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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第532話 羊裘。




「──ほう、『援軍』だったのか」



 うっとりとした羊さん達に囲まれながら『土ハウス』の中でお茶を飲みつつ一休憩していると、傍に居た羊さんから彼らが海を泳いできた『目的』を私は聞いたのだった。



 羊さんのお話によれば、向こうの大陸ではもう『異形』達への対処が粗方済んでおり、余裕が出てきたから隣の大陸まで『お助け』に向かう途中だったのだと教えてくれたのである。……正直、驚きの早さだった。



 ──ただ、当然の様に、向こうでも当初は『神兵達』による問題が各地で頻発して困っていたらしい。


 しかしそんな問題に対して、向こうの大陸ではとある『英雄』が動き出し、すぐさまにその『強大な力』を大陸中へと解き放った事によって状況は一変したのだとか……。



「プメェ!」



 ……そう。まあその『英雄』と言うのが──言わずもがな『羊飼いの召喚士』であり、その『強大な力』とは羊さん達【召喚獣】の事である。



 羊さん達の主として彼がした決断は早く、そして的確で、羊さん達の『力』は誰もが想像する以上に素晴らしかった。それが早期解決に繋がったのだと言う。



 それに『召喚士』としての力量も以前よりかなり成長していたのか、『召喚条件』だったり羊さん達の『活動範囲』などもだいぶ変化しているらしい。


 その結果、自分達の街を含めて周辺に異常が発生したのを悟ると、彼はほぼ迷うことなくその『力』を──『数万を超す羊さん達の大群』を大陸中へと解放したのだそうだ。



 そして、そんな彼の最高戦力である羊さん達(【召喚獣】達)は、そんな主の命に応じて大陸中を走り回り、人々を襲う『異形達』を次々に数の力で圧倒し、吹き飛ばしていったのだと言う。

 ……当然、その『強大な力』の前では、流石の『神兵達』も抵抗もむなしかった筈だ。



 まあ、街の中まではあまり走り回れなかったらしいのだが、それでも街の外から攻めて来る『神兵達』の影響がないだけで、こちらの大陸では随分と被害も少なく抑えられ、対処も楽になったに違いない。



 羊さん達曰く、以前にダンジョンから魔獣達が氾濫した件でも同様に走り回った事があったからその経験も大きかったらしい。今回は前回以上にスムーズに走り回れたのだそうだ。



 『数千の仲間達と一緒に、色々な所走り回った!追いかけっこもした!楽しかったっ!』と傍に居る羊さんはウキウキと語ってくれたのだった。



 ……実際、私達が毛刈りに参加した時よりもまたかなり羊さん達の数は増えている様なので、最低でも『二千の仲間』がワンチームになって各地を走り回り、『神兵達』が過剰に発生していても全く相手にならなかったらしい。



 それに最近では『神兵達』の数の方がすっかりと減ってきて、羊さん達の手が空いていた程だと言うのだから、それほどまでに圧倒的な状況だったのだろう。



「…………」



 恐らくは、そんな状況も相まって『羊飼いの召喚士』も他の大陸へと羊さん達を派遣する事に決めたのだろうな。


 ……手の空いた羊さん達とも相談し『他の大陸でも走り回ってみたい!旅行してみたい!』と羊さん達が乗り気だった事も大きかったらしい。


 『じゃあ、様子見がてら向こうでもいっぱい倒してくるね!』と羊さん達が言うと、主は笑顔で見送ってくれたのだそうだ。……うむ、なんとも逞しい羊さん達なのである。





 ──実際、羊さん達が『神兵達』を広範囲に倒し回った事によって、『淀みの消費』も増え『神兵達』が発生するよりも倒される数の方が多くなっている状況なのだろう。


 それに、精霊達もまだあちらの大陸には『別荘』へと誘えていない者達も多く残って居るので、『魔力と淀みのバランス』がこちらの大陸程に崩れてはいなかった事も大きいのかもしれない……。



「…………」



 ……ただ、なんにしても『羊飼いの召喚士』の判断の早さと、羊さん達の『力』の影響が大きかった事は間違いない。既に、今回の件で『羊飼いの召喚士』の名はこの大陸で轟く事となり、知らぬ者が居ない程に有名になっているらしいが、それも当然の話だと私も思った。





「プメェ~!」


「うむ、また会えるのを楽しみにしている」



 ──その後、和やかな一休憩を終えた私達は、『土ハウス』ごと【転移】して羊さん達の『目的地』へと到着し、そこで別れる事となった。……まあ、ちょっとした時間短縮にしかならなかったけれども、それでも羊さん達には凄く感謝されたのだ。



 そして別れ際には『また会えて嬉しかった!良かったら主にも会いにいってあげてねっ!』と羊さん達が言ってくれたので、私は深い頷きを返したのである。



 ──そうして、軽快に走り去っていく羊さん達は姿を見つめながら、その後ろ姿が見えなくなるまで私は見送りを続けつつ、『羊飼いの召喚士』との再会を楽しみに思うのであった……。






またのお越しをお待ちしております。

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