現』をし続けて、また新たな『表現』を知り、自分らしい『力』の使い方で、私らしい『何かを生み出し続けていこう』と、そう思うのであった……。






「…………」


「…………」


「…………ふふっ」



 ただ、そんな風に『表現』するのは何も私ばかりではなく──。


 寧ろ、そんな私よりももっと凄い『表現』を生み出したのは『エア』であった……。


 そして今、私はその凄さをまさに実感している最中でもある。


 ──と言うのも、彼女の腕に抱かれた『角の生えた耳長族(エルフ)の赤ん坊』と、私は先ほどからずっと視線が交わっている訳で……。



 そして私達が見つめ合っている様子に、エアは『ニマニマ』と微笑んでおり……。



 私は、その赤子の柔らかな頬に、恐る恐る指を添えてみたのである……。



 ──すると、その赤子は私の指をパシッと掴み取ると、『キャッキャッ』と嬉しそうな『笑顔』を向けてくれたのだ……。



「…………う」



 ……するとだ。


 その日、その瞬間、『世界』を含めて全ての『領域』で、一斉に珍しい『天気雨』がざーざーっと輝くような晴れ間の中で降り注いだらしい。


 ……それも不思議な事に、その雨は少々塩辛く(・・・)もあり──それでいて、陽の光を浴びてまるで『白銀色』に輝いて見えたりもしたのだとか。



 エア曰く、その様子はまるで『白銀の笑み』が咲き誇るかのようで……見方によっては『百合の花』が開いた様にも視えた事から──



 彼女(エア)はその子に、『リリ』と名付ける事にしたのであった。





誠に突然ながら……この話をもちまして、一旦『完結』に近しい状態とさせてください。

本来なら、まだまだ話も続く予定でしたし、序章的な意味合いの『完結』でしかないのですが──


少々、『不調』がどうなるかわからない状態でして……下手したら突然書けなくなる事も十分に有り得た為に、一旦『完結』と言える形にしてしまいました。


正直、『鬼と歩む追憶の道。』が『完結しない物語』になるのが嫌だったのですが……。

途中で幾つか『──編』とか『──編』とかも飛ばしてしまい、ここ最近は碌に文章も更新も儘ならず……ここまでお付き合いしてくださった方々には、大変申し訳ない事をしてしまいました。

本当にごめんなさい。


……ただ、余裕がある時には、また引き続き手直しや加筆は続けていこうかと考えています。

新キャラも含め、『ロムさん』や『エア』の今後の話も、順次追加していく予定ではありますので、

思い出したらまた、良かったら見に来ていただけると幸いでございます。


……無理をせずに、皆さまもご自愛ください。

またのお越しをお待ちしております。今までありがとうございました。


──因みに、一応明日には次話として『アナザーストーリー』的な感じで、一番最初に書き溜めていた『原初』の『鬼と歩む追憶の道。』や、ちょっとした『主要登場人物設定』などを残していこうかと思います。


そちらは当初のプロット的な役割で、そのまま書き残しておいたものです。かなり拙い状態なままなので、ちょっと『気が向いたら』位で……お楽しみくださると幸いです。ご留意ください。

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