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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第687話 酔眼。




 隠密行動を開始する『聖竜()』は、ゆっくりと歩みを進めた。



 今頃『密猟団』は、お酒を浴びる様に飲んでは騒いでいる気がする。

 なので、そんな彼らが完全に酔いつぶれて眠ってしまうまでは、暫くこのまま倉庫内をぶらぶらするつもりだ。



 倉庫内は隙間から月明かりが漏れるくらいしか明かりがないのでとても薄暗い。

 何が何処にあるのかも見え難くはあった。



 けれども……なんだろう。

 夜の中、その静かな空気を感じながら歩くのは正直嫌いじゃないと感じた。



 『……夜、月、酒』そんな三つの組み合わせに、なんとも言えない不思議な『心の平穏』も感じる。ただ、それがなんでなのかは『聖竜』である私にはよくわからなかった……。



 『…………』



 ……ただ、そうしてのんびりと歩き回った矢先、私の入れられていた檻がある部屋から出ると今度は少し大き目で広く天井の高い空間へと出たのだ。



 さっきまでの部屋は個室だったから、その大きさの違いに少しだけ驚く。

 けど、先の部屋はもしかしたら【転移】させられた私が暴れまわる事を想定していた場所なのかもしれないと思い直した。



 まあ、予想外に私がずっと大人しかったのであまり個室の意味はなかったかもしれないけれど……それだけでもう『密猟団』が計画的な行動なのだと分かる。



 ……だが、ならばせめて『見張りの一人でもつければいいのに』とは思う。

 捕まってしまった私がいうのも何だが、そこまで計画しておいて随分と捕まえた後はお粗末だとも思ったのだ。


 現にこうして檻から抜け出せている訳だし、なんとも不用心だと。



 それと、今更ながらに『密猟団のお頭』が扱う『腕輪の【転移】』について、幾つか気づいた点もあった。


 と言っても、ほぼほぼ『勘』にしか過ぎないのだが──私はあれを『簡易的な目印』なのではないかと思っているのだ……。



 『…………』



 そもそも、【転移】という魔法は予め移動先に自分の魔力を『目印』として移動させて置く方法が一番分かり易い。なので、基本的には『拠点間』の移動こそ【転移】は最適な魔法だと私は思っている訳で……あの『腕輪』もきっとその『目印』として使っているのは間違いないだろうと。



 ただ、例外的に『管理者』である私などは、現状『世界』のほぼ全てに自分の『調整した魔力』を広げている為、好きな場所に【転移】する事が可能だったりはする。



 無論、『他の魔力』に邪魔されたり『魔力がそもそも薄かったり無かったり』すると、【転移】はとても発動し難くなってしまう上に、元々【転移】という魔法自体が発動させるのにも相応の魔力を消費する為、環境にも左右され易いという点がこの魔法の難易度を更に引き上げているとも言えるのである。



 『…………』



 ……さて、それではそんな前置きを基として話を少し戻すが、それに対して『密猟団のお頭』が使っているその魔法道具──仮名をつけるならば『転移の右腕輪』とでも呼べるそれは、『簡易の目印』として転移先に魔力を置く手法を取りながらも、その魔力の大部分は『腕輪の魔力』が補っているのである。



 ──なので、要は『道具使用者の消費魔力は極めて少なくて済む』……という訳なのだが。



 しかし、そうなると当然今度は、一つ問題が思い浮かんでくるのである。



 ……あれ?それじゃあ、果たしてその【転移】を可能にしている『腕輪の魔力』は『いったいどこから調達してきているのだろうか?』と。



 『…………』



 そして、その『答え』となるのが、なんとも不思議な話なのだけれど──『私』なのである。

 だから、当然の様にそれに気づいた時には、私自身も『……え?』とはなったのだ。



 『なんでその『腕輪』は私の魔力に『干渉』ができているのだろうか』と。



 ……正直、気づいた瞬間は『勝手に自分の『力』が余所で使われてる!?怖いっ!!』とも感じた。

 だから『腕輪の回収』を考えたのも実はそんな要因が絡んでいたりするのだ。



 なにも『【転移】させられた仕返しをしなければっ!』とか、そんな幼稚な動機が元になっている訳ではないのである。……ちょびっとだけだ。




 『…………』



 ただ、そうして『ぺたぺた』と倉庫内を歩き回りながら、もう少しだけ真面目な話を続けると──


 恐らくは、何度も【転移】を使い続けられるほどにその『腕輪の魔力』はそもそも貯めておける様な品物ではないと思えた。


 それに、きっと貯めておける機能がついていたとしてもそれは極めて有限であるだろうと。



 だから、『ない袖は振れぬ』以上、必ずどこからか『転移を可能とさせる魔力』を調達する必要があり──もっと言えば、私が『魔力を奪われている感覚が無い』事から、あれはきっと『簡易的な中継器』の役割を果たしているだけではないだろうかと……そう思ったのだ。



 きっとその大本となる別の『魔法道具』が、恐らくは他にもあるのではないだろうと。

 私は現状そう考えている。



 そして、『密猟団の話』を聞いた限りでは、その話に出た──『誰も入れない屋敷』と『魔法道具職人一家』が怪しいと、私は睨んでいる訳なのだ。……うむ、恐らくは間違いないと思う。



 なのでこの話は『腕輪の回収』が終わった後、エア達の所に帰ったら要相談だなと、私は内心で強く思うのだった……。





「…………」



 ……無論、その相談後すぐに『──えっ?そこって『白銀の館』のことでしょ?』と、エアが返してくるのは言うまでもない──。





またのお越しをお待ちしております。

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