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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
639/790

第639話 まくあい。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。


(『気になる方』向けの話になります。基本的にはフレーバーテキストに近しいものだとお思いください。また後々変更する可能性が高い事もご了承いただければ幸いです)





 『失敗』とは立ち止まる理由になり得るが、また歩き出す為の理由にもなり得る。



 絶えず勝ち続ける勝者よりも、敗北を知っている者の方が得るものが多いと感じるのであれば、それはきっと……敗者の方が余分に『理由を得る機会』を手に入れる事が出来るからだと私は思う。



 それはつまり『考える機会』を得るという事にも近しいかもしれない。

 また、これまでの己では考えられていなかった部分を見つける作業だとも言えるだろう。


 ……総じて、それらは『気づき』であると私は思っていた。



 ただ、時に『失敗』から何も学べぬ者だっている筈だ。

 『失敗』に慣れ過ぎた者は特に……。

 考える事を放棄した者は尚更に……。

 気づく事から目を背けてしまった者は絶望的に……。



 そう言う者達は、恐らく己の中に『空』を感じる瞬間がある。

 すると、そんな者達には総じて、己の中に『虚』が生まれるのだ。



「…………」



 ……経験談(・・・)だから、私もそれを良く知っている。


 そして、これは未だにエアには伝えていない事の一つであり──


 出来る事ならば、知って欲しくないと思っていた(・・)事の一つでもあった。



 ……でも、当然の様に私達はもう深く『心』が繋がっているから。


 だから、知らず知らずのうちに、それは伝わってしまっていたらしいのである……。



 無論、私はそれを言葉にはしていないし、考えたりもしていなかった。


 ただ、敢えて隠そうともしていなかった為に、私の事に深く興味を抱いてくれるエアは──深く、更に深く、もっともっと深く、どこまでも深くと、私と言う『領域』を覗き込んだ末に見つけてしまったのである。



「…………」



 ……その結果、私の『虚』をエアはバッチリと視てしまった。


 無論、そこは夜闇に包まれた『光』の何一つ届かぬ場所。

 ……ただ偶に『黒はにさん』がくねくねと踊っていたりはする。


 そして全てを包み込み、受け止める事が出来る何よりも優しき空間。

 ……そこには静寂があり、何かが始まりを告げる為の原初の待機所にもなっている。



 また『命』そのものでもある『魔力生成』の根幹にも繋がる場所だ。



 そこには、私の表に出来ない全てが詰まっていたとも言えるだろう。

 そんな『秘密の空間』を隅から隅までエアは覗き込んだ。



 そして知ってしまったのだろう。

 『自らを化け物にする方法』とも言える──『性質変化』の全てまで。



 『人』である部分を消費し、何かを手に入れる為の『取引の糸』も。


 本来は誰もが持つ『世界』との繋がり方──そこへの『気づき方』を。



 また、『魔法使い』と言う存在の意味と必要性。


 『存在にすら気づけぬ何らかの気配』……。


 自らに強制的に干渉してくる『大きな力』……。


 逃れられぬ『性質』……。



「…………」



 そして、私が何かを守る為に、欠けた理由。


 ……いや、未だに懸け続けているそのりゆうを。


 かわりに、じぶんたちが不条理なそれら余計な干渉からふせがれているというじじつ。


 ……もうわたしには、それいじょうをにんしき、できない、そんななにかをエアはしった、とおもう。



 ただ、きっと、それはわたしの『げんしょ』だった──。



「…………」



 ──そして、気づけば、エアは私にしがみ付きながら、また号泣をしていたのである。



 ……恐らくは、眠っている間にまた怖い夢でも見てしまったのだろう。


 私はそんなエアを撫でながら宥めていった。

 ……不思議とその夢の内容を訊ねる事はできなかったが。



 それでも、暫くするとエアは回復してまたいつもの笑みを見せてくれたので、安心したのである。

 ……しかし、その時からエアは『何か深い決意』を抱いた事だけは私にも分かったのだ。



 それがいったい何なのか……私は知りたい様で知りたくないと思った。



 ──そもそも、これはいったい『何時の追憶』だったのだろうか?


 ──元々、これはいったい『誰の追憶』だったのだろうか?



 ……『私』にはもうそれがうまく思い出せなかった。



 だが、一つだけ確実なのは『外側と内側』の私には、実は似たようで一つだけ異なる『性質』が存在する事である──。



 きっと、時が来たらエア達はそこにも気づいてくれるだろう……。


 私は密かにそれを思った……。




またのお越しをお待ちしております。

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