第601話 吹雪。
注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。
また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。
街の一角、そのとある施設から突如として吹雪が飛び出し、周辺には大きな混乱が広がった。
そのあまりに強烈なその氷と風の勢いは目を開く事も困難な程で、まともに前に歩く事すら難しかったらしい。
そして、そんな吹雪の影響は街の三割ほどを短時間で飲み込みかけており、その勢いの凄まじさから数刻続けば間違いなく街が滅んでいてもおかしくなかったという話であった……。
現状、『魔法学園』の者達はその原因の究明に、冒険者や街の住人達は吹雪の対処に駆けまわっているそうだ。
「…………」
そして、私もそんな冒険者側の一人として雪の対処に参加している状態である。
……恐らくはエア達も、斡旋された場所は異なるだろうが同じ様な作業はしている筈だ。
ただ、それに対して『秘された施設』の一つが氷漬けにされた『魔法学園』側は、私と言う『痕跡』を求めて原因究明のためにあの日から激しい追手を差し向けてきている。魔法を使って全力で探そうとしているのがよく分かった。
感覚的に言えば『ビリビリする』とでも言えばいいのだろうか、『探知』に近い魔法を使って私の事を探そうとしているのだろう。
その魔法自体は『対象を探す魔法』または『探し物の魔法』とでも言えばいいだろうか。
……魔法の質としてはそこまで高度な魔法とは言えない様に思う。
ただ、街全体に対して頭上にある『巨大な魔方陣』を介し『枝を伸ばしている』とでも言えば想像もつきやすいかとは思うのだが、規模が大きな魔法ではあった。……だがまあ、逆にそのせいであまり『対象』を上手く絞り切れず、使いこなせていないのも分かる。
──要は、私と言う魔法使いからすると、それは『力任せな魔法』だとも言えるだろう。
それに、私はその魔法を向けられたと感じた瞬間に『枝』を払い、すぐさま他の者に『対象』を移しかえてもいたので、繋がりを簡単に悟られない様にもしていた……。
「…………」
……だが、例えそんな『力任せな魔法』──『拙い枝』であっても──『数の力』というのは油断できないもので、払っても払っても連日連夜、何度も何度もその『枝』を向けられれば流石に私もうんざりしてしまうのである。甚だ面倒だった。
私という『痕跡』を何が何でも見つけようと必死だ。
……まあ、その間も私は普段通りに冒険者活動をし雪かきなどもやり続けていた訳なのだが、魔法使いの視点で語ればひたすらに魔法を撃ち合っている感覚と言うか、『追いかけっこ』をしている状態だったとも言えるだろう。
恐らく、本来なら向こう側も『人』に対してその魔法を使う事により、必ず『眠る』瞬間などもあるだろうと、その隙に乗じて何らかの『痕跡』を追跡できると思って魔法を使い続けているとは思うのだが……ほら、私と言う存在は『眠る必要がない』ので……そこはお察しと言う訳なのである。
そのおかげで私は全く問題ないままにひたすら『枝』を払う事が出来ていた。
きっと向こう側からとしたら『あれ……なんで何の痕跡も追えないのだ?』と首をひねっている事だろう。
「…………」
逆に、これだけ『巨大魔方陣』を『根』として私に繋がろうと魔法を使って来るものだから……別の『枝』を生み出して、私は『巨大魔法陣』に簡単に介入できるようになってしまったのだ。
その為、折角だからと『魔法学園』の『秘された施設』が他にもあるのかを探り、『魔法学園』のとは異なる『枝』を使い回して私はその他の施設を全て潰し回ったのだった。
どんどんと関連する施設を氷漬けにされた為に、『魔法学園』の追跡は増々激しさを増してきている。
だが、私は敢えてそうする事によって施設を凍らせたのが同一の存在である事をアピールし、遠回しに『精霊に関わる実験を止めて欲しい』という事を伝えたいと言う思惑もあった。
……まあ、果たして向こうがそんな思惑を上手く受け取ってくれているかは分からぬが、危機感だけでも感じてくれればそれだけでも良かったのだ。十分な警告にはなるだろう。
──それにまあ、理解するしないに関わらず『精霊』に関する多くの資料や人物は軒並み消し去ってしまったので、続けようと思っても続けられる者が残っていないかもしれない……。
何にしても私は、そうして追手を躱しながら冒険者活動をソロで行っていたのだ──
「見つけた……まさか、本当にここに居るだなんて……」
──だが、そんなある日の冒険者ギルドの一角にて、突然見知らぬ(?)『耳長族』の淑女から話しかけられると、私はいきなりその相手から攻撃を受けギルドの壁まで吹き飛ばされてしまったのだった……。
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