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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
724/790

第724話 過誤。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 どんなに『力』があっても、どんなに対策を講じていても、失敗するときは失敗するものだと私は思う。


 

 『…………』



 『──ね?だから、泣かないで』と、私はそんな思いを込めながら『崩れかけているドラゴン』(エア)に寄り添っていた。


 まあ、今のエアの大きさからすると私は小さすぎて視認できないかもしれないが……。

 『干渉』からちゃんと気持ちは伝わっていると思う……。



 ただ『ろむ、ごめんね……』と、そう語りかけてくる様な彼女の表情からは痛いほどの悲しみが伝わってくる気がした。



 『…………』



 ……でもねエア。私をよく見て欲しいのだ。


 『ほら!私は全然怒ったりなんてしていないんだよ!』と。

 『私はエアが無事で安心しているだけなんだよ!』と。



 だから、『謝る必要なんて全くないんだ』と、私はエアにそう言いたかった。


 ……ただ、実際はそういう事ではないのだろうなとも思う。



 滝の様に流れ落ちるそれ(涙)が、堪えきれなかったエアの悔しい気持ちの表れである事も分かるのだ……。


 『またやってしまった』と──『何度も何度も過ちを重ねてしまう』みたいな状況に近しい感覚で……気持ちを抑えきれずに悲しくなってしまう事もあるだろうと……。





 ──ぱたぱたぱたぱた……。



 だが、私も当然そんなエアの事を放っておけなくて……。


 またもこりずに翼を使ってエアの涙を止める為に奮闘していたのだ。

 ……正直、今回は瞳も大きいから、前よりももっと大変だった。



 ──だから、客観的にはそんな滝の流れに逆らう様な私の姿は、とても無力で滑稽にも感じただろう。



 『…………』



 だがしかし、それでも私は決してその行動を無意味だとは思わなかった……。


 落ち込んでいるエアを見ているのは辛かったから、その為に行動したのだ。


 そしてそれは、言うまでもなく思ったような結果を伴わなかったけれども、その行動の意味までは損なわれてはいないと私は思っている。



 ──なので、正直励ましになるかはわからないが、エアも同様にちゃんと対策も講じて自分に出来る事をやっていた訳だし、得る物もちゃんとあっただろうと私は思っているのだ。



 だから、『エアも落ち込む必要はないんだよ』と私はそう伝えたかった。

 ……寧ろ、この『失敗』に関しては、後悔しても仕方のない類のものだったとも思うから。


 実際、手を掛けた瞬間に『──ドオオオオオオオオオン』なのだ。

 正直、どうしようもなかっただろうと。



 なので私は、そんな思いを伝える為にも、エアへとこんな問いかけをしてみたのである──。



 『エアのやった事は本当に『失敗』だったのかな?何の意味も残さなかったのかな?』と。



 『…………』



 ──すると、エアの瞳が直ぐにそれに反応して『否』と返してきたのが何となく伝わってきた。



 『うむ。そうだろう。違うだろう?』と、私も思う



 それに正直この件は、結果よりもその跡に残ったものの方が余程に重要なのだと気づいて欲しかった。


 『試した』事も決して無意味にはならないと。

 ……現状、『身体の再構成』で『ドラゴン』になるのは、エアの手に余ってしまう事に気づけたのはそれだけで大きいと思う。


 次はもう同じことを起こさない様にと注意できるし、再度『試す』までにはどれくらい成長をしないのかも、エアならば感覚的に学べた部分もあるだろう。



 ……だからある意味でこれは、『良い経験を積むための、良き大失敗だった』と、そう思う方がきっと建設的だろうと私は思ったのだ。



 『ただ落ち込んで、ただ悔やみ続け、涙を魔力で散らすだけではもったいない』と。

 『これまでのエアの努力を、無駄にはしてはいけないんだ』と。



 この件を糧にして、エアもちゃんと立派な『ドラゴン』になるのだろう?

 それで一緒に『ドラゴン語』で『お喋り』もしたいのだろう?



 『…………』



 ……うむ。ならば、ちゃんと次は成功できるように、また頑張ればいいだけなのだ。


 大丈夫。また一歩ずつ先へと進めばいい。


 『聖竜』たるこの私だっている。また何度だって協力するのだ。



 それに、此度の『失敗』は誰が責める訳ではないし、誰かがどうにかできるものでもない。


 ……強いて言えば、『エアだけのもの』、だ。


 これを活かせるかどうかも、エア次第。


 そしてエアはちゃんと自省し、次に活かす考えを自分なりに生み出せると私は信じている……。



 だから、この先も己が感覚の導くままに、歩き続けようではないか。

 私の様な、立派な『ドラゴン』になる為の一歩も、きっとその道中にあるのだ。



 『ドラゴン』になったら『水竜の子』と共に『お喋り』もして、私とは一緒に『ぱたぱた』の練習もしようじゃないか!と──。



 そうして私は少しおどける様にエアへと伝えたのだった……。



 『…………』



 ……うむうむ。そうそう。


 まあ、ある意味では、時にはこうして落ち込む時間だって必要になる事があるという話でもある。


 何かに気づく為には、時として回り道が必要になる事もあるだろうからと……。


 だから、今回の件もきっと、そういう大事な事に気づくために必要な『特別な出来事』だったのだと、私はそう思ったのだった──。





またのお越しをお待ちしております。

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