第592話 方足。
この十年余りで、色々な変化があった。
それも辛い事や悲しい事ばかりが続いて……別れも多かったのだ……。
でもそんな数々の悲しみに対して、私達は時間をかけて解決していった。
……勿論、上手に解決できたとはあまり言えない気もする。
特に私は、魔法使いとしても冒険者としても中途半端だった。
もっと自分から手を出した方がよいと思える場面でも、ただただ傍観し、見守る事しか出来ていなかったように思う。
「…………」
『力の秘匿』に拘るあまりに失敗した事もあった。
『エアの成長』に拘るあまり、エアの角を失う事もあった。
巡り巡った自らの選択と行動の結果が、友との大切な時間を消費し、双子達の『力と心』の成長に著しい苦難を強いてしまった。
『人との繋がり』を、無意識の内に避けていた部分もあった。
だが、それは良くない事だと友から注意されてしまった。
今となっては、あの時なんであんな事をしたのだろうと思う事ばかりだ。
この十年余りは、『心』を試される事ばかりで、『人』を傷つけてばかりだった……。
「…………」
……だが、反省はそのくらいにして、そろそろ前を向いて行こうかと思うのである。
そして、また以前の様に皆が笑って行けるように、これからはもっと幸せになれるように、私達は『冒険者』として歩き始める事にしたのだ。
エアも双子達も、それぞれ思う所があるものの、冒険者として生きていく事自体には賛成らしい。
……なので、まだ身体が本調子とは言えないが、エアが先生となり双子達に『冒険者の心得』を教えていくことになったのだ。
やはり、本格的な冒険者活動をする前には『冒険者の心得』を確りと学んで貰った方が良いと言う判断である。
双子達にそれを勧めたのは私だったが、教えるのはエアが『やりたい!』と乗り気だったので任せる事したのだった。
「…………」
……因みに、双子達は『エアの追憶』を見せて貰った為、『冒険者の心得』や『冒険者用語』を学ぶのにもそれほど苦労はしていない様子である。
それに、『エアの角を復元した日』から、双子達は以前よりもエアを慕う様になったので、三人の関係は凄く良好であった。
周りから見ていると本当の姉弟の様に見える程で、私としても微笑ましい限りだ。
……両親を失った悲しみを、双子達はエアと接する事で癒している様にも感じられて、私は三人の時間を大切にしてあげたいと思うのだった。
「…………」
双子達がある程度まで心得を学べた後は、皆で冒険者ギルドへ行き様々な依頼をこなしながら『ランク』をあげていこうかと考えている。
『人との繋がり』を考えるのであれば、依頼をこなす事で自然とその機会も増えるだろうと言う安直な計画なのだが、何かしらの不備や瑕疵が見つかるまではその計画で頑張りたいと思った。
とりあえずは『金石』まで冒険者ランクをあげるのも良いだろう。
『力の秘匿』も控えめにして、周りの者達と協調する事も考えている。
そして、そんな『ランク上げ』を含めたこの先の冒険者活動が、エアや双子達の更なる『生き甲斐』になり、皆の笑顔や楽しみに繋がってくれたらいいなと思う私なのであった……。
「…………」
──因みに、『外側の私』の方は、海を渡った先にて吹雪の厳しい大陸へと辿り着き、『魔力生成』の終わりの一応の目処となる『第四の大樹の森』周辺を含めた雪の大陸を『白い兎さん』と一緒に雪に埋もれながらも走り回るのだった……。
またのお越しをお待ちしております。




