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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第535話 逆位置。




 『羊飼い』達が居なくなってしまった街を歩きながら、私は思う。


 ……『毒』の思惑はどこにあったのだろうかと。

 そもそも、私が今回の件に『神人』達が関わっていると思ったのも大きな理由があった。



 先程も少しだけ話には出したのだが、かつて私がこの街の者達に対して結んだ『約束』の存在について、私は少し気に掛かる事があったからである。



 ──と言うのも、この街の者達に結んだ『羊飼い』に関する『約束』は、当時の私の全力に近しい魔力を込めた事もあって、未だに強く健在だった。



 そして基本的に魔法使い達が結ぶ『約束』とは──魔力の強さによっても効力が異なるが──結んだ瞬間から効果があり、それこそ『破る』と言う強い意志が伴わない限りは、本来『損なう気持ち自体を抱かせない』ものであり、『約束』は守られる筈なのだ。



 ──要は、『約束をしたならちゃんと守らないと』と言う気分にさせるのである。



「…………」



 なので、余計に今回はその影響の範囲外であった『愚者達』の存在が私にはどうにも気に掛かってしまったのだった。


 ……つまり、その『愚者達』は単純に考えて、『街の外から来た者達』であったか、そもそも『私の魔力の対象範囲外の者達』だったか、という事が考えられるだろう。



 なので、普段であれば『……ああ、それじゃあ、街の外から来たから対象外だったのかな』と思える訳なのだが──今の時勢として『神兵達』と言う脅威が街の外にいる状態で、危険を冒してまで好き好んでこの街にやって来る者がどれだけ居るのだろうかと、私は考えたのだった。



 勿論、人の考え方によってそれは起こり得る事だとは思うのだが……どうにもその背後を押した『何らかの存在』が居る様に感じられてならなかったのである。



 それにこれは『とある街にいた尾行者達』が『知る筈のない情報』を教会から受け取っていたと言う件と……凄く近しい様に感じた。



 そして、あの時も確か、結論として自称『神々』か『神人』によるものだろうと判断したので──今回もまたその背後にはどちらかがきっと居るのだろうと私は思ったのである。



 また、その場合は既に自称『神々』の手から離れた『神兵達』を『羊飼いの召喚士』が殲滅しているという事まで考え──結局は、状況証拠的な発想でしかないのだが『毒々しい槍を持つ者』の謀なのではないかと考察した訳なのである。



 『本来であれば敵うはずもない相手に勝つ為にはどうすればいいか』──と、その様な策ならば、あの者ならきっと考え付くだろうと言う、そんなある種の予感もあった。



 ……自称『神々』すらも欺いて、隙をつき『喰らった者』は、それを良く理解している筈だろうと──。



「…………」



 ……だからまあ、結局は私の勝手な想像でしかないので、これらの考察が間違っている可能性も十分にあり、モヤモヤとはしていたのだが、『木製のスプーンとフォーク』を見つけてからは何となく気分も持ち直してきたのである。



 正直、会える気満々だったのに会えなかったから……残念な気持ちは拭えなかった。

 自然と、街を歩く私の歩みは、『トボトボ』としているとも思う。


 因みに、今の私のお面も自然と白い兎さんが作ってくれた『真白のお面』を着けていたのだ。

 ……なんとなくだが、これを着けているといつもよりも冷静に自分の事を見つめ直せて、考えに没頭できる気がするのである。



 内心『また間に合わなかったのでは……』と言う、そんな現実を知るのが怖かったから──そうではない可能性を見つけたかっただけなのかもしれないが……。



「…………」



 ……ただまあ、例えそうだとしても、『羊飼いの召喚士』達がどこかで元気にしていると思えるだけの可能性を見つけられた事は単純に喜ばしかった。


 彼らはまたどこかへとお引越しをしただけで、何も問題はないのだと。

 悲しむ必要だってないんだと、そう思えたのだった。



 気持ちも自然とまた前を向けている気がするのである。


 ──そう『世は全て事も無し』。……今日も世界は平和なのだから。



 『──おい、聞いたか?』

 『──ああ、聞いた。本当にそうらしいな……』



「……ん?」



 ──だが、そうして街を歩いていた私は、そこで偶々に道端に居たこの街の冒険者達の会話が聞こえてしまい、足を止める事になった。


 ……と言うのも、そんな彼らの会話の中で『──街の近くにある、白い木を切り倒す』と言うそんな不穏な言葉を私は耳にしてしまったのだった──。






またのお越しをお待ちしております。

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