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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
544/790

第544話 琥珀。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 冒険者として旅をしていく中で、私はこれほどまで『ハラハラとドキドキ』を感じた事がこれまでなかったかもしれない……。



「えもの、むこうにいたーっ!あっちーっ!!」


「こ、こらレティエっ!待ちなさいっ!走らないの!」


「まほー、かぜー、ぼくもとべるよー」


「れ、レティロッ!いつの間にそんな!」

 



 元々、エアの時は冒険者として活動を開始するまで五年程の勉強時間があった為に、その殆どが順調な旅路ばかりであった。

 だから、実際に旅に出た後も大した問題は無く(沢山ごねられはしたけれども)、旅そのものは安定した道のりばかりだったように思う。



 ──だから、私はすっかり忘れていたのだ。旅とは本来どんなものなのかという事を……。



「…………」



 ……エアのおかげで楽しい旅ばかりを過ごしてきたけれども、本来の旅とは順調とは相反するものであり、予想も出来ない事がよく起こるのだと。



 特に、海を超えた後に陸地へと入り、それから今は別の森に居る訳なのだが『大樹の森』とは違う森の雰囲気に『レティエとレティロ』は大興奮しており、その好奇心に導かれるままあっちへ行ったりこっちへ行ったりを繰り返している。



 レイオスとティリアが手を繋ぎ、いくら逸れない様に気を付けていても、気づいた時には二人はいつの間にかいなくなっている程に活発だ。大人達は迷子になった双子達に振り回されてばかりである。


 だが、双子達はとても楽しそうだ。



「…………」



 ……それにまあ、例え双子達が迷子になったとしても、その度に『エア』がちゃんと必ず二人を迎えに行ってくれるので、『レティエとレティロ』がチョコチョコと好奇心のままに動きまわっていても私達は安心して見ていられた。



 双子はエア同様に生粋の感覚派であるらしく、エアの魔法を傍で感じてきた影響からか見様見真似で多少の魔法が『なんとなく』で使える様になっているらしい。驚きである。……正直、かなりの魔法の才能があると私は思う。



 今も、手足をを動かすのと同等に、極々自然に【探知】や【浮遊】などの魔法を使っているので将来有望である事は確かだろうと私は思った。



 ……ただ、幾ら高い才能があるとは言え、訓練せぬままでは幼子は事故も起こし易いだろうと、親二人はとても心配そうだ。



「…………」



 まあ実際には、そんな魔法の事故の心配はほぼほぼ不要で──双子達にはエアが普段から『そっ』と密かに導いているらしい。エアが『無理な事までは教えて無いから大丈夫っ!』と言っていたので私は心配していなかった。



 ……ただ、森に生きる種族である『耳長族エルフ』だとは言っても、必ずしも長い時間を歩き慣れているとは限らない為、肉体的な疲労の方はどうしようもない問題だ。

 『里』や街での暮らしが長く慣れた者で特にそうだと思う。

 その上、それが幼子を連れての場合だと尚更に気を遣わねばならない事が多い訳で──。



「あし、痛いーっ」


「のど乾いたーっ!おみずー!」


「休憩したいー!レイオス、紅茶飲みたいーっ!」


「ロム―っネクトたべたいーっ!」


「…………」


「…………」



 ──とまあ、自然とこうした休憩も多くなるのである。


 ……ん?何故か大きな幼子も二人追加されている気がするが……まあ、そこは気にしないでおこう。ほらほら、皆おやつの時間だぞ。仲良く食べなさい。



 私の『魔力生成』もあるし、こうしてゆっくりするのは好都合でもある。

 なにより、こういう時間が私は好きだ。微笑ましいと思いながら、私とレイオスはそんな幼子達のジタバタとする愛らしい我儘に一緒に肩を竦めるのであった……。



「…………」




 だがしかし、そうして森の中で本日何度目になるかの休憩をしている最中での事──。



 ……ふとした時に、双子の男の子である『レティロ』がお菓子を食べた後に何かに気づいたらしく──そんな『レティロ』の視線の先には、木の傍に『綺麗な赤色をした茸』があったのである。



 当然、その先は最早説明するまでも無いのかもしれないが……『レティロ』は何を思ったのか、好奇心が赴くままにそれへと近づいて行くと──既に何度も『毒があるから(・・・・・・)食べてはダメだよ』と教えられていたそれを──大人達の予想を飛び越え迷いなく『パクリ』と口にした為に、大人達は皆して『ギョッ』と驚いてしまったのだった。



「…………」




 ──無論、『そうなるかもしれない』と、事前に解毒回復等の準備はしていたので大事には至らなかったのだが、正直その瞬間の『ハラハラとドキドキ』は凄く心臓に悪かったと思う。



 ……因みに、『レティロ』に茸を食べてしまった理由を聞いてみた所──『毒って、どんな味がするのか知りたかった!』と言う事だったらしい。



 その為、何となくなのだが『なんか、この先もまた何かが起こりそうな気がする』と、何とも言えない怖さを覚えてしまう大人達なのであった……。



「…………」



 ……更に因むが、次の日案の定、今度は『レティエ』の方が『木の洞にあった泥水を飲んだらどうなるのか』が知りたかったらしく、それでお腹を痛めてしまうのだった──。





またのお越しをお待ちしております。

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