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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第613話 望月。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 『街が荒廃した原因は新たなる魔物が誕生したから……』



 そう語るエアは、あの街に何が起こったのかを分かる限りで教えてくれたのだった。



 そもそも、『精霊を実験材料に……』という話を聞いた時点で恐らくは『それ以外の実験』もやっているんじゃないかとは薄々感じていたが──案の定、『魔法学園』の他の秘された場所では『異形達』に対しても実験を行っていたのだとか。



 ……まあ、私としては『精霊達』に関する事以外に干渉するつもりがなかった為、それ以外の実験が行われていそうな場所には『枝』を伸ばす事もしなかったのだが、『秘された施設』は他にも色々と種類があったという事なのだろう。



 『使えるものは全て使う』という精神論に近いのか、はたまた好奇心がそうさせたのかは分からないけれども、『人』は自分達に襲い来る『異形達』を捕まえ、その身体を調べるという事も行なっていたそうだ。



 『学長』が行っていた『精霊の力とマテリアル』の複合も、元々はそちらの方の実験の応用だったのかもしれない。



 『淀み』を介して発生する『神兵達』を調べる事によって、『マテリアル』の更なる活用方法と、技術力を学んでいるのだろう。

 そして『異形達』をそのまま材料へと転用する事によって、彼女達はより大きな『力』を得ようとしていたのだ……。



 ……そう考えれば、色々と繋がりも見えてくるのである。



「…………」




 私と言う邪魔な存在に『精霊を材料にする事』を阻止された『学長達』は、より『マテリアル』に傾倒していき、知見を深める必要があると考えてもおかしくはない。



 その為、『異形達』に対して実験を重ねる事になったのだと思う……。

 『マテリアル』という『力』と、そしてその元となる『淀み』を──どうにかしてもっと『人』に活用する術は無いだろうかと……。



 実際、その実験により、一部の成功例として、冒険者ギルドで私達の力を測る為に使われたあの『黒い水』等が、まんま『異形達』から抽出された『マテリアル』の一種だったらしく、その技術によって『マジックジャマ―』と『マジックキャンセラー』の効果も大幅に上がったらしい。



 『強すぎる魔法』に対抗する為の備えとして、ひいては『泥の魔獣』という異常な化け物を今度こそ倒す為に……。


 『人の力』で様々な脅威に抵抗し、自分達の安全な生存圏を確保する為に……。


 『人々の幸せ』を願って……。



「…………」



 ……ただ、その『力』を活かす為にはどうしても『性質』的に『合うか合わないか』が重要になってくるのは最早説明するまでも無いだろう。


 より大きな『力』を得ようとするならば、『器』もそれに見合う必要が出て来るのだと……。



 だから、その『器』を得る為に必要ならば──『人』は時として、同じ『人』でさえも実験に使う事を正当化出来てしまうらしい。



 愚かな大義名分とそれを成すだけの『力』さえあれば……私などからすれば『本当にそれをする必要があったのか?』と疑いたくなる様な非道な実験も平気で行えてしまうのである。



 ……それを実際に調べて、一部を目にしてしまったらしいエアはこう語るのだった。

 それを『人の為』だって言えてしまう『人』をわたしは気持ち悪いと思うと。



 ……それこそ、そうまでして知見を深め、深淵を覗こうとする事を『人の智慧』だなどと言えてしまう者達は、自らが材料になってしまえばいいのにと。



「…………」



 そうしてエアは、私が帰って来ない間も冒険者活動を続けながら、そんな『魔法学園』の裏側の事情を少しだけ探っていたらしい。



 ……ただ、『魔法学園』が懲りずにもまたそんな実験をしていると知ってからは、もう関わらない方が良いと思って距離を取ってしまったのだそうだ。



 『……もうあの場所(『魔法学園』)は、そう言う者達の集まりになってしまったのだろう』と。

 『……ロムが帰って来たら、あの場所にある『第四の大樹の森』を移す事も提案した方がいいかもしれない』と。



 ……その頃には既に、双子達も『別の大陸へ行く』と言ってエアから離れており、私の帰りを待ちながら冒険者活動をしてエアは控えめに過ごしていたらしい。



 ただそうしていると、とある日から急に不思議な感覚が発現し──それによってどこからでも『大樹の森』へと行き来ができる様になると、それからは『内側の私』へとのんびり甘えながら過ごす時間が多くなったのだとか。



 一応、『外側の私』の様子も見に行ったらしく、そうすると意外と街の近場で、それも雪の中に『雪ハウス』を作って寝ていると知って驚きもしたらしい。




 ……ただまあ、その時の『外側の私』は『少しだけ辛そう』な雰囲気もあった為、眠りの邪魔をしてはいけないとエアは判断し、それからは『内と外』を往復しながら『どっちの私』も世話する日々が続いたのだとか。




 そして、合間合間には街へと赴き、時々は情報収集と冒険者活動に励んでいたらしいのだが──



「……するとね。ある日、上空にある魔方陣から突然、『黒い雨』が降って来たのっ」


「『黒い雨』?」


「うんっ、あれはきっとほぼ間違いなく『黒い水』だったと思う。……でもわたし、降って来る直前に『凄く嫌な予感』がしたから、咄嗟に『大樹の森』にまで逃げちゃったんだっ」




 ──そうして、一旦『内側の私』を経由し『外側の私』の方へと戻って来たエアは、そこで『黒い雨』を降らせる上空の『巨大な魔方陣』の上に立つ、『黒い肌の白銀』の姿を視たのであった……。





またのお越しをお待ちしております。

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