第766話 無香料。
注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。
また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。
「──えっ、たまに帰って来る子達もいるの?……へー、その時に改良した『転移の魔法道具』を取引したりもしていたのね。そっかそっか。『転移の魔法道具』……あー、なるほどね?」
──『ピョンピョン!』
「うんうん、その時に『魔法道具』の素材とかを持ってきてくれたりするんだ?……それと他の足りないものは基本的に『大樹の森』から?精霊達ともだいぶ仲良くなったんだね。そう言えば行き来はしてる?……まだしたことない?なら、この後みんなで一緒に行ってみよっか!」
──『ピョンピョンピョン!!ピョンピョンピョン!!!』
『白銀のエア』が『館のゴーレムくん達』にそう問いかけると、皆嬉しそうに飛び跳ねていた。
エア自身も少し意外そうだったが、これ程近いのにこれまで『大樹の森』に彼らを招いた事がない事に気づいて驚いた様子である。
……ただまあ、基本的に『大樹の森』と言うのは『精霊達の別荘』とも言える場所であり、その『領域』を満たすのは高濃度の『魔力』で溢れているのだ。
だから、『白銀の館』に居た住人達が『魔境』にも近しいあの場所に足を踏み入れると健康を害する恐れがある為、その住人達を支える『役割』を担っていた『ゴーレムくん』達がこれまで『大樹の森』に入った事がないのもおかしくはないだろう。
それこそ『精霊』や『ドラゴン』、『ゴーレム』、その他『力』の在りし者達でもなければ、あの場所で『適応』し続ける事はできないだろうから……。
「…………」
だからまあ、『ゴーレム君』達と私達であれば、共に『大樹の森』に行くことも可能である。
……向こうには『ゴーレム君軍団』という他のゴーレム達も居るらしいので、彼らとも仲良くなれたら素敵だろうとも思った。
──因みに、『バウ』という存在を知っている為だろうか。
『館のゴーレム君達』は、気づけばいつの間にか新顔である『水竜ちゃん』と『風竜くん』にも興味を示しており、『──スタタタター』と遠慮なく近寄って来ると、頻りに『絵筆や大きな板』を勧めてきているのが何とも微笑ましかった。
……どうやら彼らの中では『ドラゴンは絵を描けるものだ!』という、そんな特殊な認識になっているのかもしれない。
ただ、『──ピョンピョン!』しながら好意的に接してくる『ゴーレム君達』の様子に、『水竜ちゃん』と『風竜くん』が少し困惑しているのが、また何とも言えない気持ちにさせる光景であった。
本当に『嫌がっている』のか、はたまた『遠慮している』だけなのか──。
『聖竜』でもまだ、上手く判別ができなかったのだ……。
『ロム』よりはだいぶこの『心』も成長したと思っていたのだが──
まだまだ『周りをちゃんと理解する』為には『適応』しきれていないらしい……。
「……ぱうっ」
……ただまあ、兎にも角にも今は『大樹の森』へと向かう事を優先してもいいんじゃないかと、そう思う。
なので、私はエアに賛同する声をあげながら大きく『翼』を広げると、未だ困惑する幼竜二人や跳びはねる『館のゴーレム君達』、そして器用にも微笑んでいた『白銀のエア』も一緒にまとめて『第三の大樹の森』がある部屋の方へと『賑やか』に背を押し出す事にしたのだった。
──そうして『わいわいがやがや』と、今だけはかつての様な騒がしさのままに、久々の『里帰り』を私達はしたのである……。
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