第742話 古風。
『風竜くんの母親』たるドラゴンは今、『ダンジョン都市』と呼ばれる『街』で暮らしているらしい。
そしてその場所は、エアにとっても思い出深い場所であるという。
『…………』
そもそも、今でこそ『世界』とは別の領域として存在する『大樹の森』も、元はこちらの大陸の『魔境』と呼ばれる場所の一つであったと。
なので、こちらの大陸はエアにとっても一番馴染み深い上に、当然の様に『ダンジョン都市』にも足を運んだ事があるし、それ以外にも各地を散々歩き回ったのだと。
……ただ、こちらの大陸は数々の争いが起きた場所でもあって、かつては『大陸統一』を目指した国もあり、その傷跡が未だに至る場所には残っているらしい。
そして、精霊達の多くが『大樹の森』に避難している事もあり、大地は未だに荒廃し、一部は砂漠と化している場所もあるそうだ。
「……がゆっ!」
だが、そんな『荒廃した大陸』において、『救世主』と呼ばれる存在がいたと。
そして、その存在と『ダンジョン都市』を中心として『荒廃した大陸』も少しずつ昔の様な緑あふれる場所へと戻ろうとしていたのだと。
昔からの名残で『ダンジョン都市』と言う風に呼ばれてはいるらしいが、今ではその『街』はとある国の首都にもなっており、この大陸で一番栄えているとの噂もあるらしい。
『風竜くんの母親』はそんな『街』において重要な立ち位置におり、『救世主』の側近として『風竜くん』も好きに会う事が出来ないほどに忙しく頑張っているのだと。
『風竜くん』は『派閥』の為、これから先私達と一緒に過ごすと決めて付いてきている。
無論その事自体は本人も覚悟の上らしいが、そうなると『母親』とは暫く会えない事は想像に容易い。
なので、『次はいつ会えるのかもわからない』し、もしかしたら『もう二度と会えないかもしれない』と考えてしまうと、無性に寂しくなってしまったらしいのだ……。
「──なら、会いに行こうか」
「……がゆ?」
「うんっ。『風竜くん』が会いに行きたいなって思ったんなら行くべきだと思うし。それにわたしも久々にあの『街』に行きたくなってきたんだ」
「きゅー!」
「『水竜ちゃん』も行ってみたいって?ロムは──」
「ぱう」
「うんっ。なら、行こうっ」
……とそんな訳で、私達は『ダンジョン都市』を目指す事にした。
それはある意味『風竜くんの母親』に会う為だけではなく、先人の『失敗』の傷跡を確認する為でもある気がした。
そして、その傷跡とひたすらに向き合い続けてきた者達の強さを知る為でもあると……。
『力』の使い方は個人の判断に委ねられるかもしれない。
だが、その結果の如何によっては『子孫』達に何かを背負わせる事にもなるのだと──
その『街』にはきっと、その未来の一端がある気がしたのだ……。
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