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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第682話 喚起。




 『冒険者ギルド』の受付越しに、神妙な顔つきの男性職員とエアはそんな言葉を交わしていた……。



「……ああ。ほんとだ。なんでもそいつらは『古代の秘宝』なんじゃねーかって言われている程のえげつない『魔法道具』を所持しているらしくてな。それがとんでもなく強いんだと。……それと、これは極秘なんだがその『魔法道具』には幾つか種類があるとかで、その中の一つは使ったら相手を問答無用で動けなくしちまうって話だ。──だから、お嬢ちゃんみたいな『竜使い』なんてのは格好の獲物だろうからな。特に気を付けておくんだぞ」


「……う、うん。そうだね。わかった。情報ありがとっ」


「ああ。逆にもし嬢ちゃんが何かしら掴んだら。その時は近隣ギルドにも報告頼むぜ?良い情報には報酬も出るからよ」


「わかった。──じゃあね」




 『…………』



 『白銀のエア』改め『竜使いのエア』は、お供の子竜を二人とも腕にむぎゅっと抱きしめつつ、『冒険者ギルド』を去っていく──。


 そして、ギルドから出るとエアは先ほどの男性職員から教えてもらったこの街のお勧めの宿屋へと向けて歩みを進めていくのであった……。




 ──因みに、言うまでもない事かもしれないが……『ぬいぐるみ』のフリをして街に入ろうとしたら即効でバレたのである。いやいや、皆まで言うまい。



 『…………』



 ……だが、その際に出た咄嗟の言い訳にしては『竜使い』と言ったエアの言葉は本当に見事なものだったと感心するばかりであった。正直、演技が上手過ぎて面白いと感じてしまうほどである。


 嘘だとは到底思えないその毅然としてた対応と、エアのそのちょっとだけジト目で不愛想な表情に対し、疑いかけてこれる者は一人も居なかったのだ。


 その上、『白銀のエア』は小さな体躯をしているのだが、『金石冒険者』の証である『金石』はその首元でちゃんと輝いており、それが尚の事エアの『竜使い』と言う発言を良い具合に後押ししてくれた感じもあった。



 『その若さで『金石』と言う事は……なるほど、『竜を使役しているから』なのか……ゴクリ』と。


 周りの者達は勝手にそんな『勘違い』をしてくれたのである……。



 『…………』



 ……ただ、一応は街に入る際の注意事項として──


 『街中では決して子竜達を好き勝手に行動させない事』と、『竜達が居る以上は移動範囲は制限させて貰う事』、それから『竜達を連れて泊まれる宿屋は限られている為、ギルド指定の場所に泊まって貰う事』などを約束させられたのだった。



 ……まあまあ、それ位はしょうがないという事で当然了承したのである。



 それに、本当はこの街に立ち寄ったのも『水竜の子』が興味がありそうだったから来ただけなので、チラッと街を見回ったら直ぐに泊まらずに出ていくつもりだったのだ……。


 ただ、変にそこで否定し拗れて問題がややこしくなっては面倒だと、折角の楽しい旅を変に壊さない様にと気配りしてくれたのか──エアが『それじゃあ、折角だしこの街で一泊だけしていこっかっ!』と、そんな提案してくれたのだった。



 無論、私と『水竜の子』はそれに直ぐに同意したのである。

 ここまでがずっと野営の旅だったし偶にはいいだろうと、そんな思いもあったのだ。



 まあ、宿に泊まろうとも街外で野営しようとも、私とエアは『眠らない』為、正直に言えばどちらもあまり大差はないと言えるのかもしれないが……『こういうのは気分が大事だから!』と、エアもウキウキしながらそう語るのであった。



 宿の中では特別な事は何もなく。野営の時と同じ様にお喋りに興じて、魔法の練習などをしたりするだけなのだが……普段嗅ぎなれない部屋の匂いを感じるだけで『水竜の子』は不思議と興奮していた。そんな様子を見ているだけで微笑ましさを感じてしまうが……ベットで『ぴょんぴょん』するのはほどほどに。



 『…………』



 ……無論、そんな訳で今日は室内である為、流石に私の方は『ぱたぱた』の練習は控えておいたのだ。泊まる部屋はそこまで大きい訳でもないし、埃を舞わせたくはないからと。



 なので、今日は殆ど大人しくエアと先ほど噂に出た『密猟団』などについて話を深めていくことにしようと思う。



 その者達が『どういう奴ら』で、『何をしてきそうか』、また『どのくらいの人数が居るだろうか』などのそんな予想立てを話するだけでも地味に面白く感じる。



 それに、『狙われる可能性が本当に高いのかどうか』──そして『その場合に使ってくるだろう手法とは……』などなど、そんな事まで考えられると実際に問題が起こった場合にはかなり役に立つ気がしないでもない。



 ただ、やはり最終的に一番話が盛り上がったのは、その者達が扱うという『古代の秘宝』とも呼ばれる『強力な魔法道具』についてだ……。



 『…………』



 ……ただまあ、それに対しても結局は、本気で対策を練るというよりかは『こんな風な魔法道具なのかなー?』とか、『いやいや、きっとこんな感じじゃないか?』と言う感じで、ほのぼのと世間話に興じる延長線上でしかなかった。



 ──まさかっ、いくら『ドラゴンの子』を連れているからと言って、本当に都合よく『密猟団』が現れるわけでもあるまいしな……うむうむ。



 『……あっ』『あっ!』『……やった』『本当にもう。竜になってもそんなところまで変わらないんですから……』



 ……え?






またのお越しをお待ちしております。

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