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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第549話 舞。




 『言祝の里』へと辿り着いた私達は街中を歩いて居た。



 ……だがその途中にて、とても大きな剣闘場の様な建物に目が留まり、その建物へと並んでいる人の列を見て私達は首を傾げる事になったのである。



 と言うのも、よくよくその建物を眺めてみれば、そこは剣闘場に凄く似た建物ではあったのだが、どうやらその中身は異なるものである事が分かったのだった。



「──剣()場?」



 それも、エアのその呟きが示す通り、建物の看板には大きく『言祝剣()場』と言う文字が書かれているのが見えた。



 それに、その建物へと入ろうとする人の列は皆──冒険者ギルドの周辺などに多く居た高位冒険者や武力に傾倒している者達とは大きく異なる様相で──戦いとは無縁に思える女性達や子供達ばかりである様だ。



 ただ、そんな女性達の一部の集団からは独特の熱気があり、お揃いの色をどこかしら服装にワンポイントとして施した格好で、彼女達が何かしらの仲間達である事が一目で分かる様になっていた。



 特に、そんな彼女達の手にはそれぞれの集団ごとにお揃いの手作りされた何らかの道具──似た紋様が描かれた小さい旗だったり、『シャカシャカ』と音が鳴る楽器の様なものだったり──が携われており、彼女達は皆待ちきれないかのようにソワソワとしながら、話し合いに興じている。



 ……どうやら、女性達の方から漏れ聞こえて来る会話からすると、建物に入れるまでにはもう少しだけ時間がかかるらしく、その為にああして暇を潰しているという事らしい。



 同時に、女性だけの所や子供が多い所、男性も女性と一緒になって楽し気に騒いでいる所と、それぞれの集団にも特色が少しだけ異なるのが見て取れた。



 それに、『踊り』や『舞い』と言う言葉も頻出しているので、どうやらこの場所は『舞台』なのではないかと私達は察しをつける。



「…………」



 それに『剣舞士』と言う言葉から想像しても間違いはなさそうだ。

 ただ、聞き慣れないその言葉に、私だけではなくレイオス達も自ずと興味が湧いているらしい。

 ……恐らくはこの街独自のものであるそれがなんなのか知りたがっている様に視える。


 それに多くの人の列を見ても分かる事だが、その人気はかなりのものだと感じた。

 見れば冒険者の中にも楽しみにしている者が居るのか、列に混ざっている者がちらほらと居る。

 ……これは少々話を聞いてみたいものだと私達の足も自然と向いた。



 特に、『剣舞士』とはいったいどういう存在なのか、彼らが何故にそんなにも楽しそうにしているのかと、素直に関心を刺激されたレイオスとティリアは『ロム、ちょっとだけ詳細を尋ねてきていいか?』と私に問いかけて来た程だ。……当然、私はそれに頷きを返す。好きなだけ聞いてくると良い。



 双子達の方は剣舞場そのものや初めて目にする人の多さの方に興奮が大きいのか、エアの足に抱き付きながら目を見開いているだけで楽しそうだった。この子達の面倒は任せて欲しいと思う。


 私はエアの隣りで、一緒に双子が迷子にならない様に警戒を続ける事にした。



「──っ!!」



 ただ、そうして私達に見送られながら、レイオスとティリアの二人が並んでいる人達の方へと近づいて行くと少しだけ異変が起こる。


 と言うのも、友二人が列がある方へと近付いて行くと、いきなり列に並んでいた者達が『ギョっ』とした目で友二人の事を凝視し始め、急にアタフタと慌て始めたのであった。



 それも一部では既に興奮したような声と言うか奇声?歓声?──の様なものまで聞こえて来ている。


 ……当然、レイオスとティリアもそれには『ビクッ!?』として反応をして驚いていた。

 いったいどうしたと言うのだろうか。



 ──だが、見た感じで列に並んでいる者達の雰囲気は悪くなさそうだと判断したのか、二人は果敢にもそのまま歩みを進めると朗らかに話しかけて行ったのだった……。



「────」


「────」



 ……すると、遠目に見ただけだが、列に並んだ者達はレイオス達から話しかけらると、緊張しながらも嬉しそうにしているので問題はなさそうだと感じた。見た所、情報も上手く聞きだせている様子なので、心配もいらなそうである。


 友二人が戻って来れば、恐らくは何らかの情報を手にする事は出来そうだと私は思った──。



「──ねえねえロムっ、『探知』はもう試したっ?」


「…………」



 ──だがそこで、エアのその言葉に私は『ハッ!』とする。


 そして、『……あっ、していなかったのだ』と少しだけ私は恥ずかしくなった。


 それに、どうやらエアは既に試した様で私の隣で『ニッコニコ』になって微笑んでいる。



 ──そうか。『探知』を遣えば最初からこの建物が何なのかなど問うまでも無い話だったな。言われるまで本気で失念していたのだ。


 ……まあ、久しく『探知』を使えない期間も長かったから、こういう時に使えばいいという意識が薄れていたのだという事にし、素直に心でエアに感謝していた。



 という訳で、早速私も『探知』を使ってみる事にした──



「…………」



 ──訳なのだが、内部を探った私の頭の中には真っ先に『とある五人の肖像画』だと思われる巨大な画が視えてきた為、驚く事になったのである。



 ただ、どうしてエアが不思議と『ニッコニコ』していたのかその理由が分かったのだ。


 ──と言うのも、その絵に描かれている人物達は凄く見覚えのある者達であり、その絵のタイトルだと思われる思われる部分にはこう記されていたのであった。



 ……『偉大なる剣舞士、五始祖の肖像』……剣舞士発祥の地『言祝の里』と──。





またのお越しをお待ちしております。

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