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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第612話 なご。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。





「…………」


「ロム?」


「──んっ?」



 ……いかん。どうやらエアとの会話の途中で、私は少しぼーっとしていたようだ……。

 エアにその呼び声によって私はハッとして気づいたのである。



 もしかしたら、エアの話を無視してしまっていたのかもしれない……。

 ならば直ぐに謝らねば!と思ったのだが──



 どうも隣にいるエアからは怒る様子は微塵も感じられず、私の腕を抱えながら『安心させる様な』微笑みを向けてくるばかりであった。



 ……あと、不思議な事に傍に居る四精霊も『うんうん』と何か頷いている。

 なんだろう?なにを頷いているのだ?……よくわからないである。



「ううん。大丈夫だよっ。……それに、ロムの事は絶対にわたし達が守るからねっ」


「……うむ?……あり、がとう?」


「うんっ!任せてねっ」



 すると、いきなりそんな風に『守る』とまで言われたのである……。

 どういうことだ?



 だがまあ、ちょっとだけ不思議ではあったものの、その言葉の内容自体は喜ばしいものだったし、エアや精霊達は不思議と満足そうだったのであまり深くは追求はしない事にした。



 エア達が私を守ってくれるならば何とも心強い話だ。私としては嬉しい限りである。

 『……よし。それならば私も』と、逆に皆の事を守っていかねばと強く思うのみだった。




 先ほどまでは恐らく双子達の事を考えていたが為に呆けていたみたいだが……それはもう大丈夫である。

 頭は不思議とスッキリしているし、大した問題も感じていない。



 寧ろ、問題があるどころか、気分は大変良いのでまだまだエア達と話をしていたい気持ちである。



 それ故、その後も私はエア達と様々な話に耽ったのだ……。



 特に、『この二十年で何が大きく変化したのか』について、エアはもっと色々な話をしたいらしく、私に次々教えてくれたのである──。




「……じゃあ、そうだね。あとであの街の話にも繋がって来る出来事なんだけど──」



 ──すると、そこから先の話の中で個人的に興味深く感じられたのは、各地で発生していた『異形と化した神兵達』にまたも大きな変化があった事であった。



 と言うのも『人を喰らう異形なる存在』という問題に対し、多くの人々が被害を被ってきた訳なのだが……流石に『二十年』も経てばある程度の慣れと対策も講じる事が出来たらしく──



 『人』はその異形達の形態ごとに『種族的な名称』を名付けて、それらを全部ひっくるめて『魔物』として扱う事に決めたらしいのである。



 それも、その『種族名称』ごとの情報を累積し、国や各地のギルドで協力して生態を調べあげて、それらの脅威なる存在達との戦い方を少しずつ学んでいったのだそうだ……。



「…………」



 元々、見た目や素材となった『人の性質』によって、ある程度は異形達にも共通点がある。

 なので、その行動を観察する事によって、それぞれの異形達にあった適切な解決法を見つけるのは、そこまで難し過ぎるという話でもなかったのだろう。



 それも、ある程度の共通点を調べていく内に、異形達も同じ共通点を持つ者同士で集団行動を取る様になり……そこで繁殖し、世代を超えていく事によって異形達は『獣の縄張り』にも似た社会形成をする様にもなっていったのだとか。



 そして、『人』からすれば逆に異形達がそうした集団行動をとったり、社会を形成する事を知れたことは大きな安堵にも繋がったらしいのである。




 と言うのも、そもそもの脅威として異形達が恐ろしいのは言わずもがなだが、『何の目的があって存在するのか分からない未知の存在』よりも、単に『生存本能を持つだけの獣』であり、そう言う『種族』なのだと解釈した方が感じる恐ろしさは少なくて済むから……だそうだ。




 更には、異形達の方も『人』の影響を多大に受け、次々と繁殖を重ねて世代を繋げていく事により、その姿はまた一段と『人』へと近付きながらも独自の進化を遂げているのだとか。



 ……なので、当然の様にその姿は既に私が知るかつての『神兵達』の姿からは変化を遂げており、色々と混ざってしまって複雑な個体なども増えているそうだ。



 無論、そうして変化を遂げた事によって強くなっているのかは不明だが……今の『神兵達』は世代を重ねる事によって、むやみやたらに『人』へと襲い掛かる事がかなり減少傾向にはあるらしい。



 ……ただ、勿論例外は存在する訳で──



 特に、『ゴブリン』や『オーク』等と名付けられた個体の『神兵達』は数も多く、『人』と争う場面は未だに多い方だと言う。……ただ、最近ではそれぞれの『縄張り』を広げる事にも注視しているとかで、異変に思う冒険者も多いらしい。



 ……まあ、未だに『人』を超えた剥き出しの欲望を撒き散らし、荒々しくも暴れまって襲い掛かって来る存在も普通にいる為、必ずしも一概に全てが変化しているとは限らないそうだ。

 場所によってはずっと変らずに『人』と争いを続けている存在も中には居るらしい……。




 だが、それに対して、最近では森の奥などに腕力や再生能力の高い『トロル』や、鋼鉄の様な強靭な肉体で『人』とは比べ物にならない程の運動能力をもつ『オーガ』等と言う存在も出る様になったのだとか。



 無論、それらの特殊な個体の『力』は恐ろしく強大で、一度戦いになれば大勢の者達が酷い怪我を負う危険性がかなり高いと言う。……ただ、比較的そちらの特殊な存在はあまり『森』の奥からは出て来ないそうだ。



 その為、もしも出会ってしまった際には、出来るだけ『森』から離れればそれである程度は逃げ出す事も可能であるとかなんとか……。




「…………」



 ……とまあ、そんな訳でエアの話は何とも興味深いものばかりであった。



 因みに、他にも数々の『呼び名』はあるそうで、既に多種多様な『魔物達』が今では存在しているのだとか。



 海や山、沼地や草原、そんな色々な環境に応じて様々な『魔物達』が今の『世界』には溢れている。



 だから、もしもそれらの分布を『世界』に色分けでもしてみたら、きっとその時は何とも言えない色とりどりの『鮮やかな世界』に見える事だろうとエアは語るのだった。



「…………」



 ……それに、以前にも話したかもしれないが『魔物達』の及ぼす影響は必ずしも悪いものばかりではなく、ある意味では『人』にとって良い影響を与えてくれている場合もある為、世間では『過剰に居ると困るが、完全に居なくなると困る存在』という認識になっているのだとか……。



 特に、食糧難に陥っている地域にとっては、狩りの対象が増え、向こうから近寄って来てくれると言う存在は未だに幸運だと考える者も多いだろう。




 ……また、戦い方を学ぶ機会や、それを応用しなければいけない機会も増えた事によって、冒険者や剣闘士、兵士などの戦闘を生業にする者達は『力』の向上と、蓄えた『力』を思い切り使える戦場を得る事が出来たとも言えるのである。



 『魔物』を狩る(・・)事で得られる報酬は良いものも多い──それにより人気は高まり、脅威を排除し安全を守る事で人々からは感謝され、一部では崇められる事もあるのだと言う。



 なので、そんな彼らの生計を立てる為にも、最早『魔物』という存在は必要不可欠なのだ……。



 また、討伐した『魔物達』からとれる素材を用いて、新たな産業も活発になり始めているとエアは教えてくれた。


 そのおかげで、人々の生活はまた少し豊かにもなっているのだと……。



「…………」



 ……まあ、私からすれば、本質的にそれらは『人』と『人に近しいもの』が喰らいあっている様にしか見えない訳なのだが──果たして、それで『人』はいいのだろうかとはちょっとだけ思うのであった。



 だが、互いが互いに喰らい合って、争いあう事で良き影響を与え合っているというのならば……私が態々口を挟む事ではないのかもしれないとは思うのである。



 ──ただ、そのせいで『魔物達』の正体が『人に近しい存在』であることは、極めて限られた者達だけしか知らない『明かされてはいけない真実』にもなっているらしい。




 無論、『人』の中にはそんな『魔物達』を普通に食料にしている者がいるのだと聞けば……その真実を無暗に明るみに出し周知させる事は恐ろしい混乱を招く事になると想像するのは容易い事であろう……。



 『オークの肉は格別に美味い!』と公言する冒険者も多いらしいが……知らない方が幸せな事もあるのだと私も思うのだった。



 『理想は、壊さない方がきっといいのだ』と……。



 嬉しそうに喰らっている者達に、それが『共食い』に近しい行為だなんて……言えるわけもないのだ──。



「…………」



 ──まあ、知っていても知らなくても、『現実』はそんなに変わらないのかもしれない。



 だから、そんな『まやかし』を隠す事にも本当は意味など無く……逆に隠し事をする方がある意味ではとても罪深い行いなのかもしれないとも思うのだ……。



 だがしかし、それでもやはり世の中にはどうしても仕方がないと思える事は存在する為……私はその『まやかし』を全て否定する事だけはしたくなかった。



 これは、少々小難しい話にも聞こえてしまうが、なんてことはない……。



 ──要は『在るがまま』を受け止めていきたいと言う、ただそれだけの話であった。



 そして、エアもまたその考えと『まやかし』を否定する気はないと言っているので……私は内心で一安心したのである……。



「…………」



 ……まあ、『食事を取らなくても済む身体』になってしまった私からすれば、もうそれらの感覚は遠いものに感じるし、言わば『領域外』にあたる行為でもあった。



 だから、正直な話をするなら『人』が何を口にしようが『魔物達』が『人』をどれだけ喰らおうが私は全く気にはならないとも言える。



 ──無論、『大事な者達が傷つけられない限り』はという大前提はあるが……私からは基本的にあまり深く干渉するつもりはさらさらないのであった……。




 エアの話を聞いても、『今はそう言う感じなのか……面白い変化をしたものだなぁ……』と、そんな風に思う位である──。



「…………」

 


 ──ただまあ、ここで一つ、気に掛ける事がまだあるとするならば、友が私に言ってくれた『人との繋がり』を考えるか否かであった。



 そして、もしもそれを気にかけるのであれば、私はもう少しだけ『人』に関心を持つべきだし──更にはこの話はまさにそれに相応しい案件なのかもしれないと、ほんの少しだけ思うのである。





 と言うのも、これは別に『魔物は食べない方がいい!』とか、そんな事を世間に広く周知するべきだとか言うそんな話ではなく……。



「──街が荒廃しちゃったのはね。あの街で一人の『新種の魔物』が誕生しちゃったからなんだ……」



 ……と、だいぶ遠回りにはなってしまったが、これは『魔法学園』のあった街が荒廃してしまった原因にも繋がる話であり、同時に私達のこれからについても少々関係してくるかもしれないと言う、そんな大事な話なのであった──。





またのお越しをお待ちしております。

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