第552話 因果。
手直し等はまた明日に。おやすみなさい。
エアが満足するまで私が剣を振った後──
今度は『剣舞場』の中にある他の施設──『剣舞士』達の本格的な剣舞が見られるという舞台──へと私達は足を運ぶ事にしたのであった。……情報収集をしてきたレイオスとティリア曰く、聞く所によるとここの一番人気はどうやらその舞台にこそあるらしい。
ならば折角だからと、『面白そうだから見てみようか!』という事になったのだった。
「…………」
因みに、先ほどまで私達が剣を振っていた場所もこの『剣舞場』の施設の一つではあったのだが、そこでは戦いに慣れていない『里』の女性達や子供達が普通に剣を楽しめる場として開放されたのんびりとした施設であった。
そして私達がこれから向かおうとしているのは、まさに専門の『剣舞士』達が本気で魅せ技を披露してくれる場であり、そこではまるで演劇を楽しむかのような独特の空気感があるという。
当然、その空気感には自然と期待も膨らんでしまうのか、好奇心旺盛な双子達は落ち着きなくワクワクが止まらないらしい。凄くニコニコとしながら飛び跳ねる様にして歩いていた。
それに、外で並んでいた人達の目的も大体はこの演劇にあるようで──列に並んでいた熱意溢れる女性達の姿も多く見受けられる。……聞けば、彼女たち程に熱意溢れる観客になると、既にそれぞれが推しとする『剣舞士』もいるそうで、そんな推しの応援をする為にもこうして足繁く通っているそうだ。
実際、ここにいる剣士達の殆どは見目の麗しい者が揃っている上、剣技も派手で子供でも飽きることなく最後まで楽しめる施設という話らしい。
──更には、日々誰かしらの実在する有名な『剣闘士』や『冒険者』の逸話を演じてくれる『演劇』にもかなり力が入っていて見応えあり歌ったり踊ったりもすると言うのだから驚きであった。
特に『始祖の五人』が直接演じたという『師』と言う演目は、かなり伝説的な人気を博しているという噂で、涙なしには見られない感動ものなのだとか。
また、『始祖の五人』の『剣舞士』としての腕前もまた素晴らしく、その名と腕前は演目をきっかけにして一躍広まっているらしい。
……まあ、まだ歴史自体は浅い為、未だこちらの大陸だけにしかないらしいが、いずれは『剣闘士』達と並んで『剣舞士』達も有名になるだろうと言うのが専らの観客達の噂なのだという。
「…………」
……因みに、『剣闘士』と『冒険者』の一部には、そんな『剣舞士』達が『チャラチャラ』と遊んでいるだけの不真面目な集団に見える者も居るらしく──『剣舞士』の存在自体を『認めない』と苦言を呈している者達も居るらしい。
『剣を遊びに用いるなんて、剣舞士とはなんと不届きな輩なのだろうか』と……。
──だが、事情を知っている者からすれば『始祖の五人』がそもそも『高位の剣闘士』であり『金石の冒険者』でもある事は知られている為、分かっている者達からすれば当然否定的な声よりも断然に肯定的な声の方が大きいのだそうだ。
『剣舞士達の剣の在り方は、別の所にあるのだ』と。
『剣の質の違いをはき違えるな』と、熱狂的な観客は熱く語っていた……。
実際、『日々の生きがい』とまで言って熱意的に楽しみにしている人々の表情を見れば、一目で『剣舞士』達が多くの人達に望まれている事はよく分かるだろう。
「…………」
……ただ、そんな『剣舞士』であっても全く戦わないという事はないのか、それともあの五人だからかそうなっているのかは分からないが──最近は『異形達』や『ダンジョン』の脅威がまたも無視できない状態だそうで、『始祖の五人』もそちらの対処へと追われてしまい、まだまだ忙しくしているらしい。
その為、残念ながらもこの日は彼らの演目(『師』)は見る事が叶わなかったのだった。
……だがまあ、こればかりは仕方がないと、私達は他の演目を見る事にしたのである。
それに、たまたまやっていた内の一つを見た訳なのだが、それでも充分にエアや双子達は楽しめている様子であった。
「…………」
因みにその内容をかいつまんで話すと、それはどこか見覚えがある様な普通の冒険譚であり……どうやら、とある街の『剣闘場』に現れた『男女二人組の冒険者』の活躍を題材にした話だったのだが──
「…………」
「…………」
──その途中で私は、劇を眺める友二人の顔が青ざめている事に気づいたのだった……。
またのお越しをお待ちしております。




