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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
711/790

第711話 手解。

(今回は、会話的なやり取りが多めの話になります。)


注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 『深謀遠慮……?先を見通してって……?うーん、ロムはそんな事考えて無かったと思うなぁ』



 『白銀のエア』と『毒槍』が『ロムから授かった力』に関する話を続ける中──

 『毒槍』が『ロム』を過剰に持ち上げたのに対し、エアはすぐさまにそう返していた。



 『…………』



 それを聴いた私は、『……おお。流石はエアだ』と、そう思った。



 ──ぱたぱたぱたぱた……。



 おっと、いけない。いけない。

 ついつい内心の隠しきれぬ喜びから『ぱたぱた』が出てしまっていたようだ……。


 もう少し落ち着かねばと思う。

 なので『聖竜()』はまた引き続き二人の話に大人しく集中する事にしたのだった……。




 『──でも、そうは言いますが、結局『わたくし達』(『魔物側』)にも『勇者一行』にも『力』を授けている以上、狙ってそれをしてくださったのだとした思えませんわ。そして、そこには何らかの思惑が絡んでいる筈だと──だって、そうでなければそんな何の『利』もない事を『泥の魔獣』様がしたことになりますわよ?……『力』を貸した者達が殆ど一堂に会して敵対し争い合う状況になるなんて、そんな都合よく起き得ません──『手を貸したかったから手を貸した』だけでは済まないと思われますが……?』



 『……それじゃいけない?』


 『まさか本気で?本当にそうだと言いたいのです?』


 『うん。『誰でも』救う訳じゃないし。独善的だし、気紛れだし、己のやりたいように生きているだけだけど……たぶん、言葉にするならばきっと一般的に見ればこれはそんな身勝手な話なんだと思うよ?』


 『…………』



 『……納得がいかない?──けどね、それでもロムはきっと、ずっと誰かの『幸せになれるように』って願いを込めながら生きてきたんだと思うんだ。気が向くままに『力』は揮ってきたけど、それだって常に『大切な存在』が笑顔で過ごせるようにっていう思いがあったから……だからね、『あなた達』にも『勇者一行』にも結果的に狙って『力』を授けたみたいな状況に思えるかもしれないけど──やっぱり偶々なんだとわたしは思う』



 『でも、それでは──』


 『説明になってない?それとも不十分だと思う?……それかあまりに『不器用』かな?──もっとうまくやっていれば、気に入った方にだけ肩入れしておけば、もっと『世界』はこんなにも乱れる事もなかったってそう思う?』


 『…………』


 『ううん。違うでしょ。……偶々、ロムが『力』を貸した者達が戦いを始めただけじゃない。それをロムのせいにしないで──その『力』の使い方を選んだのはあなた達自身なんだから……。ロムは、そんな事まったく望んじゃいなかったんだよ。ロムは、誰かを傷つける『力』よりも生み出す『力』を尊んできたの……なのにほんと、なんでそうなっちゃうのって、わたしは思うよ……』



 『──でも、生きる上で誰かと衝突するのは必然、『戦い』は必須なものですわ……そうでなくては一方的に虐げられ搾取され続けるだけ!抗い、戦い続けねば、わたくし達は生きてこれませんでしたわ……わたくし達はきっと、そういう生き物なんですもの──』



 『……『性質』か。そうだね。確かにロムも長年それに悩まされてきたんだと思う。『魔力調整』が必要になったのも、元を(ただ)せば『世界』に満ちる魔力と、ロムの魔力が競合した事が原因だった訳だし。……まあ、今となってはわたしもその頸木から外れて、ようやくその『仕組みの歪さ』にも気づけたから。仕方がないと思うのも分かる気はするけどさ──』



 『……それは、どういう意味ですの?』


 『──うん?魔法使いになって『差異』を超えていくとね。一つずつ気づけなかった事柄に気づけるようになって、わかる事が色々とあるんだよ』


 『……それはいったい?『何に』気づかれたのです?』


 『うーん、例えばね。『世界』って、色々なものが魔力で作られてるんだなって事とか、分かるようになるかな……』


 『……??』


 『例えるならば、『魔力結晶』とも言える塊が『世界』という『領域』には沢山あって、そこに存在する者達の要にもなっているって感じっ』


 『……そ、それはつまり?『人』や動植物や、わたくし達の様な『神人や神兵達』も……その魔力の塊を元にして作られていると?』



 『──そう。呼び名や、『力』の向きや状態で色々と勘違いもし易いけれど、基本的には『魔力』が元になっているはず……。いっそ、わたし達は全てが『魔力』でできていると言っていいとも思う。『命』は『魔力結晶』の一つの形態であると言っても過言じゃないかもね』


 『…………』


 『だから、魔力量の多い種族や、魔法使いは寿命も長くなり易いでしょ?勿論、絶対じゃないし個体差や例外は当然あるけどさ』


 『……でも、いや──それじゃあ、先ほど言っていた『仕組みの歪さ』というのはいったい?』


 『あなたが今、なっている状態は何だと思う?』


 『わたくしが今、なっている状態?……『身体』のない状態、いえ、魔力のみの姿、ですわね?』


 『──そう。その状態であなたは『喰らう事』ができる?その『性質』はあなたにとって重たいもの?』


 『……?……!?……できませんわ。気づきませんでした』



 『ね?出来ないし、そもそもする必要も感じないでしょ?……だからまあ、それでも厳密には多少なりともその状態から変質したりもするから、何かしらの対策は講じないといけない訳なんだけど──ただ、一旦その説明はおいておくとして、話を戻すと……要はね、今の状態が『原初』となっているわけで、『人』という状態はそこに余計なものを『加えられている状態』なんだと思うんだ──』


 『……え』


 『──もっと言うならば、『歪な性質を付け加えたからこそ『人』は『人』足り得た』とも言えるのかな』


 『ちょ、ちょっと、まってください』


 『だから、魔法使いで『差異』を超えた者達はきっと皆気づくんだと思うよ──ならば、その余計なものを外していけば、その分の隙間を使って『器』にもっと『力』を──『魔力』を(そな)える事ができるんじゃないかって……』


 『…………』


 『……そうしてね、それを突き詰めた先で──『人』は『化け物』に至れるんだと思う』


 『…………』



 『──でもね。本当はそれって、言うまでもなく酷く危ないことなんだ。ただただ『人』としての『性質』を削っていっただけでは上手くいかない事も多いと思うし、上手くいっても一応『化け物』と言われるほどにまで『力』を得る事はできるかもしれないけれど、それは基本的には『歪なまま』だから──どこかで『性質』を正さないと必ず不具合が出ると思うの……』


 『不具合……』



 『──そう。だからこそ『性質変化』という『力』が必要になるんだけど……これがまた『世界の仕組み』と真っ向から対立する『力』だからね。普通は習得不可能なんだと思う。わたしも現状じゃ、一人でそれを行う事はできないんだ──ロムが居ないとね』



 『……正直、いきなり過ぎる話ですわ……少々混乱もしているのですが……あの、貴女はなぜこんな話を急にわたくしにしてくれる気になったのです?』


 『ふふっ、ごめんね。ほんとは話す気のなかった部分も少し含んでるんだけど、なんかちょっとだけ『口が滑った』みたい』



 『……えぇ、そんな理由ですの?』


 『……ううん。ほんとは『勇者一行』には導きとして『音の世界』を紹介したのに。貴女には何もないなって──さっきのあなたの『うるうる』を見ていたら思っちゃってさ。わたしからはこんな話と、些細な『導き』くらいしかできないけど……』



 『いえ!正直十分過ぎる気もしますわっ!──それに、そういう事であれば折角ですのでもう少しだけ教えて欲しい事がありますの──』


 『うん?なに?』


 『──『泥の魔獣』は、どうやって自身の『領域』を作りあげたのでしょう?』


 『……あー、なるほど。あなた達の望みも、自分達だけの『領域』なんだね?』


 『──ええ、そうです。でも、それは誰だってそうでしょう?自分たちの住処を欲しがるのは当然の欲求ですわ。『勇者一行』との戦いに勝ち、『世界』をわたくし達のものにできれば言う事はありませんが──あの『祈りの力』がある限り油断がなりません。……ならば、最悪を想定し、小さくとも安全を確保できる場所を準備しておくのは選択肢の一つとして当然ですもの──なので、ご存じであればどうか教えていただきたいのです。貴女はあの『大樹の森』を作りあげた方法を知っておられますか?そもそも、あれはわたくし達にも出来るものなのでしょうか?それだけでも、せめて……』



 『……なるほどね。ただごめん。先に謝るけど、偉そうに教えるとか言っておいて作り方まではわたしも知らないんだ。わたしに出来たのは土台が完成した状態から少しだけ手伝っただけだから……ただ、『領域』事態は『あなた達』でも魔力量次第で作れるものだとは思うよ。まあ、膨大にはなると思うけどね──』


 『──そうですか。やはり『魔力量』が鍵となるのですね。……それに、先ほどの『魔力結晶』が『世界』の元になっているという話も含めて、得る物はとても大きかったと思います!ですので心より感謝を……あれ?』



 ……だがそうすると、まるでそんな『毒槍』の言葉の終わりをきっかけにしたかの如く──『魔力体』である彼女は突如として白い光に包まれだしたのだった。



 『──あらっ!どうやら、運良く『あのお方』が『力』の使用にも気づけたようですわっ!わたくしを戻してくれようとしているのが伝わってきましたっ!……ああ、これであのお方の元に戻れるのですねっ!……正直、もう少しだけ『領域』についてのお話も深めたかった気持ちもありますが、此度は『泥の魔獣』様もおりませんし、やむを得ませんわ!会えなくて残念でしたが、かのお方にもどうかよろしくお伝えくださいませ……それでは、またっ』



 ……そうすると、そんな『思い』を最後に、『毒槍』もまた『白条』の様に光に包まれたまま颯爽と駆け出して行ってしまったのだった──正直、なんとも突然だと思う。


 それに最後まで彼女(『毒槍』)は『聖竜(ロム)』が居た事にも気づかなかったらしい……。




 ──ぱたぱた、ぱた、ぱた……。



 おっと、いけない。いけない。

 ついつい内心の隠しきれない『気づかれなくて残念だったな』という思いが少しだけ出てしまったようだ……。


 一部聞こえ難い部分はあったが、なんだか話の流れ的には『領域』に関する事のようだし、『そろそろ私も話に入る出番かな?』とか思っていた所だったので──


 なんだかちょっとだけ肩透かしを食らった気分になってしまう私なのであった……。



またのお越しをお待ちしております。

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