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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
595/790

第595話 根治。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 『緑石』ランクの冒険者となった私達は、その日から連日朝から晩まで魔法を使い続ける事となった。


 ギルドマスターが言っていた通り、この街には魔法を使える冒険者に斡旋できる依頼が溢れていた為、私達は一日に複数の依頼を引き受ける事が多かったのである。



 『魔法学園』という場所が近くにあり、この街には元々魔法使いも多いのだろうが、魔法の研究と技術の研鑽にばかり夢中になりがちなのか、民衆の為に雑用じみた目的で魔法を使う者はあまりいない様子であった。……実際、本当に人気はないらしく依頼は残り気味なのだと言う。



「…………」



 上空には『巨大な魔方陣』があり、それによって『人』が住める環境にはなっているけれども、部分的に雪が積もる場所もあれば、路面が凍結している場所なども多く見受けられるため、完全に寒さ対策が出来ているとは言い難いのがこの街の現状だった。



 その為、この広い街の中をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら、私達の様な冒険者が依頼を受けて道の凍結を溶かしたり、雪かきしたり、建物の修繕をしたりとする訳なのである。



 ……まあ、本来であれば周辺住民が手分けしてやればいい事なのかもしれないが、それが年中ともなると中々に厳しいと言うのが本音なのだろう。困っている者は相応に多く、依頼は溜まるばかりなのだとか。



 ただ、魔法使いであれば簡単に対処は出来るかもしれないが、体力的にも魔力的にも魔法使いからするとあまり美味しい依頼とは言えず……。

 魔法が使えない者からすると労力と報酬が見合っていないからという理由で人気がないのだそうだ。



 その為、時々はこうして魔法を使える冒険者にギルドマスターが直々に頼む事もあるらしいのだが……正直それも断られがちらしく……近頃はギルドマスター本人が代わりに依頼をこなす事も多いのだとか。



 『魔法学園』の場合は例の派閥問題もあるし、魔法を特別視してプライドが高い魔法使いだとそう言う雑用的な事には絶対に魔法を使いたくないと考える者も中には居る為、尚更なのだという……。



「…………」



 ……まあ、その点私達はそんな些細な事など全く気にしなかった為、次々と依頼を引き受けていったのである。

 路面の凍結を直しながら【土魔法】を使って道を整えていくのは、正直私はそこそこ器用に出来たと思う。『泥』の扱いではないけれど、案外こういうのも得意であったらしい。



 街中を歩き回りながらエア達に雪を溶かして貰いつつ、私は石や土を生み出しては綺麗に並べていき──綺麗に整っていく街の様子を見ながら歩くのは何気に楽しかった。



 まだ本調子とは言えないエアにとってもこういう簡単な魔法の方が無理が無さそうで良さそうだった。……双子達も、本格的な依頼を受ける事自体が初めてだったからか、あまり依頼内容は気にせず何でも素直に楽しめたらしい。



 二人共もう少しで大人とほぼ変わらない位に体格も大きくなってきているが、好奇心旺盛な部分は小さな頃から殆ど変わっておらず──街並みや上空の『巨大な魔方陣』にキョロキョロと視線を巡らせては純粋に微笑むのであった……。



「…………」



 ……とまあ、そんな訳で一日中朝から晩まで魔法を使い続け、普通ならば忙しいと思える環境ではあったものの、今までの大変な経験が活きたからか私達は『辛い』とは感じなかった。



 『エアの追憶』の影響もあってか、レティエとレティロも『人体生成』以外の魔法もすんなりと覚えて凄く活躍してくれたと思う。



 ……因みに、『追憶』に関して少し掘り下げると、『エアの追憶』を見て双子達が楽しそうにしていた時分、ちょっとだけ私も興味を引かれたので『私の追憶』の一部をそっと傍に置いてみたところ──それを見た双子がバタリと倒れて体調を崩してしまったと言う事件があり、私は凄くしょんぼりとしたのを覚えている。



 後で聞いてみると、『私の追憶』は双子達の感覚にはあまり合わなかったらしく──視ると『ぐるぐる』と目が回ってしまい気持ち悪くなってしまうのだとか……。





「…………」



 ……ただまあ、そんな事件はあったけれども、久々にこうして争いもなく悲しみとは無縁な時間を過ごせて、私達四人は心のどこか『ホッ』としていたと思う。依頼も思ったより楽しかったので本当に良かったのだ……。




 ──だが、そんな生活を続けていると時々にふと思ってしまう。


 『……なあ、友よ。人との繋がりとはこういうので合っているのだろうか?』と──。


 返って来ないと知りながらも、密かに私は心の中で友に語り掛けてしまうのだった……。





またのお越しをお待ちしております。

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