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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
542/790

第542話 新芽。




 またニ年程をかけて、こちらの大陸でも私は『魔力生成』を終えた。


 ──ただ、その数年の間に、世界はまた少しだけ変わってきている。


 それは『分かる者だけに気づけるとても些細な変化』だった……。






 『人』も変われば世界も変わり、時にその仕組さえも変わってしまう事が、時代の節目にはよくあるものだ。


 そして、その変化はとても目まぐるしく、時間とは一方通行であるが故に残酷なものではあるが、その重みの分だけ時に喜ばしいものでもあった。



「…………」



 ……とまあ、ちょっとだけ仰々しい切り出し方にはなってはしまったが、『内側』にて少しだけ微笑ましい出来事が起きたのである。


 と言うのも、この数年で例の双子ちゃん達が『立って歩く事』が出来る様になり、『初めての言葉』を発する様になっていたのだった。



 正直、それがなんと言うのか、『まあ、ここまで感動するものなのか』と言う心持ちになるもので──今までにも知り合いの子供が生まれて来る際には同じ様な気持ちを抱いたものではあるのだが、幼馴染である友二人の子供である事と、『領域』として双子の成長を『大樹』の上から毎日見守ってきたからか、尚更に『レティエとレティロ』のそんな『節目の喜びイベント』には感慨深くなってしまったのである。



 ──そして、毎日思うのだ。『子供の成長は早いものだなぁ』と。



 まあ『人』の子と比べてしまうと『耳長族(エルフ)』の子の成長は緩やかかもしれないが、見守る側である私達としては、その時間の流れに微笑ましさを感じてしまうのだった。



 ……そして、私個人としてもそんな双子達が健やかに過ごせる『領域』で在れた事が、何気に喜ばしいのである──。



「…………」


「のぉーー、ぅーー」



 ──んっ?おお、レティエか。レティロも一緒にいるらしい。

 あの二人は双子だからか言動がとても似ており、常に一緒にいる事が多い。



 そして、そんな双子達は、いつしか『毎日木の上に登っている変な白銀のエルフ』に気づく様になり、こうしてその不審者を見つけると嬉しそうに手を振ってくれる様になったのだった。……勿論、私はそれに対して毎回沢山振り返している。



 ……因みに、今声を出したのは双子の女の子である『レティエ』であり、先ほどは私の名を呼んでくれていたのだ。エアが私の名をよく呼ぶので覚えてくれたらしい。



 逆に双子の男の子である『レティロ』の方は私よりもエアの姿が見えると直ぐに『えあーー』と呼びながら『ぽてぽて』と走り寄って行くので、そちらも見ていてとても微笑ましいのである。



「…………」



 だが、同時に不安な事もあり、『レティエとレティロ』があまりにいい子過ぎて、『外側』の世界に行った時に危ない目にあわないだろうかと心配にもなった。


 実際、これは冗談抜きで『レイオスとティリア』も同じ事を思ったらしい。


 親馬鹿と言うなかれ、なにしろ『大樹の森』には外敵がおらず、常に過ごし易い環境を整え過ぎているので子育てには優しい場所ではあるのだが、双子のこの先を見据えた時に『外側』の世界を一度も知らないままで居る事は、果たして二人にとっていい事なのかどうかという話を最近よくする様になったのである。



 勿論、極論として『大樹の森からでなければいい』と言う考え方も出来るのだが、冒険者としての喜びを知っている私やエアなどからしても、国の運営を手掛けていたレイオスやティリアの視点からしても、自らの足で各地を歩く事で知り得る楽しさや大変さを経験しておいて欲しいなと思ってしまうのだった。



 『精霊達の領域の写し』でもある『別荘』に行けば、それこそ安全なまま各地の風景を見る事は出来るけれども、その『精霊達』の存在が自然にどれだけ影響を与えているのか、今の『世界』の姿を見て回る事でより知る事が出来るのではと私も思うのである──。



「…………」



 ──とまあ、そんな訳で、私が『魔力生成』を終え次なる大陸へと向かうのに合わせ、一度双子ちゃん達も連れて『第三の大樹の森』を目指し、皆で『はじめてのたび』に出かけてみるのはいいんじゃないかと言う計画が密かに始まるのであった……。





またのお越しをお待ちしております。

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